プレゼントと気持ち、あと現実
小学校低学年のケイスケは、お父さんの誕生日が近いとお母さんから聞いたとき、なんとなく、ケイスケからのプレゼントでお父さんが喜ぶ想像をしたら、嬉しい気持ちになってしまった。そこで早速、ケイスケは、お気に入りの財布から全財産をちゃぶ台の上に出してみた。小銭ばかりで、300円もない。これではお父さんを喜ばせることはできないかもしれない。少し悲しくなってしまった。
だけど、ケイスケは、一生懸命、その金額で買えるもので、お父さんが喜んでくれそうなものを考えた。そうだ、板チョコはどうだろう。自分も大好きだし、お父さんも、たまに、おつまみにチョコレートを食べていることがある。
お父さんの誕生日、ケイスケは、お母さんにお願いして、一緒にスーパーに行ってもらった。そして、一番おいしそうだって思う板チョコを選んで、レジに並んだ。ケイスケは、自分でお買い物をするのが初めてだったからドキドキした。大丈夫、幼稚園の行事で、お買い物ごっこをしたことがあるし、小学生になってお金も数えられるようになった。
ケイスケの番がきた。ケイスケは、代金にちょうどいい金額で店員さんに渡せるように、考えながら、数えながら、財布からお金を出していった。お母さんは、後ろに幾人か並んでいたから、支払いに時間が掛かっていることに気を揉んだ。だけど、文句を言う人はいなかった。
その日、お父さんは、いつもよりも早く帰ってきて、
「さあ、飲むぞ、飲むぞ~」
って言いながらリビングに入ってきた。
ケイスケは、
「誕生日プレゼントを買ってきた」
って告げた。でも、少し照れくさくて、
「誕生日おめでとう!」
って手渡すことはできず、
「冷蔵庫に板チョコが入ってる」
そっけなく教えた。
お父さんにしてみれば、普段何気なく買う程度の物だろうし、プレゼントはラッピングされてもなかったけど、お父さんは、喜んでくれて、お母さんが、ケイスケがレジに並んだこととかを説明すると、もっと喜んでくれた。それがまた照れくさくて、ケイスケは、携帯型ゲーム機を黙々と操作していた。
蛇足。ケイスケが、お父さんに誕生日プレゼントをあげたのは、後にも先にもこの1回だけだ。ソウスケにいたっては、1度もお父さんに誕生日プレゼントをあげたことはない。ケイスケの財布に少しの小銭しか入っていなかったのは、ケイスケは、おじいちゃん・おばあちゃんからお小遣いをもらうと、すぐにお母さんに頼んでおもちゃを買ってしまうからだ。




