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托卵   作者: 桐谷 光
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さぐってやる

 朝、幼稚園のバスが居酒屋の前の道を通る。居酒屋挟んで斜めにある喫茶店の駐車場は、通園バスの停留場として使われている。出勤中に子供と保護者が待っているのをよく見かける。

 喫茶店に入った。喫茶店といっても、ファミリーレストランと思えるほどの広さ。通りに面した窓のある席に座って、モーニングを頼んだ。顔を窓につけるくらいの距離で外を眺める。エリカを見るためだ。

 バスに乗る当番があって、ローテンションを組まれていると聞いたことがある。バスのルートは3種類。どのコースに乗るかまでは分からないし、実際どのルートがあるかも知らない。エリカが今日はバスに乗る順番のような気がする。出勤中の市営バスで、すれ違う幼稚園バスに乗っていたエリカを最近見ていないから、もうそろそろかも、と思っただけ。バス当番に当たってはいたが他のコースだった、という可能性はあるけど。

 この喫茶店は6時からオープン。年寄りの憩いの場所になっていると、聞いたことがある。モーニングが安くておいしいと、ここあたりでは有名らしいのだ。

 店内には老人、老人、老人。テーブルの半分は埋まっている。8時前だ。この人数。メニューにはコーヒー一杯の値段でコーヒーのほかにトースト、ゆで卵、サラダがついてくる。注文可能なのは10時まで。これからも人数が増えそうな気配だ。

 昨日のエリカのことを考えた。結論は出なかった。あの二人は何者なんだ。兄弟、親戚、恋人同士。そして、鬼。なにかを企んでいるのは間違いない。わたしに固執しているのはなぜか。もう、調べるしかない。

 調べるって何を?

 昨日エリカが帰ってから、ずっと考えたが分からなかった。

 ニ度と会いたくないし、話したくもない。

 安全な場所で見るだけ。幼稚園バスの当番しか思いつかなかった。

 幼稚園の送迎バス。当番のエリカを見て何が分かるか分からない。多分分からないだろう。でも、いてもたってもいられなくなって、この喫茶店に来た。それだけ。

 ただ、座って外を眺めた。もうそろそろのはず。

 あ、きたきた。

 反対側から送迎バスがこっちに向かっているのが見える。喫茶店の横を通過して、となりの駐車場に止まる。幼児教諭が下りてくるはず。喫茶店の位置が際過ぎて、見えない。かろうじて見えるのは、幼稚園バスが駐車場側にめり込んで止まった事実だけ。

 ウソでしょ。

 子供たちがぞろぞろとバスに乗り込んでいる感じはなんとなくわかる。バスが少し揺れているように見えるから。それだけ。

 バスを見るなら反対車線側の、例えば居酒屋の電柱の横とかに隠れて見るべきだった。エリカどころか、バスしか見えない。

 バスは走り去っていた。今回の見張りは失敗。また、何ができるか考えるしかない。

 また、エリカのことを考えていた。この人は友達じゃないんだって、思った。信用できなかった。あんなに好きだったのに、嫌いになるのは一瞬だった。嫌悪感がすごくて、逆に自分が嫌になった。怒りがこみあげてきて、化けの皮を剝がしたいと思う。そんな自分が醜いとも感じる。

 ストーカーの気持ちってこんな感じなのかな。見張るなんて、普通じゃない。でも、真相を知りたい。このままでは、先に進めない。

 ウエイトレスがモーニングを持ってきた。ぶ厚いトーストにジャムを付けて口に入れる。むせた。コーヒーを飲んだ。熱くてますますむせた。目が涙目になった。

 小さなサラダのレタスを食べ終わって出ようと立ち上がったとき、エリカとツバサが店内に入ってきたのが見えた。秒速で座った。メニューを広げて、顔を隠した。

 エリカ、今日は休んだんだ。バスに乗っていなかったのか。

 二人は年寄りのごった返した店内を歩き回っていた。わたしの座ったテーブルの横を通った。空いた席に座った。それは、わたしのすわっている斜め前だ。

 まじか。ヤバイ。

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