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10.

〈注意事項〉


※15歳以上推奨作品です。

※敬語表現に間違いがあるかもしれません。あまり気にしないでいただけると幸いです。


〈あらすじ〉

 ラファエルの研究室で、アリスは兄のラファエルだけでなく、皓然の姉、牡丹とも出会った。しかし、なぜだがパウラがソワソワしていて……。

 それにも引っかかったのだが、あまりにもパウラの顔が引きつっているから、話しに出てきたローガンという人物について聞くのはやめておいた。


「さてと。レオ、アリー、もう一回よく顔を見せて」


 ラファエルは弟妹の頭をガシガシと撫でまわして、満足そうに「よしよし!」と何度もうなずいた。

「今の所、大丈夫か?変な奴に言い寄られてないか?」


「何の話……」


「今のところは大丈夫だよ」


 アリスに代わって、ラファエルの手から逃れながらレオが答えた。ボサボサになった髪を直しつつ、チラッとアリスに目をやった。


「まあ、周りはビックリして注目はされちゃってたけど」


「え、注目されてたっけ……」


「ああ、結構見られましたよね」


 皓然がそういうと、パウラも「ああ」と頷いたからアリスは驚きだ。


「姫様以外に、この城に金髪の女の子はいないからな」


「ちょ、ちょっと待って!」たまらず、アリスはラファエルを見上げた。「注目ってどういうこと?どうして私の髪が出てくるの?」


「簡単に言うと、この世界でお前を知らない人はほとんどいないってこと」


 ラファエルはアリスの髪を手櫛で整えてやりながら、諭すように言った。


「陛下の予言に出てくる『英雄の子ら』。ほとんどの人がお前のことを指しているんだって思ってる。俺でもレオでもない。みんなしてアリーのことだと思ってる。この世界の人たちはお前が帰ってくるのをずっと待っていたんだ。この十年、ずっと」


「それは、聞いた……」


 ルイスとアンから。自分たちは本当の親子ではないと聞いた時に。


「で、でも、何で私なの?」


「……俺たちランフォード家っていうのは、ユリアの直径子孫だからだよ」


 さっきまでラファエルが座っていた机に腰かけながら、レオは爪をいじり始めた。


「フォティアっていう王国の、まあ、分家なんだけど。フォティア国王家は、女が生まれない家で有名なんだ。女が生まれたら、それは災いが起こる前触れ。そして、その災いを治めるために、ユリアの器になる。そう言われてる」


「……ユリアって」


 ————————この世界の創造主。


 この世界に来てすぐ、皓然が天井画を見ていたアリスに教えてくれたことだ。


「別世界で言う所の、神みたいな人だよ」ラファエルはテーブルに体を預けた。「その子孫が、四つある人間の国を治めているそれぞれの王家。つまり、本当は俺たちも王族なんだ。金髪と青い瞳は、王家の証。アリーはフォティアっていう国のお姫様なんだよ。これがどういうことか、分かる?」


「……私が、そのユリアの器になる」


「そういうこと。—————————って、多くの人は思ってる。でも、その考えだと矛盾が発生する。それは分かるか?」


 矛盾?


 あまりにも大きなショックを受けたものだから、うまく頭が回らなくなったが、アリスはあることに気付いた。


「—————————ヘレナおばさん?」


 金髪と青い瞳が王家の証なのだとすれば、ユリアという人の子孫はルイスとヘレナだ。


 そう、女が生まれない血筋に、女が二人いるのだ。


「正解」


 そこで久しぶりに、ラファエルの表情が和らいだ。


「これがどういうことなのかは分からない。本当にアリーがユリアの器になるのかもしれないし、ヘレナおばさんがなるのかもしれない。でも、まだ矛盾点はあるんだ。ヘレナおばさんのチームは五人。そのうち、ヘレナおばさんとカイルおじさん、それから、グレース・エニス先生とアンリ・マルタン先生。この四人はそれぞれ結婚してる。予言の『五つの血』。わざわざ『五つ』って分けてるってことは兄妹がいた場合、そのうちの一人が該当するんだと思う。そしたら、おばさんのチームが予言のチームだとすれば、二人足りないんだ」


「確かに……」


 ラファエルの言う通りだとすれば、確かに矛盾している。ということは、予言の『英雄』はヘレナたち以外のことを示すことになる。


 であれば、アリスが大きな期待をされるのはお門違いというものだ。


「ま、これは俺の予想だけどな!」


 今度は優しくアリスの頭を撫でながら、ラファエルは微笑んだ。


「なんにせよ、変な期待に応えなくていいし、気にしなくていいんだからな。しつこいやつとか、変なことを言ってくるやつが言ったら、兄ちゃんに言うんだぞ?今度は、兄ちゃんが守ってやるから」


「ありがとう……」


 両親からも、周りに無理に応える必要はないと言われた。加えて、ラファエルまでこんなことを言うのだから、よほどなのだろう。


「というか、『今度は』?」


「別世界でのこと、皓然から聞いたよ」


 驚いて皓然を見ると、彼は申し訳なさそうに首をすくめた。


「すみません。お兄さんだから、ラファ先輩にも言っておくべきかと……。それと、ルイス先生からの頼み事を伝えるには、どうしても言っておかないといけなくて」


「あ、ううん。気にしないで。伝えてくれてありがとう」


 つまり、ラファエルが言いたいことは……。


「魔術界では、俺が親父と母さんの代わりになるから」


「うん」


 再びラファエルに抱きしめられ、アリスは作業着をぎゅっと握った。


 ——————————ねえ、ラファお兄ちゃん。皓然からどこまで聞いたの?


 私、もうお兄ちゃんと本当の兄妹じゃないって知ってるんだよ。


 どうして従兄妹同士なのに、こんなに大事にしてくれるの?


 その問いは、そっと胸の中にしまった。この兄は、知っていたとしても絶対にそのことに触れないだろう。とても優しい人だから。

お読みいただきありがとうございました!

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