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124.

〈注意事項〉


※15歳以上推奨作品です。

※敬語表現に間違いがあるかもしれません。あまり気にしないでいただけると幸いです。


〈あらすじ〉

 無事に自分の出番を終え、緊張の糸が切れていたアリスをダンスに誘ったのは、シオンだった。彼は、ダンスを踊るとアリスの手の甲に唇を落として去って行って……。

 なんだか居心地が悪くて、アリスは皓然に「飲み物、取ってくる」と断ってその場を離れた。


 さっきのは、一体何だったのだろう。


 飲み物が入ったグラスを手に取り、アリスの視線は先ほどシオンにキスされた手の甲へと向けられた。


 あんな、まるでプリンセスのような扱いを受けるのは、初めてだ。


 アリスは確かにその血筋だが、周りから受ける視線のほとんどは、アリスを品定めするかのようなものだった。


 だが、シオンは真っ直ぐ。真っ直ぐ、アリスのことを見つめてくれて……。


「アリス」


「ひゃい!」


 驚いて振り向いてみると、そこにはディルが立っていた。


 彼は、アリスが奇声をあげたことにとても驚いているらしいが、それ以上に面白かったらしい。口元を隠しながら、なんとか笑いをこらえようと肩を震わせていたから。


「お、驚かさないでよ!」


「ごめん、ごめん。まさか、そんな反応をされるとは思っていなかったものだから」


 アリスは唇を尖らせながらも、ディルと向かい合った。


「それで、ご用件は? オリヴィアの近くから離れない方がいいんじゃないの?」


「そんな怒るなって。今は休憩中だから、オレガノ兄上が引き受けてくださってる。でも、俺が君の所に来た理由は、そのことを言うためじゃない。パウラからの伝言だよ」


「パウラから? 伝言?」


「ああ。緊急の依頼が入ったから、早く戻っておいでってさ」


 ディルが示す方へ視線を向ければ、パウラがこちらに手招きをしてるのが見えた。


「パーティーの途中なのに……」


「いつパーティーをするのかは、王宮の外に伝えられていないからな。それに、緊急ってことは、よほどの急ぎか、指名されたかしたんだろう」


「指名?」


「有名な魔術師ともなれば、指名付きの依頼が来ることもあるんだよ。ほら、早く行っておいで」


 依頼内容は他言無用。


 そのことは他の国でも同じ事。だから、ディルはこれ以上、アリスたちの依頼に首を突っ込まないようにしてくれたのだ。


 そのことにアリスが気付いたのは、パウラの元へ戻ってからだったけれど。いつの間にか、メアリーがルイスたちの隣にいた。


 最後にレオとローズがダンスから戻ってくると、アリスたちはパーティー会場から抜け出した。


「ドラコからの依頼だ」


「ふぉあふぉ?」


 口をもぐもぐさせながら、皓然はパウラから依頼書を受け取った。というのも、大食漢である皓然は、帰り際に食べ物を口いっぱいに詰め込んできたからだ。本当は、ビュッフェの完全制覇を目指したかったのだけれど……。


「食いながら喋るな、汚いな」


「——すいませんでした」


 口の中の物を飲み込み、皓然は改めて依頼書に目を通した。


「アリス指名の依頼じゃないですか」


「ああ。だから、緊急なんだよ。しかも、中身が中身だ」


 皓然は依頼書をアリスにまわした。


 依頼の中身はというと、ドラゴンたちの国宝である、黄金の木の実を一晩守ってもらいたい、というものだった。


「どういうこと?」


 依頼書をレオたちにも回しながら、アリスはパウラに尋ねた。


「まず、ドラコって?」


「ドラゴンの国ですよ」


 半ば呆れ気味に、皓然は教えてくれた。


「国名、そのままじゃん」


「そりゃあ、人間が付けた名前ですからね。歴史で習ったはずですよ。ドラゴンは元々、このレムリア大陸とは別の大陸に住んでいたんです。でも、悪魔との戦争中に、レムリア以外の大陸は全て、別世界へ行ってしまった。だから、ドラゴンはレムリア大陸に住むことを余儀なくされたんです」


「当時は悪魔との大戦で忙しかったから、ドラゴンの国だと分かるように国名は古代人間語の『ドラゴン』……、『ドラコ』になった。小人の国『ナーノス』もそうさ。いいかい、事件名や国名が日付や種族名になっている場合、その当時は国や世界がとても荒れていたことを示しているんだ。名前を付ける暇がないほどにね」


 パウラは肩をすくめてから、「問題は二つ」と、指を二本立てた。


「なぜ君を指名してきたのか。そして、皓然はどうするか」


「どうして、皓然?」


 再びアリスが首をかしげると、ローズが「小人とドラゴンは仲が悪いのよ」と後ろから教えてくれた。アリスよりよっぽど、彼女の方が魔術界の政治事情にも詳しい。


「ドラコとナーノスは国境である山脈をずっと奪い合ってきた歴史があるの。ナーノスには、『死神』っていう、対ドラゴン専用部隊もあるって聞いたわ」


「詳しいですね、ローズ」


 皓然は振り向き、目を丸くした。


「君の言う通りです。そして、何より問題なのが、ぼくの育ての両親がその『死神』の隊員であることです。母さんが、『死神』の隊長なんです」


「ええっ! それ、大丈夫なの?」


 心配そうなアリスに、「分かりません」と皓然は素直に答えた。


「まあ、嫌がられる可能性が高いですね。ぼくは、そういう意味でも有名みたいですから」


 部屋に戻り、それぞれ着替えたアリスたちはリビングに集合して、再び依頼の話に戻った。


 皓然のことは分かったから、「どうしてアリスを指名してきたのか?」ということについて。


「まあ、本音を言えばアリスの実力を測りたいんだろ。興味本位じゃないかな」


 レオはそう言ってアリスを見つめた。


「今回のかぐやの件で、アリスの実力は本物だっていうことが明らかになったから」


「じゃあ、どうしてドラゴンがアリスの実力を知ろうとしているのさ」


 そう言ったのは、やっと依頼書に目を通すことができたアダンだ。


「ぼくはさ、最初、アリスの実力がドラゴンの期待通りのものなら、わざと小人とぶつけるように仕向けたいんじゃないかと思ったんだよ。でも、よくよく考えてみたら、小人に魔術は効かないだろ? あ、小人に魔力って効かないんだよ、アリス。——ということは、小人と戦わせたいわけじゃないってことじゃん。そしたら、どうしてアリスを指名してきたのか、分からなくなっちゃったんだよ」


「そもそも、それじゃあ、国際問題になるぞ」


 パウラは肩をすくめた。


「アエラスはこの世界唯一の永世中立国なのに。とりあえず、みんなこの依頼を受けるってことでいいね? それなら、必要最低限の準備だけして、今すぐドラコに飛ぶよ」


 パウラの言葉に、アリスたちは一斉に頷いた。

お読みいただきありがとうございました!

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