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托卵   作者: 伊藤禎二
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ツバサのこと、どう思う

 和室は八畳ほどの大きさだった。床の間があって、でも、掛け軸らしきものはぶら下がっていなかった。そのスペースにはいくつかの段ボールがあって、その上に洗いたてなのか衣替えの途中なのか、畳まれた衣類がのっている。

 以前エリカの部屋に行ったときあったチェストが、この部屋に移動していた。木でできている、少し大きめ。オレンジと黄色、ピンク。小さな引き出しが大きな引き出しと混在しながらついている、かわいい形のものだ。

 自分の部屋を模様替えでもしたのだろうか。こんな物置化した和室に移動なんて。かわりにどんなチェストを買ったんだろう。いや、壁紙をはりかえて、カーテンをかえたら、チェストが合わなくなった可能性だってある。部屋が見たい。

 急に二階に行くとか。行ったもん勝ちか。エリカは一度見せないって言ったら絶対に見せない。友情にヒビが入る可能性だってある。そんな危険なことする意味はないか。

 中央にはニトリで売っているような折りたたみのテーブルを挟んで、座椅子が二つ向き合っている。机の上には郵便物やら本やら、いろんなものがのっている。この部屋、誰かが使っているな、と思った。奥には通販で買っただろうダイエット器具が固めてある。一、二、三。実家にあったものある。

「これ、誰が買ったの」

 エアロバイクを指さしたら、父さんて声がかえってきた。意外。おばさんだと思っていた。

「で、なに」

 エリカがビールをテーブルに置いた。座椅子には座らず、たてひざ。

 わたしは座椅子に座った。低反発。いい感じ。

「ツバサのこと、どう思う」

 わたしの問いに、エリカの表情が変わった。びっくりしている。

「いまさら、何言ってるの」

「いや。ちゃんとこのこと話したことなかったし」

 面と向かって聞いたのはあまりない。お互い好きだから、この話題には触れにくい。

 わたしたちは普通の女友達じゃないと思う。友達だからって、自分の気持ちを押し殺して好きな人を譲ったりとか、陰でだまして同じ男を狙ったりとかしていない。二人とも好きだって公言しているし、争い合ってゲットしようとしている。どちらが彼女になっても恨みっこなしだ。だから、堂々としてられるし、辛くなることもない。フェアな関係。

 もちろん、ツバサがほかの女を選ぶ可能性だってある。その時はその女を闇に葬ろうって話をしたこともある。もちろん、冗談。でも、半分本気。

「好きに決まっているじゃない」

「どこが好き」

 しばらく沈黙があってから「顔」ってエリカは答えた。

 顔か。確かにわたしもそれ。でも、それって本人が傷つくパターンじゃない。頭もいいしスタイルもいいし、性格もやさしい。誇れるところがいっぱいあるのに結局、顔か。

「本当に彼を狙っているの」

「あたりまえじゃない」

 エリカの答えにブレはない。

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