11.
〈注意事項〉
※15歳以上推奨作品です。
※敬語表現に間違いがあるかもしれません。あまり気にしないでいただけると幸いです。
〈あらすじ〉
この世界で自分に求められていることを再確認したアリス。兄のラファエルになぐさめてもらいながらも、心の中はどこかモヤモヤしたままだった……。
再びラファエルに抱きしめられ、アリスは作業着をぎゅっと握った。
——————————ねえ、ラファお兄ちゃん。皓然からどこまで聞いたの?
私、もうお兄ちゃんと本当の兄妹じゃないって知ってるんだよ。
どうして従兄妹同士なのに、こんなに大事にしてくれるの?
その問いは、そっと胸の中にしまった。この兄は、知っていたとしても絶対にそのことに触れないだろう。とても優しい人だから。
「レオも来るか?」
「やんないから!」
片腕を広げたラファエルに、レオは赤い顔で激しく首を横に振って見せた。
「なんだよ、照屋だなぁ」
「三年の子が、お兄ちゃんに抱きしめてもらいたがる訳ないでしょ」
牡丹は肩をすくめてから、皓然とパウラに「ねえ?」と同意を求めた。
「ところで、私が心配なのはクラスでのことよ」
牡丹は頬に手を当て、小さく息をついた。
「あんたたち三人とも、アリスちゃんと違うクラスになるでしょう?だって、三人とも今年から三年になるんだから。誰かアリスちゃんのサポートが出来る子がいたら、今の内に紹介してあげてた方がいいと思うのよ」
「確かに。牡丹の言う通りだ」パウラはうなり声をあげた。「ボクらが信用できる人がいいけど……。そもそも、ボクらのお願いを聞いてくれる人がいるかどうか……」
「あ。それならぼくに任せてください」
手を挙げたのは皓然だ。彼は自信たっぷりに笑って「何人か心当たりがあります」と一同の顔を見回した。
「そりゃいいけどさ」とレオ。「その人たち、本当に俺らのお願い聞いてくれるかな。ただでさえ、俺らは他より浮いた存在なのに。あと、欲を言えばアリスと同じ別世界出身者だといいな。気持ちを共有できる人がいると、少しは気が楽だと思うんだよ」
「任せてくださいって。なんと、二人も心当たりがあります!」
「心当たりのある人、全員が別世界出身者、ってことは無いよな?」
ワガママを言っておきながら心配になったらしいレオだが、やはり皓然は得意げに「心配はいりませんよ!」とハッキリ言ってのけた。
「アエラス生まれアエラス育ちの子もいますから。ぼく、こう見えても顔が広いんですよ」
「それは知ってるよ」
このチームが『あまりもの組』なんて呼ばれているのには、それなりの訳がある。
パウラであれば、血筋のせいで幼い頃から茨道を歩んできた。レオは、ランフォード家の子供、普段は別世界にいる、ということで周りの人たちに遠ざけられてきた。
だが、皓然は本来、周りから距離をとられるような人ではない。黄家というのは、魔術界で有名な上級魔術師家系の一つ。つまり、上級魔術師を多く輩出してきた家だ。彼の両親もまた、名のある上級魔術師だ。それなのに皓然が違った目を向けられる理由は二つ。一つは、彼の姉弟のこと。そして、もう一つが小人に育てられたことだ。
とはいえ、長いことアエラスに住むことで文化摩擦も少なくなり、皓然自身の能力を周りが評価しているので、彼はチームで一番、他の人たちと関係を気付きやすい立場にいるのだ。
「————————ああ、あの子たちね」
牡丹も心当たりがあるのか、パッと顔を輝かせた。
「私も、いいと思うわよ。推薦するわ」
「牡丹と皓然がそう言うのなら、会ってみてもいいんじゃないか?」
不安げなアリスに、ラファエルは諭すように優しく言い聞かせた。
「さっき牡丹も言ってただろ。レオたちとは学年が違うから、同じクラスになることはまずあり得ない。だから、新学期が始まる前に頼れる人を作っておこう。そうしたら、アリーも少しは気が楽になるだろ?」
「……うん、そうだね」
顔をあげ、アリスは笑顔を見せた。
「お兄ちゃんたちの言う通りだよ。私も、会ってみたい」
「なら決まりだな」
指を鳴らし、パウラはニコリと笑った。
「皓然を通して、いつ会えるか聞いておこう。顔が広いに越したことはない。皓然。その子たちに明日以降でいつ会えるのか聞いておいてくれ」
「了解」
皓然が笑顔で返事をしたタイミングで、鐘の音が聞こえてきた。
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