表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
托卵   作者: 桐谷 光
53/56

エリカ、再登場

 ブザーが鳴った。

 家に帰ってきてからどれくらい時間たっただろう。寝落ちしていた。

 玄関のドアを開けて、顔を見た。

 やっぱりエリカだ。

 家に入れた。本当は2人きりになりたくない。だけど、だから逃げるのも違う。ちゃんと、話さなければならない。

 マコトはとっくに帰っていた。まあ、あいつにいられても邪魔なだけ。人見知りだから逃げるだけだろうし。期待はできない男だ。

 エリカにコーヒーいるか聞いた。いらないって。だから、出さなかった。

 玄関の外は暗かった。今日は土曜日。預かり保育の日だ。当番で出勤なのは知っていた。きっと、帰宅後にきいたのだろう。わたしが、エリカの部屋から出てきたことを。そして、マコトのことも。

 奥のこたつまでは案内したくなかったから、玄関先の流しの前にある簡易テーブルに置いてある椅子に座ってもらった。自分も座る。

 テーブルの上に口をつけていないビールがあった。マコトに渡したものだった。汗をかいていた。冷蔵庫に戻した。

 彼女はテーブルを手で強くたたいた。

「子宮かさないって何。言ってることわかんないんだけど。どういう意味よ」

 エリカの金切り声。耳が痛い。

 よくもまあ、何度もこんな怒鳴り声が出せれるもんだ。尊敬する。

「貸さないってことです」

 わたしはゆっくり話した。感情的にならないように。

「そんなこと、お願いしたことありましたか」

 大声でまくしたてる。敬語が不気味だ。

 はて。エリカにお願いされてなかったんだっけ。あ、そうか。開発研究室の馬面アベックから聞いたんだっけ。パニックになりすぎてるな、わたし。話の整理ができていなかったか。

 少しだけ笑ってしまった。

「なんなのよ、その笑いは」

 エリカがキレている。怒鳴り声、となりに響いていないのだろうか。

「ごめん、ごめん」

「わたしたちのこと、どれくらい知っているのよ」と、エリカ。

 空気が電気を帯びてきた。ピリピリする。空気中の水蒸気量が多かったら、感電するのだろうか。

「知らないよ、なにも。托卵する宇宙人ってことも」

「はあ?」

 エリカの金切り声は電気っぽい。

 喫茶店での出来事を思い出した。二人でわたしをバカにしていた。価値のないわたしをリユースするって笑って話していた。ショックだった。

「ツバサとは付き合わないし、子宮も貸さない」

 エリカの顔が青色に変化した。

 はいはい。なんか、免疫ついてきた。

「あんた、何言っているの」

「死にたくないから、貸しません」

 エリカの声のトーンが変わった。

「死なないよ、死なない」

「もう、そういうのいいよ」

 しばらく沈黙があった。

「あたしたちのこと、どれくらい知っているのよ」

 自分の髪の毛が上に上がっている。静電気がすごい。この家の中に雷が落ちるってことあるのかな。

 ツバサの部屋を思い出した。

 きっと、ツバサと球体のが見られたことを話したのだろう。いや、エリカの家にそれを使って移動したことを話したのか。それで、ツバサに言われて会いに来たとか。

 顔は青から赤になりつつあった。

「何も知らない。宇宙人とかも、知らない」

「はあ?」

 ああ、さっき言ったか。

「繰り返しになるけど、ツバサとは付き合わないし、子宮も貸さないし、会いに来るのも今回で最後にして。もう、友達でもないから」

「なんでよ」

「アンタのこと信じてないから」

「やめてよ、親友でしょ」

「死にたくないの」

「死なないって」

 ウソつき、ウソつき。喫茶店で言ったくせに。リユースするって。わたしはアンタたちにとってゴミなんだよ。分ければ資源ってやつ。

「内臓食いちぎられて死なない人間がいるの?」

 顔色が緑色に変化していく。白目も緑。自覚ないのだろうか。カメレオンか。感情の起伏と顔色はつながっているのだろうか。

「誰に生きたんだよ、それ」

「え?」

 喫茶店?同じ職場の研究カップル?覚えてない。

 エリカがわたしの顔をにらみつけている。

「知り合いの宇宙人かなぁ」

「まさか、ツバサ?」と、エリカ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ