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托卵   作者: 桐谷 光
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やりたい放題

 ツバサの家にはきっと何かがある。

 わたしがエリカに二人の関係を問い詰めたとき、エリカは顔を緑色にして怒った。ツバサの家からエリカが出てきたことを指摘したときだ。きっと、あの家には何か秘密があるに違いないのだ。

 家にある工具箱を掴んだ。


 わたしたちはツバサの家の前にいた。一番上の奥。角部屋。

  部屋はポストで確認していた。名前の記入していないポストはいくつかあったが、一人暮らし用の部屋のポストで名前がないのは一つだけだった。もちろん記入されたポストの中にツバサの名前はない。

 ツバサが出勤しあろう一時間後の十時過ぎだった。

 部屋にはヤバいものがあるはず。子宮を食い荒らされた人間のホルマリン漬け、いや変死体か。宇宙船の残骸とか修理用予備部品。体に埋込用のミリ単位のカプセル。見た目じゃわからない最先端の機械系な、なんか。案外、レトロなもがあるのかもしれない。宇宙との交信に使う大きな縦型のストーン。重すぎて、入らないか。床が落ちる。じゃあ、小型の代物。プラスチックの小さなストーンとか。想像力が乏しいからそれくらいしか思いつかない。

 最後までぐずっていたマコトを連れてきた。用心棒。宇宙人お化けが急に襲ってきたときは、マコトを盾にして逃げよう。時間稼ぎにはなる。

  

 ツバサの部屋であろうドアをノックした。返事を待った。何も起こらない。マコトの顏を見た。マコトは黙ったまま、泣きそうな顔をしてこちらを見ていた。軍手をはめて取っ手を掴んだ。回せない。鍵がかかっている。まあ予想はしていた。ですよね。しばらく考えたけど、いい考えは浮かばない。

 ポケットに入れていたヘアピンを伸ばした。床に膝を立てて屈み、伸ばしたヘアピンを鍵穴にいれて動かす。ドラマだと、カチって音がして開くんだけどそんな気配ない。鍵穴の周辺に細かいキズが入って、泥棒が何かやりました的な感じになっている。

 サイアク。

「くだらないことしてないで、帰ろう」

 黙れ、マコト。

 持ってきた工具箱からドライバーを出す。鍵穴には入らない。キズがつくだけ。ドアの周りにねじ的なものは見当たらない。

「やめなよ」

 なよなよしい声。うざすぎるんだけど。

 工具箱の下の方に入っていた細い緑の針金を出した。昔ベランダできゅうりをプランターで育てていた時の残骸。入れてみる。針金は柔らかくて先端が丸くなっているような気がする。何度も掴んだ指先で動かすが、針金が中に少しずつ入るだけで、手ごたえはない。

「クソ」

 立ち上がって、ドアを蹴った。何度も何度も。足が痛くなった。

「ムカつく、ムカつく、クソー」

 鉄板に見えるドアがほんの少し、何ミクロンの小ささで傾いた気がした。

「やめろよ、やめてくれ」

 マコトが叫ぶ。

 工具箱から金属の細いノコギリを出した。

「それって何」

「見て分からない?」と、叫んだ。

 それをドアと壁の間、下のちょう番に差し込む。押したり引いたりして切断できれば。ドアはきっと開く。でも、労力を使うばかりで、切断できそうな気がしない。何往復、何十往復。何百往復。三十分は過ぎた。丁番はびくともしない。でも、細かいキズは増えていく。時間が経っていけば、なんとかなるのだろうか。

 後ろを向くと、マコトが体育座りでこっちを見ている。

 ムカつく。もしかして、くつろいでる?まあ、あきらめているんだろうけど。

 最後の手段だ。

 工具箱の中からかなづちを出した。

 持って、ドアを叩いた。何度も何度も。ドアが変形していく。叩かれた場所がリアルにへこんでいく。工事現場のような音が響き渡った。だれも、現場に来ない。ヤバいヤツがドアを叩き落してるって思われてるのだろうか。気が付くと、体育座りだったマコトが、わたしの周りを意味もなくウロウロしている。

「ミサキちゃん、やめなさい」

 聞き覚えのある声。振り向いた。

 マコトの父親がわたしの前に立ちはだかった。

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