そこに山があるからでちゅ
ソウスケがハイハイを出来るようになった頃、お母さんは、よく、
「ハイ、ソウちゃんが好きなの、どうぞ!」
って、布団で坂道をこしらえてくれた。
ソウスケは、満面の笑みで頂上まで行って、少ししたら、向こう側へは行かずに、その向きのまま後ろに下がって戻ってくる。戻るときは、少し真面目な顔。それから少ししたら、また、満面の笑みで頂上まで行く。頂上を超えないのは、頭を先(下)にして降りることが怖かったのかもしれない。
歩くことができるようになってからは、階段が大好物になった。階段に手をつき、1段1段ゆっくりと一生懸命のぼる姿は、たどたどしく、可愛らしいけど、少し頼りない。そして、お母さんの心配をよそに、滑り台等の公園の遊具をてっぺんまでのぼってしまう。ただし、降りるときはお母さんのお手伝いが必要だ。
階段なら何でもよく、近所を散歩しているとき、よその家の玄関への階段を見つけてしまうと、のぼらずにはいられなかった。もちろん、それは、お父さんやお母さんに邪魔された。
2歳になると、なんとなく、よその家の階段でも、その家の人と一緒なら、のぼっても邪魔されないって分かってきた。だから、アパートの斜め向かいの家の前を通りかかったとき、その家のおばあちゃんがいたので、ちっちゃい手で、おばあちゃんの手(の一部)をつかみ、玄関の階段に向かって引っ張った。おばあちゃんは、
「あらあら」
って嬉しそうに笑った。その後、お母さんと双子は、お宅におじゃまして、お茶やお菓子をごちそうになった。
その晩、お母さんは、仕事から帰ってきたお父さんに、
「今日、ソウちゃんが、Nさんちの奥さんの手を取って、メロメロにしてたのよぅ」
って笑いながら報告した。お父さんは呟いた。
「いや、アパート住まいなのに近所の人と親しく付き合ってる、お前の方にびっくりだよ」




