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エリーゼ様、いや結婚するから呼び捨てで良いか、エリーゼとの婚約はプロポーズした翌日に正式に受理されてその後予定がバタバタと組み立てられ結婚は1年後となった。
なんで1年か、と言うと所謂準備期間でこの1年でお互いを分かり合い愛を育むのが目的だそうだ。
これは婚約の挨拶をさせて貰った王太子様のお言葉だ。
王太子様はエリーゼの事を気にかけており『エリーゼの事をよろしくお願いします』と固く手を握られた。
国王夫妻にも挨拶を、と思ったのだが王太子様は『別にしなくて良い』と言われた。
「あの2人はよりにもよって浮気男にエリーゼを嫁がせようとしましたからね、ギリギリまで言わないつもりです」
そう言ってニッコリ笑う王太子、この人は敵に回しちゃいかんな、兄貴と同類だ。
さて、俺はと言うと領地への引っ越しの準備で忙しくしていた。
そんな時にある人物がやって来た。
「元気そうだな、レオン。 いやレオン男爵て言った方が良いか?」
「なんかむず痒いから止めてくれ、今まで通り呼び捨てでいいよ」
「そっか、俺も慣れないからこれまで通りにするわ」
コイツは同じ部隊で共に戦ってきたヒューズ・グワドロ、同じ男爵家の次男坊である。
「そういえば実家に帰っていたんだろ? のんびり出来たのか?」
「それがさ〜、酷いんだよ! 俺いつの間にか除籍されていたんだよ」
「はぁっ? なんでだよ?」
「生きて帰って来るとは思ってなかったみたいだ、家は兄貴優先だからな。 まぁ謝罪はされてお金も貰ったけど……、親に簡単に見捨てられる存在だったと思うと精神的にキツイわな……」
そう言ってフッと笑うヒューズ。
俺だって褒賞を貰っていなければ人生どうなっているかわからない。
貴族の次男坊というのは家にとってはいてもいなくてもいい存在なのだ。
「それで……、これからどうするんだ?」
「そう! それで頼みがあるんだ。 俺をレオンの領地で働かせてくれ!」
「えっ、俺の領地で?」
「あぁ、このまま王都にいるのは正直しんどいしやる事も無い。 だったら新しい環境で生き直そうと思ってな」
「それはありがたいよ、人手を探していたんだ」
俺はヒューズとガッシリと握手した。