表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
托卵   作者: 桐谷 光
32/56

空気が読めない男

「お茶でも入れるから、テキトーに座って」

 マコトに言った。流しの前に立った。ケトルに水を入れる。でも、急須におちゃっぱを入れる気分じゃない。コーヒーか。スティックコーヒーがある。

 観念したのか、マコトは玄関から廊下へと歩いてきた。ヨシヨシ。そのまま部屋へ行け。

 マコトはわたしの後ろで止まった。不安そうな顏。睨みつけて、奥に行けと顎で指示。

 カップも湯飲みも一個しかない。それぞれに入れて、こたつの天板の上に置いた。

 お客だけに渡す、って感じでもいいし。招かざるエリカの分はないって解釈でもいい。でも、誰も飲み物に手を出さない。

 テレビは時代劇が流れていた。興味ない。だれもチャンネルを変えようとしない。

 マコトがこたつの前で立ったまま挙動不審な感じでわたしを窺う。

「なんか用?」

 エリカを見た。

 ツバサとくっついてほしいもんな、アンタ。説得に来たんだろ、どうせ。子宮借りたいって言ってたもんな。

「ねえ、飲み会しようよ、三人で」

 エリカが言う。

「もう、わたしたちの関係は終わったんだよ。ツバサのことも興味ないし。どうぞ、わたしをはぶってください」

「そんなことないよ。ツバサはミサキが好きなんだから」と、エリカ。

 どの口が言ってる。思ったが顔に出ないように気をつけた。

 わたしは女優だ。茶番劇を乗り越える演技力をください。

「俺、帰る」

 耐えかねたマコトが言葉を発した。

「せっかくコーヒー淹れたんだから飲んでよ」

 わたしの威嚇的な口調に戸惑っている。キョドってるんじゃねえよ、マコト。化け物を残して帰るなんてありえないだろう。てめえ、男だろ。わたしを守れよ。

 マコトは湯飲みに入った熱いコーヒーを一気に飲みほした。バカか。火傷したんじゃないか?

「飲んだから、帰る」

 マコトは湯飲みを流しに持っていった。

 やめて、帰らないで。

「待ってよ」

 必死に訴えた。

「女同士の楽しい話があるだろ。俺、邪魔だろうし」

 マコトは玄関まで行くと靴を履いた。

「だから、待って」

 わたしはマコトの腕を掴んだ。力を入れた。

 顔を見た。後ろ姿からしか見えないエリカにはわたしの表情は見えない。顔で訴えかけた。助けて。エリカに殺される。わたしの気持ちに気づいて。

「なんで」

 マコトの一言。

 このクソ男。バカの最上級。バカ、バカル、バカリスト。しらんけど。

 こいつは無理だ。わたしの気持ちなんて一生分からない。

 どうやって、自分の身を守ったらいい?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ