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托卵   作者: 桐谷 光
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マコトのくせに

 家に着いたら、マコトが玄関で待っていた。

 グレーのパーカーにジーンズ。らしい服装だった。宇宙人定番の銀色の体に張り付いた謎の服装はしていない。わたしたち一般人が着る普通の服。いたって普通。

 当たり前だけど、宇宙人ってそういうものだ。頭に角など生やしてはいけない。納得できない。

 顔を見る。めぐみ先輩と系統が同じ。ラブラブ馬面開発研究室宇宙人カレカノがそう言ったのだから、似ているマコトは宇宙人ってことになる。

 勘弁してほしい。久しぶりに仕事して、残業してツバサに待ち受けられて、で?

 マコトも?わたしのことを監視でもしているのか?地球上には女はいっぱいいるんだけど。

 今日は情報量多すぎ。くたくただ。死にそう。

「なんで、携帯に出ないんだよ」と、マコト。

「は?」

 そう返事しながらカバンをまさぐる。携帯を見ると、電話とラインに怒涛の着信。

 わたしはストーカー体質の男につけ狙われているのか。それも、かなり粘着質。納豆とか、オクラとか。いや、そんな物じゃ比較できない。もっとねばねばしている。

「俺達ってなに。付き合っているんだよな」

 これって何?ドラマで言うやつ。

 確かに言った。マコトのオヤジにも、さっきのツバサにも、エリカにも。もちろんマコト本人にも。何度も。言った。言いました。

「あがる?」

 マコトは頭を上下に振った。鍵穴に鍵を差し込み、まわす。カチャって音がして、ドアノブをまわした。中に招き入れる。

 このまま、このバカを放置しても何もならない。一回はちゃんと話し合わなければならない。週末でもいいような気がするけど、断ったところで、明日も来る。このテンションで。それもダルイ。

 さっき、ツバサやエリカとつながっていることを疑ったけど、こいつが本当にそんなことできるのか。もしできるのなら、かなりの演技派気質だ。

「夕食は」

「食べてきた」と、マコト。

 お腹が空いていたから、冷凍パスタを電子レンジに入れた。

 その間にお湯を沸かす。粉末カフェオレをカップと湯飲みに入れる。カップはこたつの上に置いて、マコトに座るように促した。

 電子レンジがチンって鳴る。半開きな紙の蓋を開けたまま、パスタをこたつの上に乗せる。湯飲みを持ってきて、カフェオレをすすった。

「おなかすいてるから、食べるよ」

「どうぞ」と、マコト。

 ボロネーゼをほうばる。トマトソースが飛び散って、こたつの天板に飛んだ。パスタの選択間違った。でも、これ食べたかった。

 マコトの顔を見たら食欲なんてなくなるかなって思っていた。けど、お腹はやっぱり空いていた。食べるたびに思うけど、冷凍食品の一食って少ない。足りないけど、我慢しよう。今から修羅場になるかもしれないし。

「用事って何」

 テレビをつけた。ボリュウムを上げる。

「なんで、連絡をくれないんだ」

 うざっ。なにそれ。わたしたち恋人同士か?あ、付き合ってるんだっけ。それも、わたしが告ったことになってた。

「久しぶりの仕事で、忙しかったんだ」

「俺たちの関係って、なに?」

 いやいやいや。少女漫画でしょ、この流れ。

「えっと、高校の同級生?ともだちかな」

「付き合ってるって言ったでしょ、オヤジに」

 大声で言われて、わたしは立ち上がった。

「ちょっと、待って」

 まずい。まだ盗聴器があるかも。エリカが聞いているかも。

 ひとさし指を口の前で立てて、シーって言った。

「小声でしゃべって」

「小声?」

「エリカが、ツバサと付き合えってしつこく言ってきて困っていたの。だから、断る理由にしてたんだよ。わたしにはマコトって言う彼氏がいますって」

「はあ?オヤジにまでウソをつく必要あったのか」

 マコトの声が大きく響いた。

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