121.
〈注意事項〉
※15歳以上推奨作品です。
※敬語表現に間違いがあるかもしれません。あまり気にしないでいただけると幸いです。
〈あらすじ〉
職業体験の後、みんなと『あまりもの組』として魔術師を続けることを決めたアリス。そんなアリスに、皓然はアリスが今年の期末パーティーの主役に選ばれたと告げた。ダンスの相手役をして欲しい人は、一人しかいなくて……。
「違うんだからね!」
再びアリスが出て行ったドアを見つめ、アダンは「嵐みたいだ」と呟いた。
「それ、君が言います?」
「でも、確かに感情が忙しい子よね」
みんなにそんなことを言われているとも露知らず、アリスはフェリクスを探して王宮内を歩き回っていた。
そして、気が付いた。
フェリクスのことを、アリスはよく知らない。いつもどうしているのかも、こういう時、どこにいるのかも。
だって、フェリクスは突然、アリスの目の前に急に現れた。だから、驚いている内に彼はダリアに引き取られて、別世界で再会して、ルーカスのチームへ入って……。
いや、これらは全て、ただの言い訳だ。
アリスは、自分からちゃんとフェリクスと向き合わなかった……。
「あれ、アリス」
「フェリ、クス……」
なんと、向こうの方から来てくれた。
さっきまでとは違って、制服ではなく私服姿。それも、ティーシャツにジーンズという簡素な格好。それなのに、フェリクスは相変わらずイケメンで、王子様のようにキラキラしていて……。
それだけで、アリスの心臓はキュッと締め付けられた。
「代表生徒に選ばれたんだって? おめでとう」
「あ、ありがとう……。そ、それでね、あの……」
私のパートナーを……。
そう言い出そうとした瞬間、「フェリ?」と女性の声が聞こえてきた。
「おっと、アリス」
「サラ……」
「代表生徒おめでとう。それで、ここで何してるの?」
「あの、私……。フェ、フェリクスに、その、相手役をお願いしに……」
真っ赤な顔で、何とか目的を伝えられたアリスを前に、フェリクスとサラは顔を見合わせた。
「あー……」
いつもより低いフェリクスの声に、アリスはビクッと体を震わせた。
「ごめん。俺、サラと約束してて……」
「え」
ショックのあまり、アリスの頭の中は真っ白になってしまった。
「あ、そ、そう、なんだ……」
「うん。なんか、ごめんな?」
「ううん、いいの。気にしないでね。サラも」
「あ、うん……」
アリスはそのまま、挨拶もロクにせず、その場から離れた。
何も、考えられなかった。
「……」
夕食時。
このチームにしては珍しく、シンとした重い空気に包まれていた。
聞けば、アリスはフェリクスをダンスに誘いに行ったらしいのだが、そのフェリクスにはサラという相手がいるため、断られたのだとか。
レオと皓然はアリスの淡い恋心にすら気付いていなかったので、それすらも驚きなのだが……。とにかくみんな、こういった時に何と声をかければよいのか分からず、黙り込んでしまっていた。
「えーっと……。アリス、俺とダンス踊ろう。な?」
「ううん、いい」
レオの言葉に小さく首を左右に振り、アリスはもそもそとパンをかじった。しかし、置かれたスプーンは再び持ち上げられることは無かった。
「ごめん、皓然。残しちゃった」
「あ、気にしないでください……。ぼくも、作りすぎちゃったのかもしれませんし……」
この世界に戻って来て初めて、アリスはご飯を残した。
アリスがゆっくりと部屋に戻っていくのを見送ってから、レオたちは顔を寄せ合った。もちろん、「どうやってアリスを元気づけるか」という議題について話し合うためだ。
「ああいうのは『日にち薬』とは言いますけど……」
「タイミングが悪かったな」
皓然とパウラは困り切った顔を見せあった。
「もうパーティーまで時間がない。それまでに割り切れるのかどうか……」
「完全に割り切るのは難しいと思う」
そう言ったのは、アリスの兄であるレオだ。
「他のことなら、すぐ割り切れるだろうけれど……。というか、割り切って来たけど。恋愛ごととなると、どうもアイツのことはよく分からない」
「ってことは、初恋だったってこと?」
アダンの言葉に、部屋はシンとした。
「そういうことに、なるんでしょうね」
フェリクスの妹、ローズは静かにうなずいた。
「私も、おにぃに彼女がいるって知ってたら、アリスを止めたんだけど……」
「止めたところで、アリスのことだ。何かしらの理由でこのことを知っただろうさ」
パウラはそう言って首を左右にゆるく振った。
「今回のことは、あの子にとって必要なことだったんだよ。そのこと、分かってくれればいいんだけどな」
だが、こういう時程、時が経つのは早いものだ。
アリスのダンスパートナーは決まらないまま、ドレスは決まり、期末テストは終わり。終に、ダンスパーティー当日になってしまった。
去年とは違い、スカート部分が花びらのように広がったドレス姿のアリスは、確かに美しかった。しかし、顔色はやはり暗いまま。ドレスが白いから、余計に顔色が悪く見える。
「どうするんだよ、パウラ」
耳打ちしてきたアダンに、「分からないよ」とパウラは正直に答えた。
「ボクはまだ、アリスの気持ちが分からない」
「プロファイラーの付き人のクセに!」
「うるっさい!」
口喧嘩を始めた二人を背に、皓然は「行きましょう?」とアリスに手を差し出した。
「無理に踊らなくたって、別にいいじゃないですか」
だが、その言葉にはみんなが耳を疑った。うつむいていたアリスでさえ。
「え?」
「元々は、功績者を称えるためのダンスなわけですし。アリスの気が進まないのであれば、無理に踊らなくていいと思いますよ」
「そ、そんな型破りなことしてもいいの?」
「まあ、反感は買うでしょうけど……」
ポカンとしているアリスに、皓然はニヤリと笑って見せた。
「その時は、ぼくの提案だって言ってくれて構いません。元々、ぼくは『あまりもの組』なわけですし。反感を買うのも、白い目で見られるのも慣れてます」
「むしろ、名前が残せるかもな」
そう言って笑ったのは、意外なことにレオだった。
「型破り上等。元々、俺らってそういうチームじゃんか。お前が踊りたくないなら無理に踊らなくていい。『絶対に踊らないといけない』なんて決まりはないよ」
「何なら、私と踊る?」
レオの隣から、笑顔のローズが顔を出した。
「女の子同士で踊っちゃいけない、なんて決まりもなかったはずよ。ねえ、パウラ」
「……そうだな」
アダンと顔を見合わせてから、パウラはアリスに笑って見せた。
「上等じゃないか。フェリクスに見せつけてやろう」
「ていうかさぁ、ぼくと踊ろうよぉ」
アダンにも手を差し出され、アリスは思わずクスッと笑った。
「……そうだね、その手もあったね」
皓然とアダンの手を取り、アリスはみんなに笑い返して見せた。
「ありがとう、みんな。それでね、パウラに一つお願いがあるんだけど……」
「ん? ボクに出来ることであれば、応えるよ」
「パウラにしか出来ないことだよ」
アリスはニヤリと笑った。
「あのね——」
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