ティッシュがうらやましい、なう
ある日、幼稚園で帰り支度をするとき、ケイスケは、体操着から通園用の制服への着替えに、みんなよりもずいぶんと手間取ってしまい、それが悲しくて、悔しくて、泣き出してしまった。
近くにいたフミちゃん(仮名)は、カバンのポケットからポケットティッシュを取り出した。その袋には、人気アニメの、変身してワルモノと戦う女の子が描かれている。フミちゃんは、袋から1枚のティッシュを取り出すと、ケイスケの涙を拭いてあげた。
ケイスケは、びっくりしてしまった。お母さんでも、先生でもなく、お友達が涙を拭いてくれたことに。そして、びっくりしたことで、泣き止んでしまった。
(ケイちゃんは、クラスで1番の泣き虫さんだから、また、泣き出しちゃうかもしれない…。お気に入りのティッシュだったけど…)
「はい、これあげる」
フミちゃんは、袋ごと、ティッシュをケイスケに差し出した。
ケイスケは、また、びっくりしてしまった。お友達に物をもらったことは無かったし、それに、アニメの絵がプリントされているような立派な物をもらうなんて、とんでもないって思ったからだ。だから、ケイスケは、どうしてよいかわからず、まごまごしていた。
そうすると、
「ここに入れておくね」
フミちゃんは、ケイスケのカバンのポケットにサッとティッシュを入れた。そして、唖然としているケイスケをおいて、タタタッと下駄箱の方へ行ってしまった。
(○○ちゃん(ティッシュに描かれていたヒロイン)みたいだったかな。フフフ)
ケイスケが帰ってくると、お母さんは、カバンの中のティッシュを見つけた。ケイスケは、まだちゃんとしゃべることができなかったから、どうしてティッシュが入っていたかを説明できなかった。お母さんは、ケイスケが、ロッカーが隣の子の持ち物を間違えてカバンに入れたのかもって思って、幼稚園に電話したりした。
それを見ていたソウスケ(やっぱりまだちゃんとしゃべることはできない)は、自分のカバンのポケットを見てポツリと、
「ない…」
お母さんは、
「ソウちゃんには、お母さんがいるじゃない!」
笑いながらソウスケを励ました。




