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托卵   作者: 桐谷 光
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シミ

 シーリングライト。スイッチをつけた。明るくなった。寝そべって、こたつに入った。あたたかい。天井を見る。こんなところに、あったっけ、シミ。

 鳥肌がたった。

 わたしが病院に行っている間に、盗聴器をしかけられていたら?

 妄想が膨らんでいく。いや、そんなことするか。でも。そうかもしれない。妄想だと一蹴できるのか?

 部屋を見渡した。いつもと変わらない。ほんとうか?目を凝らした。わからない。

 どこかに違和感ないか。

 言葉に気を付けよう。聞かれているかもしれない。

 テレビをつけた。お笑い番組。大爆笑が起こっている。音量を上げる。

 音を立てないように、ザルの隙間、洗濯機の下、コンセントの周り、見覚えのないものがないか探しまくった。見つからない。

 疲れたしお腹すいた。ご飯食べてない。そういえば吐いた。お腹空っぽ。悲しくなった。

 テレビ画面は相変わらず大爆笑。腹が立った。

 手前にあるクッションを掴んでテレビにおもいっきりぶつけた。テレビが後ろに倒れた。

 やばい。何しているんだろう。

 慌ててテレビを元に戻した。画面は真っ黒。壊れた。

 サイアク。ムカつく。泣きたい。

 押し入れに古いテレビがあったはず。サブスクは見れないやつだけど、ないよりはまし。

 押入れを開けた。段ボールをいくつか出して奥を探す。ないないない。捨てたんだっけ、そんなわけない。探して探して、ってそんなに広い押し入れじゃないから考えた。考えて、思い出した。母親に送ったんだった。

「ないんだ」

 独り言が出て、両手で口を押えた。周りを見渡した。

 腹が立って、引っ張り出した段ボールをこぶしで叩いた。立ち上がって、足で玄関の方に蹴り飛ばす。手前にあったクッション、箱、ぬいぐるみ、衣類。手あたり次第、投げ飛ばした。箱からガラスの割れる音がする。部屋の中がモノで散乱した。大声で泣き叫びたかったが、あるかもわからない盗聴器の存在が怖くて、声さえ出ない。部屋はゴミ屋敷状態。頭を手でかき回し、ベッドの上に寝そべった。涙が流れる。止まらない。

 背中に違和感があって、イタイ。寝そべったまま手で触る。見ると、最近読んだ本だった。寝ころんだままベッドにあるものは蹴ったり手で滑らして床に落とした。上を見上げる。シミ。

 寝たまま上を見上げてじっとしていた。

 考えがまとまらない。

 一時間ほど経って、立ち上がった。散乱したものを拾う。割れたものや壊れたものを分別してゴミ箱へ。変形した段ボールをあけて、壊れたものがないか確認。問題ないものを押し入れにしまっていく。散乱した本の中に、高校のアルバムがあった。ベッドに座って、ページを開いた。

 一組。左側に集合写真。右にはクラスメート全員一人一人の写真。写真の下に名前。エリカがいる。きれいだ。きれいなんだけど、馬っぽい。

 次は二組。ページをめくる。そして、三組。

 八組にはマコトがいた。わたしもいる。若い。エリカが馬なら、マコトは鳥だ。フクロウ。目がまん丸で、肌は鳥っぽくて、ブサイク。ひどいかな。でも、イケメン枠ではない。がり勉で、内向的。今と、かわんない。

 サクラ、ミソノ、ばばちゃん。なつかしい。みんな、県外へといって今は連絡もしていない。

 すべてのクラスを見ていった。クラスには大体、エリカの系統の顔が一人はいる。いないクラスもいるけど。きれいで、面長。目が大きく、鼻筋が通っていて、鬼というより馬だ。

 もしかして、鬼って結構な数、人間世界に潜んでいるのか?

 文化祭と体育祭。修学旅行に部活。囲碁クラブ。マコトとエリカ。並んで写真におさまっている。エリカが囲碁?ガラじゃない。同じ部活だったのか。はじめて知った。

 アルバムを閉じた。

 視線が上に行く。鳥肌が立った。

 ベッドの上に上がって、シミをさわった。ポロって取れた。手に乗せる。一センチもないサイズ。球体で暖かかった。配線はついていない。シミではなかった。

 タオルでグルグル巻きにして、段ボールの中に入れた。押入れの奥に沈める。倒れていたテレビを立てた。裏を見ると配線が外れている。差し込んだら、テレビがついた。

 漫才番組はとっくに終わっていた。 

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