117.
〈注意事項〉
※15歳以上推奨作品です。暴力表現、流血表現、荒い言葉遣い等を含みます。
※敬語表現に間違いがあるかもしれません。あまり気にしないでいただけると幸いです。
〈あらすじ〉
職業体験も終盤。アリスたちは人魚の命を狙う『盗賊団かぐや』と死闘を繰り広げていた。一方そのころ。ユリア神殿に来ていたレオとローズはというと……。
「——あった、ここだ!」
ローズに連れられて、ユリア神殿の図書館に到着したレオは、思わず大きな声をあげた。
それから、「ありがとう、ロジー!」と、狼をわしゃわしゃとなでた。
背後で狼が真っ赤な顔をしたローズに戻っている間、レオは図書館の扉を静かにノックした。
「お呼びで?」
「ああ、中を見せてもらいたい」
すると、扉は思い切り顔をしかめたが、ドアを開けてくれた。
「ありがとう」
「お通しするのは、あなただけです。レオ・ランフォード王子」
その言葉に、思わずレオは顔をしかめた。
「まず、俺を王子と呼ぶのはやめろ」
元上級と思われる扉に対し、レオが強く出られた理由は一つ。
自分を王子と呼んだこと。
たったのこれだけの理由だった。
「それで、なんでローズは入れない? ローズだって立派な魔術師だ」
「彼女はユリア様のご子孫ではございませんので」
あくまでも、ここではユリア第一、ということらしい。
で、あれば……。
「なら、命令だ。彼女もここに入れろ」
「王子でないのなら、そのご命令は承服いたしかねます」
思わず舌打ちを漏らしたレオに、ローズは「一人で行って」と強い口調で言った。
「でも……!」
「『でも』じゃないわ。ほら、ティモシーさんに見つかる前に、早く!」
半ば強引に図書館の中に入れられたレオは、早速ユリア関連の本を探した。
しかし、さすがはユリア神殿。ここにあるほとんどがユリアに関する本だった。扉に聞いてみても、「検索ワードをもう少し絞っていただけないと……」なんて、別世界のパソコンみたいなことを言われる。
「はいはい! ユリアの器について知りたいんだ。特に、事細かに書いてあるもの。あと、ユリアの家系図も」
すると今度は、すんなりと本が出てきた。
レオが頼んだお題一つに対して一冊。計二冊の本。
レオは早速、その二冊に複写の魔術をかけて、内容をコピーしたこの世界のUSBをポケットにしまい込んだ。
あいにくと、ここに長居する予定はない。
さっさと予定を終えて図書館を出たレオを待っていたのは、笑顔のティモシーだった。
ローズは、彼に捕まっしまったようだ。首筋には銀製のナイフを当てられている。
「レオ王子。こんな所で一体何を?」
「……別に。それより、ローズを放してください。彼女は関係ない」
「お答えください。こんな所で、一体何をなさっておいでだったのです?」
ローズの首にナイフが食い込み、鮮血色の雫が一筋の線を描き、ローズの制服を汚した。
「ロー……! ……なんてことない。ユリア様について調べていただけです」
「……シーコール先生。どうです?」
すると、図書館のドアが「王子のおっしゃる通りです」と答えた。
「王子は、ユリア様について熱心にお勉強されておられました」
「ふむ」
ティモシーはやっとローズを離した。
「これは失礼いたしました」
「それは、ローズに言うべきでは?」
「失礼いたしました」
「いえ……」
首の傷を抑え、ローズはティモシーを睨みながら答えた。
「しかし、お二方とも。勝手な行動をされては困ります。さあ、皆様の元へ戻りましょう」
ティモシーの言葉にうなずき、二人は大人しくその後ろを歩いた。
ローズに「どう?」と目で訴えかけられたので、レオは「バッチリ」とサインで返してやった。
その様子すらも、ティモシーに見られているとも知らないで。
***
「何であんな無茶したんだよ!」
かぐやを倒したアリスに、パウラは第一声、怒鳴った。
イヴァナを救出したパウラたちも、盗賊団との戦闘に加わっていた。
だが、さすがはパウラ。戦闘の中でも、アリスがどのように無茶な戦い方をしていたのか、ちゃんと見ていたらしい。
「というか、シオンたちもシオンたちだ! アリス一人にかぐやの相手をさせるだなんて!」
「ぼ、ぼくらだって参入したかったのだよ!」
シオンは慌ててパウラに首を左右に振って見せた。
「でも、その隙が無かった。それは君も分かっているはずだろう!?」
「分かってるよ! だからこれは、ただの八つ当たりだよ! クソ!」
「それ、ぼくが一方的な被害者じゃないかね!?」
「そうだよ! ごめん!」
その様子に驚いていたアリスだったが、パウラに「私は大丈夫だから」とヘラッと笑って見せた。
パウラが怒っているのは、自分を心配しているが故のことだから。
「……」
パウラはしばらくアリスを見つめてから、「いいか、シオン」とアリスを指さした。
「こういう笑顔を見せる時のアリスは、もう限界だ」
その言葉に合わせるように、アリスの体はぐらりと傾いた。慌ててシオンが支えてくれたが、アリスは何が起こったのか分からず、混乱してばかりだ。
「はい、まずは魔力回復」
パウラはアリスの口にチョコレートを放り込んだ。それから、「気付いてなかっただろ」と腰に手を当てた。
「アリスは、自分のキャパオーバーに気付かない悪癖があるんだ。まず、魔力不足になっているかどうかも分かっていないだろ。いいか、魔力不足って言うのは、危険な状態なんだからな。死んでもおかしくない状況なんだから」
「魔力不足ですって!?」
どこからともなくラウラがやってきて、アリスに勢いよく抱き着いてきた。
「それは大変ですの! 少ないかもしれませんが、ラヴの魔力を受け取ってくださいまし!」
「いや、アンタも魔力不足でしょ?」
チェルシーはアリスからラウラを引っぺがし、その小さな体を抱きしめた。
「それにしても、助かったよ、ハイドくん」
「はい?」
「私の代わりに指示してくれて。私ってば、テンパっちゃって……」
軽く頭を振ったチェルシーは、シオンに笑顔を見せた。
「このことはちゃんと、上に報告しておくからね」
「あ、ありがとうございます……」
シオンにもう一度笑いかけてから、チェルシーはジュンを見つめた。ジュンもまた、パニックのあまり思うように動くことが出来なかったのだ。
彼は今、悔しみの涙を流している。
そんな彼に声をかけるべく、チェルシーはラウラを放して歩いて行った。
それから、駆け付けた警備隊にかぐやたちを預け、色々と聴取されてから、イヴァナとの別れがやってきた。
「途中から消えてすまなかったね」
そう言って、縄の跡が残るイヴァナはカラカラと笑った。
アリスたちが死闘を繰り広げている間、イヴァナは家系特性を使って、行方不明になっていた人魚の救出に向かっていたらしい。依頼人のお友達は無事に保護、海に帰って行ったのだとか。
「あの人魚は無事、国に帰って行ったよ。……君たちが来てくれて、良かった。出会えてよかったよ。また、どこかで」
その言葉に、アリスたちは笑顔で頷いた。
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