なんとかなりましたか?
マコトは車で送ってくれた。車の中では誰も口を開かなかった。
エリカは後ろの席に座っていた。わたしは念願の助手席をゲットしたけど、明るい気持ちにはなれなかった。脳裏には店主のうれしそうな顔。きっとわたしは初めての彼女に違いない。公認の仲になってしまった。今さら、あれ冗談ですって言えないし、あのテンションのオヤジを騙したなんてことになったら、刺されても仕方ないって感じだった。
あれから店内はひどかった。食欲ないって言っているのに刺身や煮つけ、いつも注文していた食べ物が大量に目の前に並んだ。そのときのエリカの顏。落胆した表情しか窺えなかった。顔色が緑にはならなかったのはエライと思う。
今の車中の雰囲気も悪い。空気が重い、重すぎる。マコトはこの空気感、気づいているのだろうか。
家についた。エリカは路駐していた車に乗って帰っていった。安心したのか、前よりエリカのことが平気になっていた。帰る姿を見届けてアパートの階段を上がって行く。マコトが後ろからついてきた。不審に思ったが、そのまま玄関まで行って、鍵をあける。さよならを言おうとして、手を上げた。足。マコトの足が片方玄関に入っている。わたしを無視してマコトが部屋に入ろうとしている。
「何やっているんだよ」
口調が荒くなった。
「え、だって二人きりになりたいって言ったでしょ。出て行かないでってアピールしてたよね」と、マコト。
アピールって何。
「そんなこと言ってないし」
「言ったでしょ、さっき。ご飯行く前。3人でここにいたとき」
そうだった。思い出した。マジでめんどくせー。
「なんかお腹痛いし。また今度ね」
足を手で強引に外に押し戻した。そのあとは躊躇なくドアを閉めた。秒で鍵をかけた。




