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17 告白。

『命を賭してアナタに好意を示させて下さい』


 僕は偽りの人生を終わらせる為、偽りの恋を演じ、王太子としての人生を終わらせた。


 そこで全てが終わり、後はただ死ぬか、兄の為に生きるか。

 そう思っていたのに。


 兄は、僕の好きに生きて欲しい、と。


『あの、バスチアン様、媚薬か何かを』

『いえ、僕は男色家なんです、気付いたのは少し前ですが、アナタを好きになりました』


 同性では子を産み出せない。

 国に利は薄く、庶民貴族に関係無く、時に嫌悪を示される性癖。


 そう分かっているからこそ、仕事仲間として居るだけでも構わないと思っていた。


 けれど、もし、命を賭すならと。

 僕は賭ける事にした。


 叶わない相手の傍に居るだけは、酷く辛い。


『あの、何か誤解が有るのでは』

『いえ、アナタに励まされた瞬間から、僕はアナタの傍に要られるならと思いました。ですが命を賭すなら考える、その言葉に考えを変え、こうして伝えさせて頂いています』


『不思議ですね、物語同様、周囲と同様の疑問が強く浮かんで仕方が無くなってしまう』

『どこが、何故好きなのか、ですか』


『ですね』

『賢さと志の高さ、信念への信頼と、僕なんかを励ましてくれた事です』


『アナタを励ませる者はそう居ないでしょうけど』

『嫌われたく無い、そう強く思った事は初めてなんです、いずれ忌み嫌われるだろうと覚悟していた中で、初めてだったんです』


 そして出来るなら、愛されたい。

 彼の唯一の存在になりたい。


『利も得も確かに薄いとは思いますが、女性に相手にされる事を諦めてらっしゃるだけでは』

『僕の顔や存在が知られていない場所へ行く事も提案されましたが、子を持つ事には興味が無いですし、ただ生きるにはあまりに心苦しいですし。もう、アナタ以外に興味が無いんです、誰かと一緒に居たいとは思えないんです』


 それが母親でも王でも、本当に血の繋がった兄弟でも。

 最早、会話する意味すら分からない。


『もし、僕が受け入れなかった場合は』

『アナタの望む通りに、目の届かない場所なり死なり、アナタが望む通りにします』


『念の為にお伺いしますが』

『どちらなのか、でしょうか』


『ですね、はい』

『お任せします』


『成程、少し考えさせて下さい』

『はい』




 本当なら、いつまでに答えを出せるか、そうした事を言えれば良いんですが。

 まさに青天の霹靂、全く予想していない相手からの好意に。


 今度は僕がシャルロット様に相談を。


 いえ、それでは万が一にもバスチアン様が嫌悪されてしまうかも知れない。

 しかもコチラの事で悩ませてしまっては、今度はメナート様の損になってしまうでしょうし。


 と言うか、賢さと志の高さ、信念への信頼を評価頂いたんですが。

 やはり、どうして自分なのか、と。


 なら、ココはやはりアニエス令嬢でしょうか。

 今は恩師でらっしゃる勲功爵が王都にいらっしゃるそうですし、悩ませる分量としては問題無い、筈。


 あぁ、確かに相談とは勇気の要る事ですね。

 特に私的な事となれば、尚更。


《お兄様?難しい顔をしてらっしゃいますね?またアニエスさんの問題ですか》


『シャルドン、近々アニエス令嬢の家に遊びに行くつもりなんですが、一緒に行きま』

《行きます》


 シャルドンの事はバスチアン様に任せ、僕はアニエス令嬢に相談に乗って頂こう。




「コチラは確かにウチの商品に似ていますが、どちらでお買いになられましたか?」

《ココに決まってるじゃない》


「残念ですが、コチラの品は私の店では取り扱っていないんですよ」


《じゃあ、本店の》

「そう本店と呼ばれる場所でも取り扱っていないのですが、正直に仰って下さい、どちらの古物商からお買い上げになられましたか?」


《そ、路上よ》

「やはり、残念ですがコチラは良く似た模造品です。模造品をコチラでも取り締まっているのですが、どうしても漏れが有りまして、何処でどの様な方から買われたか覚えてらっしゃいますか?直ぐに警備隊に動いて頂きますので、近くの詰め所まで一緒に参りましょう」


《私は別に、お金さえ》

『だからこそです、偽物を売る様な者は宵越しの金は持たないそうですから、善は急げです。もしかすれば報奨金が出るかも知れませんし、詰め所に直ぐに向かいましょう?』


《違うの、私は別に》

「大丈夫です、慣れてますから、さ、行きましょう」


《違うの、ごめんなさいっ》


 逃げ出すのは構わないのですが、ウチはウチで手を打たせて頂く事になってしまうのですが、その方が面倒なんですけれど。


『はぁ、困りましたね、こうなられた方がお互い損だと言うのに』

「ですが、その道理が分からない方を使う様な者、と言う事は幸いかと。手の込んだ黒幕など居ては、また私はアーチュウ様にお話を伺わなければなりませんから」


 治安の悪さは国家の政治の手腕の悪さ。

 ともすれば商人は真っ先に逃げ出す手筈を整えなくてはならない、人は勿論、物を移動させるにはとても手間暇がかかってしまいますから。


 そうして生活基盤の確保後、従業員の身の安全をやっと確保出来る、それからやっとお客様の事も。


《お嬢様、本店に早馬を出させ馬車の準備も整いました》

「ありがとうございます、少し行ってきますね」

『はい、宜しくお願いしますお嬢様』


 良く有るんです、こうした返品返金詐欺。

 ウチの品物の証は品物によって独自変化をさせているのですが、偶に本当に偽物を掴まされてしまう方も居り、コチラはコチラで知って直ぐに知らせなければ身の証を立てられない。


 本当に迷惑なんですが。

 大概は生活に困った庶民のする事、殆どはウチで雇用するか最適な職場をご案内し、暫く弁済金を支払って頂いた後には無罪放免となっているのですが。


 今回は敢えてそれなりの技術を持った方が精巧に作った偽物、敢えて全く同じ品物を作らず、偽物として返金の要求を代理にさせた可能性が有るのですが。


 何故、どうしてその様な事をするのか。

 騎士爵の婚約者としての妬みや嫉み程度なら、シリル様にお任せすれば良いだけなのですが、今回は意外と抜けてらっしゃる。


『失礼致します、お嬢様』

「あ、もう黒幕が掴めたのですね」


『はい、サミュエル・ヴァッシュとの名をご存知でらっしゃいますか?』


牡牛(ヴァッシュ)、ですか」

『はい』


 牛、うし。


「あぁ!牛皮で身を立てた勲功爵家でしたら、ですが何故そのような名家の方が」

『学園のお知り合いかと、お嬢様とそう年が変わらない少年に見えましたが』


「いえ?全く関わりは無いのですが」


 今でも立派に3代目がお継ぎになってらっしゃり、特に不穏な噂も何も無い筈なのですが。

 何か、気に障る様な事を私がしてしまったのでしょうか。


 お顔も知らないのですが、ウチが何かご迷惑を。


『でしたら、取り敢えずはご実家に寄った方が宜しいかと、お相手は上位貴族ですから』

「そうですね」


 そして私が実家に着いた頃、ジハール家のガーランド侯爵令息とシャルドン令息が私を尋ねにいらっしゃっておりまして。


『すみません、突然お伺いしてしまい』

「いえ、ですが生憎と少しややこしい状況でして、寧ろコチラからお伺いしようかと」

《あらあら詰め所では無かったのアニエス》


「コチラ母のマーガレットです」

『宜しくお願い致します、ジハール家のガーランドと申します』

《お久しぶりですマーガレットさん》


《はい、お久しぶりで御座います、シャルドン様》

「すみませんお母様、実は勲功爵家が関わっているかも知れないので、先ずはご相談させて頂こうかと」


《あら、勲功爵家が、どうしてかしらね?》

「そこなんです、このまま少し伺って頂いても宜しいですか?ガーランド様」

『はい』


 そうしてガーランド様に事情を説明し、お知恵を拝借頂ければと思ったのですが。


《私の方では何も聞いていないのだけれど》

『僕も、ですね、特に不穏な噂は何も無いんですが』

「ヴァッシュ家の家紋とご本人を見たそうなんです、ウチの護衛が」


『では、僕と共にご挨拶に伺いませんか?観劇に誘う口実は有りますから』

「ですが、あの、何かご用が有ってコチラに来られたんですよね?」


『コレは、もう少し事の次第が分かってからにさせて下さい、私用なので』


「では、お言葉に甘えさせて頂きますね」

『はい、ですのでシャルドンの事をお任せしても宜しいですか?』

《勿論ですわ、ふふふ》


 シャルドン様は子供好きな母に任せ、ガーランド様とバスチアン様と共にヴァッシュ家へ。


『僕は言うのも何ですが、どうしてアニエス嬢に嫌がらせをなさるんでしょう』

「ふふふ、今回も全く面識が無いですからね」


『すみません』

「いえいえ冗談ですよ、ですけど本当に全く思い当たる節が無いんですが、バスチアン様はどう思われますか?」


『全く見当が付かないですね、ご商売でも学園でも関わってらっしゃらないそうですし』

『学園では特に問題を聞く事も無いですが、話された事も本当に無いんですよね』

「はい、全く」


『でしたら、物語で考えるなら、横恋慕かと』

「まさか、何も関わった事が無いんですよ?」


『だからですよ、勝手に理想を重ね思い込み放題ですから』

「思い込み放題、ですか」


『はい、実は、僕の方で任されている件が有るんですが。いつかお耳に入れなければならないと思っていまして』


「何の事でしょう?」


『ベルナルド騎士爵の本当の相手は私なのだ、と言い出す者が現れまして、その者の相手をしているんです』


「ご苦労をお掛けし」

『いえ、作品に活かせればとのご好意で任命された事なんですが、いつお伝えすべきか迷っていたんです。騎士爵も知らないかも知れない事、でしょうから』


「あぁ、多分、お知りでらっしゃらないかと」


 今後とも、隠し事はしたくないと仰ってましたし、私も隠し事はして頂きたくは無いとお伝えしましたし。

 それにしても、いらっしゃるんですね、あんな事が有ったにも関わらず思い込める方。


 いえ、もしかすると学園に通ってらっしゃらないなら、そう思い込めるかも知れませんが。

 アーチュウ様の知ってる方となると、王都の方でしょうし。


 一体、何処のどなたなのか。


 そして、今回の件はヴァッシュ家のサミュエル様が本当に関わってらっしゃるのかどうか。

 困りますね、私は私の手の届く範囲の事だけで精一杯だと言うのに。

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