111.
〈注意事項〉
※15歳以上推奨作品です。暴力表現、流血表現、荒い言葉遣い等を含みます。
※敬語表現に間違いがあるかもしれません。あまり気にしないでいただけると幸いです。
〈あらすじ〉
ローガン、牡丹、ラファエルの三人は、春休み中に卒業式を迎え、それぞれの進路に就いて行った。そのプロムに招待してもらえず、不貞腐れていたアリスに、パウラが自分の時に招待してくれると約束してくれて……。
「新たに、二十八名の新卒魔術師の皆さんを迎え入れることが出来た事、とても嬉しく思います」
国王のその言葉に、新たに登城してきた魔術師たち二十八名は一斉に頭を下げた。
春休みも開け、今日から心機一転二年生だ。
真新しい、カスタマイズされた制服に腕を通すアリスは、誇らしげに顔をあげた。アリスが要望補に書いた通り、今度は膝丈以下のスカートだ。
それは良いことなのだが、周りを見て見ると何人かクラスメイトが減っていた。アダンは「きっと、進級できなかったんだ」とアリスに耳打ちした。
そんなわけで、今年は十九人クラスだ。困ったことに、ルイーズたちは一人も落第していなかったけれど。
それからも偉い人達の紹介、いまだ慣れないルイスの言葉、チーム分け。
去年はダリアが仕切っていたとをルイスが行った。
「新たなメンバーを迎えるつもりのないチームは、各教室で自習していること。それ以外は、チームごとに集まって」
その言葉を最後に、アリスたちは謁見の間から出た。ローズを迎えた時点で、このチームには新しい人が入ることはできないから。
それに、今のメンバーが一番安定しているから。
先輩たちと別れたアリスは、アダンと一緒に二年生の教室に入った。
「——げっ」
「……」
入ってすぐ、ルイーズと目が合ってしまった。
「アリス、『げっ』はやばいって」
「ごめん、思わず……」
コソコソと話しているうち、ルイーズは取り巻きたちを連れて教室の隅へと移動してしまった。
「去年のことが嘘みたい」
席に着き、薬学の教科書を引っ張り出しながらアリスはポツリと呟いた。
「去年、何かあったっけ?」
「ほら、ドアの前で話していたら『調子に乗ってんじゃないわよ』って言ってきたでしょ」
「ああ! そんなこともあったねぇ」
アダンはそんなことを言ってから、アリスの顔を覗き込んで笑顔を見せた。
「アリスってば、意外と根に持つタイプだよね」
「違うけど?」
「えー! 絶対そうだよ! だってぼく、もう忘れちゃってたもん!」
「それは、アダンが気にしなさすぎるだけじゃないの?」
そう言えば、去年のこの時期に悪口を言われたのも、実際の被害を被ったのもアリスだけ。アダンは何の被害も受けていないのだから、忘れていても無理はないかもしれない。
「あ、でも一つだけ覚えてる」
机に突っ伏したアダンは、アリスに優しく目を細めて見せた。
「パウラたちが力になってくれたんだ。うちのチームは『人間不信』がモットーだけどさ、仲間は信じていいんじゃない? きっと、また何かあったら、みんなが力になってくれるよ」
「……そうだね」
アリスはアダンに笑い返した。
時を同じくして、四年生の教室。
「——げっ」
こちらでもレオが顔をしかめていた。だが、理由は馬の合わないクラスメイトではなく、担任のトーマス・レンデルから全国魔術師評議会からの手紙を渡されたからだった。
全国魔術師評議会からの手紙ということは、昇級審査のことだろう。
「そんな態度を取られると、私が悲しいよ」
「……すんません」
手紙を受け取ったレオと肩を組み、皓然は「レオ」とニヤニヤしながら後ろを指さした。
なんと、ローズも同じ手紙を持っているではないか!
「良かったですね!」
「全くだね」
皓然の額にデコピンを食らわせ、レオは手紙を開けた。内容はやはり「そろそろ中級に上がりませんか?」といったものだった。
レオがずっと初級だったのは、単にポイントが少なくて受験資格がなかったからだ。この昇級審査を受けるにもポイントが必要で、初級から中級へ上がるには二千五百ポイントが必要となる。
ちなみに、パウラと皓然はすでに中級魔術師に上がっている。あの忙しい春休み中、二人そろって試験を受け、見事、中級魔術師になって戻って来ていた。
なぜか、しばらくの間はこちらを憐れむような目で見られたけれど。
「ローズ。お前、もうポイント……」
「ふふん」
ローズがレオに自信満々に見せつけたのは、彼女の魔術師手帳。なんと、すでに三千近いポイントを稼いでいるではないか!
思わず、レオと皓然はまじまじとローズを見つめた。
「凄いですね、ローズ」
「テストの点数が良かったから、ポイントをたくさんもらえたの!」
「あ、なるほど……」
万年学年一位だったパウラが、去年の学期末から二位に転落。パウラの代わりに一位の座に納まったのは、ローズだった。
一から三位以内に納まれば授業料などを免除される制度があるため、確かに高順位を叩き出すのは貴族以外であることが多いのだが……。
「三年の学期末、ローズが一位でしたもんね」
「ボクが二位で、皓然が三位。……レオは五位で結構落としちゃったからな」
「う、うるさい!」
実は、授業中にローズのことばかり見ていたから、レオは順位を落としてしまっていた。これまで、ヒューに負けたことは無かったのに。
ちなみに、この順位が発表された時点で、レオはこってりルイスから絞られていた。
「と、とりあえず! 俺は昇級試験を受けるよ。ローズは?」
「もちろん、受けるわ」
ローズは勇ましくうなずいた。
「早い所中級になって、もっと国のために働かなくっちゃ!」
「別にそこまで気負わなくてもいいんだよ?」
パウラはそう言って肩をすくめたが、ローズは譲らなかった。
「ダリア先生と約束したんだもの。約束は守らなくっちゃね」
その言葉にレオはピクッと反応したが、それに気付いたのは皓然だけだった。
「レオ?」
「……何でもない。ちょっと寒かっただけ」
そう答えた瞬間、廊下から悲鳴のような歓声が上がった。
そちらを見てみると、真新しい制服に身を包んだ魔術師たちがこちらを見て歓声を上げていた。どうやら、レオを見て興奮しているらしい。
それはそうだろう。本来、教室にいるはずのない人物なのだから。
「あーあー……。こりゃ二年の教室も大変だったろうに……」
そんなことを呟きながら、トーマスは「ほら、静かにしろー」と廊下に顔を出しに行った。
そう言えば、去年こんなことにならなかったのは、一年生にアリスがいたからだ。アリスのことだから、急に騒がれて驚いたことだろう。
それはそうと、レオは手の中の手紙を見て肩をすくめた。
「仕方ない、頑張るか……」
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