デヘヘのおじさん
*オッサン視点です。
今の職場に入所したとき、バレンタインデーのチョコの配布が当番制になっていて驚いた。当番になった女性は、女性所員全員から集金して、チョコを買いに行き、男性所員全員に配る。本命チョコと勘違いする余地がないことはもちろん、義理チョコを介した心の触れ合いみたいなものも全くない。義理チョコの深淵をのぞいた気がした。
ホワイトデーのお返しについても同様だった。なお、男性所員の数は、女性所員の数の2倍以上だったから、女性所員は、投資を回収できるようになっていた。いや、別に不満はなかったよ?
特許事務所は、人の出入りが激しい。だから、毎年、時期が来ると、自分よりも後に入った男性所員に、
「ここは当番制になってるんですよ。○○さん、まだ、当番してないですよね」
と当番を押し付けた。
何を言いたいのかというと、そのくらい、ホワイトデーのお返しを買いに行ったりするのは面倒だと思っていたということである。
ちなみに、その後、事務所の業績は悪化し、人の出入りは出るのみになった。当番経験者に再び当番を回そうと悪あがきしたが失敗し、逆に当番をしたことがないことがバレ、当番を経験することになった。少しして、人数的に当番制は維持できなくなり、バレンタインデー・ホワイトデーは普通の日になった。
一旦、話は変わる。
子宝に恵まれる前、子供を可愛いと思ったことは全くなかった。だから、他人が小さな子を見て「可愛い~」と言ったりすると、「子供好きな可愛い自分」をアピールしているのかな、と勘繰ったりするだけだった。
しかし、である。親になると、不思議と、自分の子だけでなく、よその子も可愛く感じるようになった。まず、よその赤ちゃんを可愛いと感じるようになり、自分の子が幼児になると、他の幼児も可愛いと感じるようになり、小学校に上がると、他の小学生も可愛いと感じるようになった*。
そして、である。小さい女の子の何と可愛いことか。男の子よりもしっかりしているし、その様子が頑張っている感じで可愛らしい。公園や病院で、少し年上の女の子が、ケイスケ・ソウスケと遊んでくれた様子も、お姉さんぶっていてキュンと来た。男の子よりもお父さんに甘えるし、笑顔も男の子よりもキュートに感じる。女の子も欲しい! と思ったものだ。…お巡りさんは呼ばないで。
*なお、現在、息子は小学校高学年だが、この先、果たして男子中学生や男子高校生を可愛いと感じるようになるだろうかと、そこは懐疑的である。
バレンタインデーの話に戻る。
既出の双子姉妹が義理チョコをくれるようになった。双子姉妹のママさんは、よく、閉じこもりがちな嫁を車で迎えに来て連れ出してくれていたから、赤ちゃんの頃から(写真で)知っている子達である。その子達が、まだ小学校に上がる前なのに「おじさんへ」と書いたメモを付けてチョコをくれるのである。く~っ、これに萌えずして、何に萌えろというのか! キモオジと呼びたければ、呼ぶがいいさ! ママさんの指示であろうが、息子達へのおまけであろうが、そんなことは関係ない!
大喜びでホワイトデーのお返しを銀座のデパートに買いに行った。まだ価格やブランドで判断する、すれた年齢ではないことは百も承知だ。だから、パッケージのデザインやチョコ自体のデザインを見て、小さな女の子が喜んでくれそうかどうかじっくり考え、総合的に最上のものを選ぶ。味についてはブランドや値段を信じるしかない。
その選択の過程は、まるで娘を持った気持ちを疑似体験させてくれて、すごく楽しかった。もちろん、お会計のときも、複数のチョコの箱(嫁やママさんの分も含む)をカウンターに積み上げて、娘を持つ父親面だ。ママさんは、恐縮していたが、このように本人が好きでやっていたのだから、全く問題ない。
現在は、子供達が親にべったりの年齢ではなくなり、小学校も異なることから、双子姉妹のご家族とも疎遠になり、チョコは頂いていない。そう、娘が親離れした父親気分まで疑似体験させてもらった。
ところで、息子の同級生のお父さん達は、もうじき、現実に、娘に、「お父さん、臭い!」とか、「触らないで!」とか、「お父さんのものと一緒に洗濯しないで!」とか、汚物扱いされるかもしれないが、そのとき、生きる気力を失わずにいられるのだろうか。もちろん、そんなことにはならなさそうなイケメンパパもいるが、そんなことになりそうなオッサン然としている方の人数も少なくない。
そう考えると、後者に分類される者としては、男の子だけでよかったかとも思うのである。




