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第三話 鬼に金棒 魔王に妻子 

中に居たのは、ベッドで眠っている赤ちゃんと、同じく眠っている女性だった。


なんとなくだが、赤ちゃんはぐっすり眠りについているのに対し、女性の方はぐっすり過ぎるというか昏睡という言葉が正しい気がしてならない。


「サラ、アレを頼む」

「了解、健康管理(ヘルスケア)!」


こういう、痒いところに手が届くのがサラの良いところ。


「はい結果出た。じゃあゼロ読んで」

健康管理(ヘルスケア)の結果はこっちの文字で表示されるため、サラには読めない。



「じゃあまずこの子からです。

生後1ヶ月健康状態は万全で起きたらすぐにでも泣き出すと思います。

種族は人魔族(デモンノイド)

人と魔が混ざっていて、とても膨大な魔力を所持。

その魔力は魔王のものと同質です。

ほぼ確定でこの子は魔王の血を引き継いでいるとみて良いでしょう。

そして遺伝子からしてこちらの女性から生まれたのは間違いありません」


「今思えば魔王城に魔族がいなかったのも、そういうことなのかもね。ほら魔族って異形ばっかだからさ、赤ちゃんは絶対怖がるし、奥さんにも反対されそう。そのおかげで、私たちは楽に魔王まで到達出来たんだけどね」


ジュリアが鋭い考察をする。

その発言は、俺たちが倒した魔王にも家族がいたということを痛感させるな。


「続いて女性の方です。

種族は人間。

出産した形跡があって、遺伝子からしてこの子の生みの親で間違い無い。

ただ、状態はすごく悪い。魔王の子供を産んだ影響で全身が魔力に侵されてるそうで、こちらも魔王のスーパーすごい魔法で生命や補給、呼吸は心配ないそうですが、意識はいつ回復するかわからない。それに魔王亡き今、魔法が解除される恐れもある。ということだそうです」


「まあとりあえずこの女性にも神性魔法かけとけば大丈夫でしょう」


おい適当だなとも思ったが、それ以外に手段が無いのも事実だ。

神性魔法とは対象のステータスを大幅アップさせるもので、常時発動が可能だ。

俺たちもこの3年間常にかけてもらっていたし、今もかかってる。

もっとも、これからの時代では必要なくなるだろうけどな。


「問題は、こいつらをどうするかっつー話だろ?」

「どうするかっていうのは・・・?」


傍から見るとルナが一人二役しているように見える。

それはそうと、ムーンが誰も触れたがらないことに触れてくれた。



「殺すか、育てるか」



つまりは、そういうことになる。

「殺す」は言わずもがな魔王の子供なんだったら魔王の力を継承している可能性が高い、みたいな理由だ。

「育てる」はこの子はまだ赤ちゃんなんだから、生かすならこの子の世話をしなければならない。


魔王は倒したのに、奴は新たな使命を俺たちに背負わせた。


「殺す、と簡単に言いますが、僕たちに・・・殺せますでしょうか。誰が、どうやって殺すんですか・・・」


この言葉に、全員が押し黙る。

殺せるわけがない。この残酷なほどに可愛らしい赤ちゃんを。

なんで俺らはこんな気持ちなんだろうな。せっかく魔王を倒したってのに。

いや、魔王を、この子のお父さんを、倒したからこそ、か。


「・・・この部屋に、置いていけば良いんじゃない・・・?」

ルナが、とてもらしくないことを言った。


「いえ、健康管理(ヘルスケア)の詳細を見てみると、女性はともかく赤ちゃんの方は無補給、無酸素状態でも生存可能だそうです。もっとも、お腹は空くそうですが・・・」


「なら、どうすりゃ良いんだよ」


ゼロの指摘にムーンが思わず呟く。

誰にも、決断なんてできない。


それは、大きな間違いだった。


「みんな何言ってるの!誰にも殺せないなら、育てる一択でしょ」


ジュリアが声を上げた。


「でも、そのうち新たな魔王として復活するかもしれないし、膨大な力を持ってるのは事実なんだから、ボク達だって危ないかもしれないよ・・・?」


「だとしても、大丈夫に決まってるでしょ!(わたくし)達は、一度魔王を倒したのよ。そう私達は勇者一行なんだから!!」


ルナが、みんなが持っていた不安を、一瞬で吹き飛ばした。

みんなの表情が明るくなった。

必要なのは決断、いや勇気だけだった。

俺は勇者、勇気ある者と書いて勇者だってのに。

まったく、俺はジュリアに助けられてばっかだ。


でも悪あがきぐらい、させてくれ。


「まさに今、俺が言おうとしてた事だな」


「「「「嘘つけ!」」」」


みんなの声のトーンが明るい。

何故だろう、俺の気持ちは今最高だ。


「ならば!この子は育てるという方針でいいよな!」


みんなの反応は明白だ。



「「「「意義なし!」」」」



いいとこ取りだって?

俺は勇者だから問題ない。



「待って、みんな外見てみてよ!」

「これは感動だな」


ルナとムーンにそう言われ、みんなで大きな窓に向かう。

そこには魔王城4階からの絶景が広っていたのだが。


「魔族が、いない!!」


4階とはいえ魔王城だ、ここら一帯の平坦な地形と相まって素晴らしい眺めとなっている。

その眺めの中に、魔族は1匹も見当たらない。


「もしかして、魔王を倒したから?」

「ということは魔族は魔王が全て召喚していて、自立型ではなく供給を魔王に頼っていたと・・・?」


サラとゼロが独り言を呟いていた。

信じられないな。都合が良過ぎるんんじゃないか?

もう魔族に脅かされることはない。

この世界から魔族は消え、俺たちは魔王の子供を育てる。

時代が、変わる。







打って変わって、育てると決めたからには、まず決めることとは。

そう、名前だ!


「じゃあまず、誰かこの子の名前のアイデアある人〜!」

「・・・」

「じゃあネーミングセンスある人〜!」

「・・・」


でしょうね。知ってた。

まあいいや、先に他のこと決めよう。


「じゃあそれは一旦いいとして、この子どこで育てる?」

「「ここに決まってるでしょ!」」

「だよね、ボクもそう思う!」

「僕もそれに関しては本当に悔しいですが、本当に認めたくないですが・・・大賛成!」

「俺も賛成。シェアハウスか〜いいね!夢広がるじゃん」


ジュリアとサラに続いて、皆が賛同する。


・・・俺は気づきたくないことに気づいてしまった。


「というかさ、その・・・アレはどうするの?」

「あれ?」


ジュリア聞かれたら答えやすいな


「・・・お乳」

「あー、おっぱいね」

「ルナって羞恥心とかないの?羨ましい」

「そういえば、それがあったな・・・」


ムーンが何ともいえない表情に。


「誰かお乳でる人いないの?」


「いるわけないだろ!」


ルナってぶっ飛んだこと言うよね。


「というかこの女性のを飲ませればいいだけでしょ」

「出るの?」

「出るっぽいよ」

「えっとじゃあ、サラやってくれるってことでいい?」

「そんなわけないでしょ」

「ということは?」

「そういう流れね」


サラ瞬時に理解するや否や、反対に手を握りそれを反転(?)させてその中を覗いていた。(厨二病?)

サラに聞くとこのポーズはサラが元いた世界でじゃんけんをする前に行うポーズで、手の中を覗いた時に光が見えるか見えないかで、じゃんけんで勝てる手がわかるのだそうだ。


「未来の光を覗いてるのさ」


ってカッコつけてた。

実際カッコいいけどね。


ルナもムーンにチェンジして準備万端。

そしてみんなも深呼吸。覚悟を決めたようだ。


「いくぞ、せーのっ!」


「「「「「最初はグー! じゃんけんポン!!」」」」」


ルーク  ✌️ちょき

ジュリア ✌️ちょき

ムーン  ✌️ちょき

ゼロ   ✌️ちょき

サラ   ✋パー


「嘘でしょ!?」


まさかの一人負けにショックを隠しきれないご様子。

このじゃんけんにより、おっぱいをあげるのはサラに決定した。


「あれ〜?未来の光を覗いたんじゃなかったの〜?君の未来に光は無かったみたいだけど(笑)」


まさかのさっきの会話を聞いていたらしいルナが、めちゃくちゃボロクソにサラを煽る。

こういう時のルナはクソうざいし、言葉のナイフはめっちゃ鋭い。

サラもトドメを刺されて赤面している。


「もおーーーーーーー!!」


「牛さんこちら、あっぷっぷー」


「二人は置いておいて、この中に家事できる人いる?もちろん俺はお手伝いしかできないけど」


「そりゃ僕は出来ますけど・・・」


他にはいない感じだった。

となるとゼロ、執事の血が騒ぐんじゃない?

だがゼロ一人でこの巨大な魔王城の家事を行うとなると過労死確定だ。


「流石にゼロに全部任せるわけにはいかないし・・・」


ジュリアも同じこと考えていたようだった。


「なら僕が家事キングになって、みんなをこき使えばいいのでは?」


「それいいね、こき使われるとしよう。では、ゼロを家事キングに任命する」

「ははーっ!」


王と臣下みたいなシュチュエーションで家事『キング』に任命するのはおかしな話だがな。


「あとは、お金の問題じゃない?」


ルナとの戦いから戻ってきたサラが指摘する。

確かに魔王を倒した今、勇者は用済みとなり俺たちは『元勇者一行』となる。

つまり、俺たちは無職(ニート)になってしまうわけだ。

この子を養うと決めた以上、お金は必要不可欠になる。

流石に「元勇者なんだからお金ください」って言うわけにはいかないしな。


「この世界から魔族は消えたんだから、お金を稼ぐ方法がなくなってしまったよな」

「じゃあバイトでもする?」

「・・・?なにそれ?」


サラから『ばいと』という知らない単語を聞き、俺は頭を捻る。


「あーえっとバイトっていうのはね、正社員としてではなくお手伝いさんみたいな感じで働ける制度のこと。もちろん給料も貰えるよ。でもそっか、みんな知らないって事はこの世界には無いんだね」


「確かに無いけど、ヴィヴァルトに頼んだら導入してくれそうだね」


「そうなの?」


最近は資源不足に人手不足に食糧不足だからね。

人類は5分の1まで追い詰められた。

故に人類の未来を諦めてしまったり、大切な人を亡くしてしまったりして働く人は減っている。

しかしバイトというシステムがあれば、気軽に仕事ができると思うので、大幅な人手確保が望める。

人類の復興の大きな手助けとなるだろう。


ルナがはっと何かを閃いたような表情になる。


「待ってボク、この子の名前思いついたかも」


「ホント!?」



「うん。この子の名前さ・・・ルリアなんてどう?」

投稿が遅れてしまい申し訳ありませんでした。

ルリアの名前に悩みに悩んでたらいつの間にか日は過ぎていき・・・。(言い訳)

ネーミングセンスってどうやったら身につくんだろ。

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