鬼、じゃないかもしれない
昼休み、会社内にある通称みんなの公園に三人で行った。
世の中には工場立地法っていうものがある。大きな工場には緑地義務がある。うちの会社は工場も、事務系も開発系も営業もすべて同じ敷津内にあるので、必然的に木が生い茂っている。
先代の社長の奥さんが植物マニアだったらしく、一部の区画に藤棚や桜を植えられて、ベンチが置いてある場所がある。屋根がついてテーブルもあり、バーベキュースペースさえある。リフレッシュの場所に最適なんて聞いたことがあるが、今は廃墟。藤棚は枠だけで花はない。ただ、桜は毎年きれいに咲くので、春は昼休みの人気スポットになっている。
元経理部長に言わせれば、金食い虫。お金がかかるらしいが、うちはファミリー企業なので、あのエリアがなくなることはないと思う。
今は冬。寒い。当然こんなところに昼飯を食べにくる人はいない。
でも、それが好都合。誰にも聞かれたくない話をするのだから。
榊原が連れてきたのは馬づら女子。もちろん美人。よかった。鬼じゃなかったらどうしようと思った。
三人で屋根のあるテーブルに行った。彼女が榊原に弁当を渡す。ふーん。お弁当作って渡しているんだ、ラブラブじゃねえか。
わたしはというと、コンビニのサンドイッチ。ペットボトルのコーヒーはすでに冷めている。
「あんたたち、結婚するの?」
聞いてみた。いきなり本題に入れないから、肩慣らしってことか。
「はあ」
榊原がうなった。そりゃあ、そう来るだろう。なんでわたしにこんなこと聞かれなきゃいけないんだって思うよ、ふつう。
「突然だけど、子供はどうするの」
わたしの言葉に、彼女の顔色が変わった。
「え」って彼女。
わたしだって、こんなこと聞きたくない。下手すれば部長みたいにコンプライアンス課に通報されて飛ばされるかもしれない。これってパワハラ?いや、わたしの方が年下っぽいからただの嫌がらせの可能性の方が強い。
「わたし、健全な子宮を持っている人を探しているんだよ。友達に頼まれてて。でも、上手くいかなくて、教えてほしいっていうか。安請け合いしたの後悔していて。本人に聞ければいいんだけど、友達を不安にさせたくないし。やっぱこんなデリケートなことを、聞きたくないのよ。情報教えてくれないかな」
「えええええ」
彼女が叫んだ。
「わたしも探してるんです」と、彼女。
よっしゃー!ビンゴ。
「勝手にしゃべるな」
榊原が怒鳴った。
誰もいないここでよかった。叫ばれても、セーフ。
「あなたたちも、子宮借りるんだよね」
「そうなんです。子どもほしいんです。探しているんですけど見つからないっていうか。焦る必要はないって、親は言ってくれるんですけど」と、彼女。
親?そうか。親はいるよな。
「探すの大変だよね」と、わたし。
「あなた、地球人に見えるけど、私たちと一緒なんですか」と、彼女。
「ち、地球人?」
「だって、子宮を探しているんですよね。あなたも子宮ないんでしょ。いろんなタイプが地球上にいるじゃないですか。でも、私たちとは系統が違うように見えるし。子宮を求めて地球に飛来したんでしょ?私も全部把握しきれていませんけど、私たちと基本同じなんですよね」




