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托卵   作者: 桐谷 光
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わがままでごめんね

「で。どこに宇宙船、隠してんの」

 あんなにケンカしていたのに、最終的に仲良くカフェオレを飲んでいるのは不思議だ。冷たくなっているけど。

「宇宙船ってなに?」

「UFOとかだよ。たまにさらわれて、人体実験されましたとかあるでしょ。わたしも、アレになるわけだよね、マコトのせいで」

「何をわけのわからないことを言っているんだ、かなりひどいだろ」と、マコト。

「ひどいって言うけど、盗聴器だってつけてるじゃない。あれ、エリカだと思っていたけど、キミだよね。仕掛けたの。天井に仕掛けてたシミって、シミじゃなかったし」

 押し入れに入って、バスタオルにくるまった中から出てきた球体を見せた。小さな丸。指でつぶそうと力を入れたけど、硬くてつぶれなかった。

「ああ、これ?」

 やっぱりお前か。仕込んだのエリカじゃなかったか。

「これ、治癒健康器具。ここから微量な熱が出て、直りが早くなる。ケガして家に運んだときあったでしょ、あの時つけた。細胞分裂が通常より活発になるんだ。血だらけで傷すごかったし、見てらんなかったから。傷も残りづらいんだよ。さすがにあの腕の傷はひどくて残っちゃったけど。早かったでしょ、治るのが」

 そうだった。確かに。

「どういうシステムなのよ。中身は」

「分からないよ」

 外からはつなぎ目らしいものもない。どうやって作ったのだろう。

「はあ?やっぱウソつきだ」

 こたつのテーブルをたたいた。

「じゃあ聞くけど、テレビってどうやって作っているか知ってる?映画はどうやって撮るの。体の仕組みは?手術の方法は?知らないだろ。それと一緒だよ」

「確かに」

 わたしは肉じゃがの作り方さえ知らない。だから、あの居酒屋に行くのだ。

「じゃあ、盗聴器は?」

「しらねえし」

 偉そうに、と思ったが言わなかった。

「盗聴器仕掛けられてるなんて、どうして思うわけ。それなら、カメラを仕掛けられてるって思う方が自然じゃないか?」

「そうか、カメラだったか」

 立ち上がって天井を見る。部屋には棚を置いていない。コートは押し入れの上をクローゼット代わりにしているし、高さがあるのは細長いミラーくらい。カラーブックスの上にテレビを置いているから、テレビとか、カラーブックスとか壁とか。裏や側面、下。色々見たけどそれらしいものはない。

 それでも、キッチンや浴室とか捜索場所を広げた。カメラを隠されてるかもしれない場所を、とにかく探しまくった。ドアノブのねじの部分もチェック。相手は恐ろしい科学を有しているかもしれない。考えられない所に違和感があるかもしれない。

「やっぱりカメラはない。盗聴器がしっくりくるんだよね」

 コンセントには延長コードがついている。これを買ったのはわたしだ。差込み口が6コあって、それぞれオンオフのスイッチもついている。これに細工をしているとか。

 専門分野でないエリカができるのか?

「なんか、こっちのことバレてた感じはあったんだ。それで盗聴を疑っているわけだ」

「それはないんだけど」と、答えた。

「なんだそれ」

 確かに。考えすぎかもしれない。

「安心したら、眠たくなってきた。最近、緊張して頭パンク状態で。わがままなのはわかっているけど、もう帰ってくれない?」

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