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托卵   作者: 桐谷 光
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おじさんも宇宙人

「えぇ、えぇ、えー」

 マコトが叫んでる。

 わたしも、手が震えていた。部屋と反対側の通路側にしりもちをついていた。

「おじさん、知ってたんですか」

 叫んだ。

「いや知らなかったんだけど、そうだったんだなって思ってね。初めて見たわけじゃなけど、まあそういうこともあるんだな、って」

 何を言っているのかわからない。でも、マコトが宇宙人ならオヤジだって宇宙人だ。このデカい水の球の存在を知っていてもおかしくはない。

「なるほどね。そうか、そうだったのか。ツバサくんがねえ。ドアが壊れたことは言っておくよ。あっちの都合もあるだろうから、都合がいい日にドアを直すってね。修理代は払ってね」

 オヤジはあんなに怒っていたのに、サラッと帰っていった。

 わたしたちは顔を見合わせた。

「どういうこと」わたしの問いに「さあ」って言葉が返ってくる。

 大家のおじさんが帰って行って、すぐにどこかから人の気配がした。二人で慌ててツバサの部屋に入って隠れた。こんなところ見られたくない。わたしは泥棒だと住人に思われている。

 ドアを閉めた後、家の中、玄関で靴を脱ぐ。目の前にはゆらゆらと波打つ球体があった。なにか、誘われているようなそんな気持ちになる。

 手を入れた。そして、手を出す。濡れていない。手を顔に近づける。観察したけど変化なし。冷たくもないけど水の気配はある。においを嗅いでみる。無臭。再度手を入れてみる。かき混ぜる。白い泡が手の周りに集まり、どんどん広がっていく。

 何もない生活感のない部屋を探索していたマコトがわたしの方を向いた。

「おい。勝手にそれに触るな。お前、これが何か知っているのか」

「知らない」

「分からないモノには近づくなよ」

「マコトはしらないの?」

「知るわけないだろう」

 球体が激しくカクハンされ始めた。水が手に激しく絡みつく。

「手を抜け」と、マコト。

 抜こうと思っても抜けない。どんどん球の中心へと引きずられていく。水が体を覆っていく。

 マコトが手を伸ばして、わたしの手を掴んだ。

「手を放して。やばい。引きずられる」

 わたしがマコトの手を離そうとしたけど、できない。

 ビックリした。体はすべて水の中なのに言葉が話せる。口に水が入らない。っていうか呼吸は?全然、苦しくない。

 マコトがわたしを体ごと掴んだ。わたしたちはそのまま、どこかに引きずり込まれていった。

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