120.
〈注意事項〉
※15歳以上推奨作品です。
※敬語表現に間違いがあるかもしれません。あまり気にしないでいただけると幸いです。
〈あらすじ〉
桃子と話したことで冷静さを取り戻したアリスは、再びチームメイトたちの前に立った。「自分は自分」だと思うことができたから。それに応えるため、パウラたちはどうして自分たちが『あまりもの組』なのかを教えてくれるのだという。
「結論から言うと、チームメンバー全員が『差別されている人の子供』だからだ」
そう述べてから、細かい説明に入って行った。最初は、リーダーのパウラから。
「ご存知の通り、うちは公爵家だ。パパのエルンストは、それはもう、優秀な魔術師であり、音楽家だったって聞いてる。でも、欠点が一つ……。奥さん、つまりボクらのママが対魔術師である、ってこと。ボクたち兄妹は、上級と対魔術師のハーフだ。だから、ボクとルカ兄さんは『ツヴィングリ家の汚点』なんだ。魔力を取り込む力も弱いし、魔力レベルだって、一年生の頃からボクは四、ルカ兄さんは二だ。相当、魔力を練りこんでいないと、同級生たちの魔術練習台にもならない」
「……何となく、そうなんじゃないかとは、思ってた」
「そうか。それなのにいつも通り接してくれてありがとう。これからもよろしく頼むよ」
「頼まれなくても、そうするつもりだよ」
アリスはパウラの目をまっすぐに見つめた。
「パウラとルーカスは、『ツヴィングリ家の汚点』なんかじゃない。そのこと、一緒に証明しようよ」
パウラはその言葉に驚いている様子だったが、やがて頷いてくれた。
「アリスはすごいな。予知能力でもあるんじゃないか?」
「なんのこと?」
「これは、全員の発表が終わってから言おうと思ってたんだけど……。ボクら『あまりもの組』の目的は、この世界を変えることだ。……規模がでかいね。つまり、虐げられている奴らだけで、でかいことを成し遂げてやろうって思ってるわけさ」
「まあ、みんなに一泡吹かせてやろうってことです」
皓然はそう言って、ニヤリと笑った。
「その方が、面白いでしょう? メアリー先生は、それに賛同してぼくらの担当を受け持ってくださったんです」
「性格ねじ曲がりすぎ」
ソファに体を預けたレオはそういうが、この兄もまた、笑っていた。
「まあ、そうでもなきゃこのチームにはいられないよな。ほら、次は皓然」
「ぼくは、桜花姉さんの件が一番大きいです」
そう切り出した黒髪魔術師は、とんでもないことを口にした。
「ぼくの実の両親は、黒魔術を使って桜花姉さんを僵尸として蘇らせた。いわば大罪人です。だから、嫌われてる。でも、ぼくはそんなの嘘だと思っています。自分で言うのもなんですが、二人とも誇り高い魔術師です。そんな罪を犯すわけがない」
「じゃあ、一体誰が?」
「それが分からないんです」皓然はため息をついた。「でも、両親が最後にいたのはあの例の村なので、それと何らかの関係があると思うんです。姉さんたちも、何が起こったのか、覚えていないらしいし」
「つまり、皓然はご両親の身の潔白を証明したいんだね」
アリスの言葉に、皓然は力強くうなずいた。
レオとローズがあまりもの組である理由はもう分かっているから、最後はアダンだ。
いつになくソワソワしている彼は、意を決したように口を開いた。
「ぼく、ライトエルフとダークエルフのハーフなんだ」
「ライトエルフとダークエルフ?」
確かテスト範囲にあった。
ライトエルフというのが、精霊を呼び出し、力を貸してもらえる光のエルフ。つまり、白魔術を使う良いエルフ。真っ白な髪と、宝石のような瞳が特徴。
反対に、ダークエルフとは、黒魔術を使い、人に災いをもたらしたり、いたずらしたりするのを好む、悪いエルフ。真っ黒な髪と、赤い瞳が特徴。
どちらも魔力レベルが高いことで有名だが、ダークエルフを嫌っている人は多い。そんな訳で、カエサルのようにエルフと血縁関係がある、といった場合のほとんどはライトエルフのことを指す。
つまり、アダンもパウラとローズの二人と同じように、出生のことで周りから距離を置かれている。
魔術界は血統主義だ。それゆえに、他種族の血が入ることを嫌い、より良い血統の家との婚姻を良しとする。
「まあ、魔術師も商品みたいなもんだ。でも、ボクらはそれに異議を唱えたくってね。さあ、どうする? このままこのチームにいるか、それとも、別のチームへ行くか? アリスのことだから、入るチームには困らないはずだよ」
「パウラ。それ、本気で言っているの?」
アリスは大きく息を吸いこんだ。
「私は、もうこの『あまりもの組』の一員だよ。残る。勝手に追い出さないでよ」
「君なら、そう言ってくれると思ってた」
パウラは薄く笑って、眼鏡をかけ直した。
「ああ、そうだ。最後に、このメガネのことも説明しておこうかな」
「え、普通のメガネじゃないの?」
「違うよ」パウラはニヤリと笑った。「魔力って言うのは、瞳と手に現れる。例えば、特性を使えば瞳は不思議な光に輝くし、魔術を使う時は魔法陣を手のひらに浮かべるだろ? このメガネは、瞳から余計な魔力が出て行くのを防止してくれる、魔力不足回避アイテムなんだ。だから、ボクとルカ兄さんくらいしか、この王宮でメガネをしている人はいないだろ?」
「言われてみれば……」
この世界では異様にメガネ率が少ない。そのことには、アリスも気付いていた。
まさか、そんな理由があったとは思わなかったけれど。
「普段からメガネをかけてるのは、一部を除いて魔力レベルが低いって言っているようなものなんだ」
レオはそう言って、パウラを見つめた。
「本当は、パウラの視力はとっても良いよ。皓然のが悪いくらいだ。言っておくけど、ネロのディスマス王子は視力矯正のための眼鏡だからな」
「ぼくのは、完全にゲームのし過ぎだと思いますけどねぇ」
そう言って、皓然は首を傾げた。
と、次の瞬間。彼は「ああっ!」と大きな声をあげて立ち上がった。
「なになに!? 皓然がおっきな声出すなんて、異常だよ!」
「ぼくを何だと思ってるんですか」
皓然はアダンを睨みつけてから、アリスに「今年のダンスパーティー!」と興奮した様子で笑いかけた。
「アリスが最優秀生徒って、決まったらしいんです!おめでとうございます!」
「え、あ、ありがとう……?」
それから一瞬の後、アリスも「ええっ!?」と大きな声をあげた。
「去年、ディスマス王子がなってたやつ!?」
「そうです! アリスがディスマス王子と踊ったやつです!」
「っていうか、なんで皓然が知っているの?」
当事者であるアリスにさえ、まだ来ていなかった情報だ。こういったものは、まず本人に連絡がいくものなのではないだろうか。
皓然は胸を張り、「ぼくがどこに体験しに行ってたか、忘れたんですか?」と笑った。
「国際警察ですよ? かぐや逮捕の情報、すぐに来ましたよ。これ以上ないビックニュースですから」
「それは確かにそうだな」パウラは腕を組んだ。「まあ、君のことだから一瞬でもスマホに触れられればビックニュースを掴んでくるか」
「正解です。さすがはパウラ。アリスが出て行っちゃったとき、連絡しようとしたらネット上に公開されてるの見つけたんですよ」
「それを今、思い出したってわけね」
ローズは苦笑いだが、皓然は誇らしげだった。
「アリスは、ぼくら直属の後輩ですから!」
「だから、こんな誇らしげってわけだ。特に皓然はアリスのガイド役だしな。忘れがちだけど」
パウラは呆れたように笑ってから、アリスを祝福した。
「それで、誰と踊る? ボクのお勧めはシオンだけど?」
「なんでシオン? 普通に、私が踊りたい人と踊るよ」
「へえ、誰?」
「そりゃあ……」
パウラに答えようとして、アリスは顔を真っ赤にした。
代表生徒としてみんなの前で踊る。その相手は恋人などの親しい人であることを思いだしたからだ。
そして、アリスが言う「踊りたい人」というのは、フェリクスのことだった。
これはもう、認めざるを得ないだろう。
「顔、真っ赤」
パウラが呆れたように言うので、アリスはハッとした。
「ちがっ……! お、お兄ちゃんと踊るのは恥ずかしすぎるなって思っただけで……!」
「なんで俺が急にダメージ受けないといけないんだよ」
「違うんだからね!」
再びアリスが出て行ったドアを見つめ、アダンは「嵐みたいだ」と呟いた。
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