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119.

〈注意事項〉


※15歳以上推奨作品です。暴力表現、流血表現、荒い言葉遣い等を含みます。

※敬語表現に間違いがあるかもしれません。あまり気にしないでいただけると幸いです。


〈あらすじ〉

 職業体験から帰ってきたアリスを待っていたのは、「レオとアリスは本来、双子として生まれるはずだった」という、衝撃的な事実と、ユリアの器になるための条件に、自分がほとんど当てはまっている、という事実だった。思わず部屋を飛び出したアリスがぶつかってしまったのは……。

「——おっと!」


 曲がり角を勢いよく間借り、その先にいた人物にアリスは強くぶつかってしまった。


「アリス、大丈夫?」


「桃子……」


 アリスがぶつかってしまったのは、桃子だった。彼女は今、体験先から帰って来たばかりなのか、鞄を持ったままだった。


 そんな桃子を見つめているうち、また自然とアリスの目に涙が浮かんできた。


「……どうしたの? 何かあった?」


 話したい。


 でも、言葉が出てこない。


 そんなアリスを見かねて、桃子はアリスを立ちあがらせると、談話室に入った。


 一番奥の、防音のテーブルに着くと、桃子はさらに防音の壁を不透明にして外から見えないようにしてくれた。


 お茶まで汲んできてくれた桃子は、アリスが話せるようになるまで何も言わずに待っていてくれた。


 そして、やっとの思いで仲間たちに何を言われたのかを説明し、話し終わった後はなんだかスッキリしていた。


「——ってわけで……。取り乱しててごめん」


「何で謝るの? そんなこと言われたら、誰だってそうなるよ」


 桃子はそう言って笑顔を見せた。


「落ち着いたようで何より。それにしても、疲れているのに、そんなこと言われたった混乱するだけだよねぇ。確かに大事な話だから、早くアリスの耳に入れておきたいっていう然兄たちの気持ちも分かるけど」


「あ、そっか……」


 自分の気持ちにばかり目が向いていて、パウラたちのことを考えられていなかった。確かに、アリスも彼女たちの側なら、早く耳にいよれようとするだろう。


 それでも、自分の気持ち優先になってしまったのは、怖いからだ。


「アリスの気持ちも分かるよ」


 桃子はうんうんと頷いた。


「急にご先祖様の器にされそうって言われて、しかも条件が自分に当てはまりすぎてて、怖いよね。不安にもなるよ」


「うん……」


 浮かない表情のアリスに、桃子はニコリと笑って見せた。


「アリスさ、もう少しパウラさんたちに甘えてもいいんじゃないの?」


「あ、甘える?」


「そう! 確かにこれはアリスの問題だけど、アリスだけじゃ解決できないことでしょ? なんのために、私たち魔術師はチームを組んでるの? こういう時、みんなで助け合うためじゃないの?」


「あ……」


「それで、チームメイトがピンチの時は、アリスも手を貸せばいいんじゃないのかな。助け合いって、そういうことなんじゃないのかな。辛い時に寄りかかれる人がいるって、すごい奇跡だと思うんだなぁ、私は。もちろん、私にだって甘えてくれていいんだよ。だって、友達でしょ?」


「……うん」


 アリスは久しぶりに笑顔を見せた。


「ありがとう、桃子」


「どういたしまして」


 談話室を出た時、まだ目は腫れていたが、アリスの顔は晴れ晴れとしたものだった。


 ——私は私。


 それは揺るがないものなのだと、気付くことができたから。アリスはユリアの器でも、ヘレナを倒すための兵器でもなく、ただのアリスなのだと。


 若干の気まずさを持ちつつも、アリスは部屋の前に立った。


 パウラのことだから、自分がずっとアリスの出生について黙っていたことで、自分を責めているだろう。


 皓然のことだから、アリスのことを追いかけようと部屋の外へ出て行ったかもしれない。彼は心配性だから。


 レオのことだから、戸惑ってその場から動けないでいるかもしれない。もしかしたら、アルに「どうしよう」と相談しているかも。


 アダンのことだから、慌ててアリスを追いかけようとする皓然を止めているかもしれない。意外と、彼はこういう時は冷静だから。


 ローズのことだから、アリスにこれらの事実をどう伝えるべきだったかを再試行しているかもしれない。


 全てアリスの憶測だけれど、仲間たちがアリスのためを思っての行動をとるだろう、という自信はあった。


 だって、みんな優しいから。


 そっとドアを開くと、そこには他のメンバー全員がいた。


「アリス」


 パウラがソファから立ち上がったのを見て、アリスは先に「ごめん」とみんなに謝った。


「みんなが、私のために動いてくれてるのに、取り乱して。でも、もう大丈夫。私は私って、分かったから」


「どういうこと?」


 首を傾げたレオに、アリスは飛び切りの笑顔を見せた。


「私は、言い伝えに振り回されたくない。ユリアの器にも、ヘレナおばさんを倒すための道具にもならない。そう決めたの。これが、私の意思。私は他でもない、アリス・ランフォードとして生きていきたい」


 その言葉に、仲間たちは次々と嬉しそうに笑った。実は、新事実を伝えた上で、このことを彼女に話そうとしていたから。


「なら、こちらもそれ相応の覚悟が必要だな」


 パウラは眼鏡をはずし、アリスに優しく微笑んだ。


「ずっと、君の秘密ばかり暴いていて申し訳ないと思っていたんだ。……どうして、ボクらが『あまりもの組』と呼ばれるのか、話すよ」


 アリスたちは円になるようにソファに腰を鎮めた。


「結論から言うと、チームメンバー全員が『差別されている人の子供』だからだ」

お読みいただきありがとうございました!

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