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托卵   作者: 伊藤禎二
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飲み会

 三人の飲み会専用グループラインにメッセージが入ったのは、エリカの家に行ってから三日後だった。場所はいつもと同じ。マコトのオヤジさんがやっている居酒屋。日曜日の八時から。

 わたしは普通のサラリーマンだから土日休み。エリカは日曜日、預かり保育の関係で週二、土曜日も休み。ツバサは月曜日と火曜日休み。惚れた弱みなのか、飲み会はツバサの希望で日曜になる。わたしたちが異議を唱えたことはない。

 場所も、ツバサが住んでいるワンルームの下の居酒屋。居酒屋はマンションの一階部分にあって、オヤジはマンションのオーナーでもある。わたしたちは無理矢理タクシーで退場させられるというのに。

 

 店ののれんをくぐると、石畳が見える。その先に入り口。エントランスは混んでいて、客の列があった。順番待ちの人の波をかき分け、受付の横を通り過ぎる。カウンター席に、予約席と書かれたプレート。いつもの場所だ。今回はエリカが予約をしてくれた。

「いらっしゃい」

 オヤジの声に頭を下げる。三人分のお通し、そして、唐揚げ。これ、サービスだからって言われる。ありがとうございます、って言って、強力な笑顔を見せる。

「エリカちゃんはトイレ。ツバサ君はまだだよ」と、オヤジ。

「はーい」

 元気に返事した。

 エリカはトイレで化粧のチェックをしているんだろう。結局、最後にはわたしとケンカ、化粧が崩れるのに。無駄な努力だ。ツバサは子どものお母さんに人気があって、仕事の教室が終わった後がまた長いらしい。イケメン講師の宿命だ。子育ての悩みや運動指導のコツなどの質問の中に、彼女の有無、デートの誘いまでいろいろあるらしい。それを笑顔でかわさなければならない。

「おう、ミサキ」

 エリカがトイレから出てきた。

「おっさん、入っているけど」

「いやだぁ」

 黄色い声がでる。もうそろそろ、本性ツバサに見せたら。男の前で態度かわるのってどうなの。女友達に嫌われるパターンなんだけど。

「先にやっちゃいますか」

 言うと「おなかすいたし、やろうやろう」って返事が来た。

 ビールを店員から受け取った。タッチパネルでいくつか注文した。串にサラダ、野菜スティック、ピザに揚げだし豆腐。

「カンパイ」

 エリカの声に合わせてグラスをあわせる。

「ツバサに」

 再度、エリカの声。どんだけツバサが好きなんだ、って思いながらビールを飲んだ。 

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