何が起こったんだ⁉
痛い。ジンジンする。手が心臓みたいに波打ってる。
「何をするんだ」
温厚なツバサが声を荒げた。突然床にたたきつけられたら、そりゃあ誰だって怒るだろう。でも、彼はそんなキャラじゃない。優しくて細くて、なよなよして。怒鳴られたのは初めてだった。自分が悪いのはわかっている。わかっているけど、びっくりした。衝撃的だった。態度も言葉も今までと違った。違う、違う。この人、誰。本当にツバサなの。
突然の出来事に涙ぐみながら、痛みをこらえた。いや、痛みなんかこらえられるわけがない。痛すぎる。
血が肘をつたって床に落ちていく。ポタポタと。イタイ、イタイ、イタイ。
言っているつもりなのに、声は出ていなかった。
手の平をぐうで閉じて、腕を体の方に引き左手で脇あたりを掴んだ。あごに右手の甲があたる。
ツバサは立ち上がって、視線を合わせることもなく無言でゆっくりとわたしの横を歩いて、店外に出て行った。エリカが立ち上がってわたしを見る。目が合った。でも、彼女は目を伏せて、バックを掴むと、ツバサを追いかけて行った。
ウソでしょ。
マコトが慌ててタオルを持ってきた。傷口を見て、そしてタオルを巻いた。その上からラップでタオルごと手をグルグル巻きにした。
「大丈夫?痛くない?」と、マコト。
返事できない。
客から叫び声が聞こえた。振り返る。数人がわたしを遠巻きに見ている。いや、もっとかも。今日、客の数は多かった。
「心臓より高く手をあげろ」
マコトに怒鳴られて、とっさにケガをしていない手を挙げた。
「バカか、反対だ」とマコト。
ホントだ。
ケガした手を挙げた。
なんか、ちょっとくすっと笑えたけど、マコトをみたら彼の顔は蒼白だった。電話をしている。
「縫ってくれるって。車まわしてくる」
「縫うって何」
頭が回らない。
「その傷に決まっているだろ。今から行くぞ、夜間診療」
「縫うのイヤだ。痛そう」
「バカか」
後ろ襟を引っ張られた。そのまま引きずられるように歩く。目の前にあぜんとする店主が立っている。
「飲み代は払っていますけど、不足分があったらまた請求してください」
「いやいや、大丈夫?こっちは気にしなくていいから」と、店長。
「すみません、こんなことになって」
話の途中にマコトが割り込んできた。
「うるっせいな、なにごちゃごちゃ言ってんだよ、バカか」と、マコトが怒鳴る。
「バカバカ言うな」
思わず怒鳴った。
もう泣きたい。痛いし怒られるし。バカって何。エリカには言われ慣れているけど、なんであんたにまで言われなきゃいけないの。
高校のとき確かに同級生だったけど、接点なんてなかった。ほぼ初対面の感覚だ。
わたしのバックはマコトが持ってきていた。マンションの駐車場で車に乗った。車高が高い車で、乗りにくかったけど頑張った。
マコトってこんなキャラだったっけ。あのときの根暗感、どこに置いてきた。




