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俺の幼馴染は変なやつ

時間が出来たので、一日2話は更新出来たらなと思っています。

よろしくお願いします。

冬も終わり麗らかな春の日差しが降り注ぐ中。


柔らかな日差しとよく晴れた空に、穏やかな空気。小型の魔物しか出ないこの場所は、本来なら薬草を採取するにはもってこいの日和だ。


誘われて冒険者に登録してみたけど、F級冒険者としては薬草採取や町の雑用を熟すだけでも日銭稼ぎにはなる。今日も今日とて、動物を適当に狩って、子供でも出来そうな薬草採取をして、午後は鍛錬に勤しんで、ちょっと夕寝して……そんな思い描く午後を過ごす筈………


だった。




「こら――!!セルリアン!!ダメ!ハウス!そんなもの食べちゃいけません!!」


目の前に繰り広げられる光景は、俺の夢想を軽々消し飛ばす。

薬草採取に夢中になり、ほんの少しだけ奥へ入っただけで、魔猪(ボア)に遭遇してしまったのだ。春は繁殖の季節。普段より遭遇する可能性が高くなるのに、用心するのをすっかり忘れていた。

ちょっと手強い相手だが、俺達にはなんのことはない相手だ。いや、むしろ楽勝。ただ、いつも騒がしいのだけはいただけない。


俺の幼馴染のユナが、魔猪(ボア)の首に齧り付く白狼の首根っこを掴んで、後ろへ下げようと奮闘している。魔猪(ボア)は叫びまくり、白狼は唸りながら一切力を弱めず、幼馴染がうるさい。ほんと、魔猪(ボア)よりうるさい。


本来なら武器も持たず魔猪(ボア)に近づくのも、A級魔物に指定される白狼の首根っこを掴んでいるのも、命がいくつあっても足りない状況なのだが、この光景はある種お約束。長年見せられてきたこともあって、俺はため息を吐いた。


仕方なく騒音の発生源まで近づくと、持っていた剣を魔猪(ボア)の頭に差し込んだ。雄叫びをあげて絶命した魔猪(ボア)に興味を無くしたのか、白狼はその鋭い牙を首根からゆっくりと離した。


「セルリアン。ちゃんとユナの言う」

「ちょっと!クリス!!一言言ってから刺してよ!セルリアンに剣が刺さったらどうするつもり?!」


被せてくるなよ……


眉間に皺が寄るのは仕方ないんじゃないだろうか。俺は汚れた剣を拭い、鞘へと収めた。


「ちゃんと見て刺したよ」

「もう、セルリアン。前に出ちゃダメでしょう??怪我するかも知れないでしょ!」


またこれだ。

もう見慣れてしまったけど、ユナは幼い頃から()()なのだ。熊に出会おうとも、魔物と出会おうとも、従魔に戦わせるのを嫌う。

どこの白狼がたかだか猪如きで怪我を負うと言うのだろうか。魔猪(ボア)が大きいとはいえ、負けてない体躯で魔法も使えるというのに。


プンスカ怒っているユナに、セルリアンはちょっと申し訳ないような顔をしながら、上目遣いでクーンクーンと泣き出した。()()も奴らの常套手段だ。

戦闘に向かない種族でもない限り、従魔に戦うなと命令するのは世界どこを探してもユナぐらいだろう。だが、狩り大好きな狼に、獲物を目前に「待て」を強要するなんて無理がある。だから、血気盛んなセルリアンは度々命令を無視するし、その度にユナに甘えてなあなあにするんだから、あの狼は中々に狡賢い。


「もう〜〜!!次は絶対ママがやっつけてあげるんだからね?セルリアンは大人しくして、後でお肉だけ食べれば良いのよ?」

「クゥーン」

「良い子でしゅね〜!セルリアンは良い子!」


そうして、案の定の結果である。

従魔に対してママも赤ちゃん言葉もどうかと思うが、とにかく溺愛が酷い。これじゃあ、従魔じゃなく愛玩動物(ペット)だ。


「さて、クリスは?」

「おん?」


考えごとをして、返事が変になってしまった。

そんなことも意に介さず、ユナはまじまじと俺の顔を見つめる。


「怪我はないかってことよ」

「あるわけないだろ?!あれで!」

「逆にセルリアンの牙が当たったりしたら、それも危ないんだからね?」

「それはお前の方な?!」


そうして、ユナの溺愛……ではなく、度を超した過保護は俺にも向けられる。ユナが年上っていうのもあるのかも知れないけど……


「手は?まさか…大事な顔が?!」


ユナは俺の顔を両手で挟み、爛々とした目で覗き込んでくる。


「一方的に剣刺したぐらいで怪我するわけないだろ?!ちょっ……離せっ」

「確認出来るまでは離さん!!」

「しつこいっ!待って目が怖い!助けてセルリアン!フレイムでもいい!」


フレイムと呼ばれた灰狼は、終始ユナの側に控えていたが、今はユナの後ろから俺を睨みつけつつも、聞こえない振りをして無視する。セルリアンに至っては新しく魔猪(ボア)を見つけて追い回していた。


「ユナ!後ろ!セルリアンが!」

「そう言って離れようとして……こらー!セルリアン!あ!フレイムも!」


いつのまにか追い回しに参加したフレイム。「待て」が限界だったらしい。


「あーもう!ダメ!ママがやるから!せめてとどめだけにして!え?!待ってフレイム、それはどこから咥えてきたの?!」


ぎゃーぎゃーと騒ぐユナとその従魔を見ながら、俺は無意識にさっきまで掴まれていた頬をさすっていた。



読んでいただいてありがとうございました。

なるべく早く完結出来るように頑張ります。

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