表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
托卵   作者: 桐谷 光
26/56

エリカも鬼

 甘い声で耳元にささやいてくる。

 いやいやいや。今のなしにならないよ。十分怖いよ。

 手を伸ばして、馴れ馴れしく手を触ってくる。怖い。手をはねのけたけど、微笑みながら近寄ってくる。もう、ホラーだ。いつもなら「ごめーん」ってわたしが抱きついて終わりだった。でも、ムリだ。

「まだ疑ってるの、イヤだ」

 エリカが抱きついてきた。怖くて体が動かない。でも、体がエリカを全身で警戒している。

「怒っているんでしょ。ツバサがあのとき助けなかったし、私も出て行ってしまったから。ちがうのよ。びっくりしたの。あのときはああするほかなかった。ごめん。私が悪かった。許して。一人にして悪かった」

 エリカは抱きしめた手をゆっくり離した。確かめるようにわたしを眺める。張り付いた視線。エリカの肩とわたしの二の腕が当たった。

 固い突起があった。今まで気づかなかった。こぶよりも小さくて硬くて尖っていて。もしかしてツバサと同類。頭に角があるとか。

 エリカの長い髪を見た。髪の毛はペッちゃんこ。角が生えていたら分かるはずだ。もしかして鬼って、頭以外に角を持っているパターンもあるのか。

 じゃあ、二人は鬼の兄弟だったとか。顔も少し似ているし雰囲気もまあまあ似てる。それなら、ツバサの部屋から出てきてもおかしくない。血がつながっているのに隠す意味は何?

 テレビの音だけが聞こえる。時折コーヒーを飲むエリカの音。

「体調悪いから、マジで帰ってくれないかな」

ほんとうに調子が悪かった。エリカの顏ヘンゲを見て、体調が悪くならない人間なんているわけない。自分はきっとひどい顔色をしていたと思う。全身鳥肌だし。

 エリカは素直にわたしの言うことを聞いて、出ていった。

 わたしのツバサに対する疑いがはれたと思ってはいないだろうけど、このままいてもしょうがないと思ったのだろう。こっちは、もっとエリカに対しても疑念を抱く結果になったけど。自分の顔色がどんなだったか、自覚はないのか。化粧が剥がれたときのわたしと一緒だ。

 はあ、疲れた。

 もらったシュークリームを返そうとしたが、エリカは受取らなかった。こたつにのっている。視界に入って邪魔だった。

 ゴミ箱に投げ入れた。一発で入った。ナイス。立ち上がって、袋菓子もゴミ箱に入れた。鬼の手にふれたものを食べる気にはなれない。

 もう、ムリなのだ。一生仲良くなれない。

 彼女がうちに来てご機嫌をとる理由はなんだろうか。

 わかったことがある。それは、二人が人間じゃないってこと。

 やっぱり鬼だ。

 顔が赤や青、緑色なんて鬼以外になにがある。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ