2
「ただいま〜……」
「レオン様、お帰りなさいませ」
戦場から1か月かけて王都へと戻って来た。
その後、城で国王に謁見して報告して凱旋記念式典に出席、慣れない社交の場で戦っている時よりも疲れた……。
そして、細かい手続きとかも終わり漸く自宅に帰って来た。
「レオン様の功績はこちらにも響いておりましたよ、おかげで我が家も名が売れて旦那様もお喜びでしたよ」
「そっか……、そういえば兄貴は?」
「執務室におります」
俺はそのまま執務室へと向かった。
「兄上、入ります」
「あぁ、入ってくれ」
扉を開けると俺の兄、ラックス・クライドが待っていた。
「レオン・クライド、兵役から戻ってきました」
「うん、お疲れ様。 レオンの活躍は僕の耳にも入っているよ」
兄貴は俺と違って頭が良くて経済的に苦しい我が家をなんとか支えてくれている。
ただ、怒らせたらめちゃくちゃ怖いんだよな。
「いつの間にか戦神とか言われてて……、俺はそんなつもりは無かったのに」
「ははは、理由はどうあれ結果が出てるんだから良いじゃないか」
「兄上は代わりはないですか?」
「代わりはない、と言いたい所だけど……」
「何かあったんですか? そういえば義姉上の姿が見えませんけど」
「あぁ~、今実家に帰っているんだ」
「実家ですか?」
「実は不貞が発覚してね、今離婚協議中なんだ」
「……え?」
「向こうはやり直したいみたいだけど僕としては遠慮したい、と思っているんだ」
笑ってはいるけど、その笑みから黒い何かが渦巻いている。
兄貴は一度敵と認定したら容赦無く追い詰めるタイプだ。
俺が婚約破棄した時、元婚約者とその実家から慰謝料を毟り取ったみたいだからな。
兄貴曰く『大事な弟を傷つけてくれたんだ、慈悲は無いよ』と笑顔で言ったのはちょっと怖かった。
兄貴のそんな性格を知っている筈なのに浮気なんて……、ホント恋て人を愚かにするんだなぁ。