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托卵   作者: 桐谷 光
25/56

エリカと対峙

「なにそれ」

 エリカは微妙な表情。

「裏切者。どっちが付き合っても恨みっこなしって言ってたのに。報告し合うって」

「まって、待って。なにそれ」と、エリカ。

「付き合ってるって言ってくれたらよかったのに」

「だから。わかんないって」

 キレかけのえりかの口調。キレたいのはこっちの方だって。

「わたし、ツバサとエリカが付き合っても友達やめないよ。そりゃあ、正直ショックかもしれないけど、二人を祝福できる。なんで言ってくれないの。隠すの。わたしたちってそういう関係だったっけ。なんで、ツバサと付き合っているのに頑張れとか、抱きつけとかたきつけること言うわけ。わたしがコクって粉砕、空気中にホコリとして舞っている姿を見るのが楽しみだったとか。いいシュミしてるよね、知らなかった」

 口から雪崩のように言葉が出てきた。

 エリカはびっくりしている。いやいや、わたしの方がびっくりしたよ。いろいろと。

「言っている意味、分かんないんだけど」

 しらを切るつもりなんだ。

「アンタたち付き合ってるでしょ、こっそりと」

「付き合っていないし」

「いや、付き合っているでしょ。知っているんだから」

「付き合っていないよ。勘違いしてたんだ。いやだな」

 ウソつき。

「わたし、見たんだから。ツバサの部屋からエリカが出てきたところ。入ったことあるよね、ツバサのアパート」

 言っちゃった。見てないのに。ウソなのに。だって、出前バレたくないから誰にも言わないでって店長が言ってたから。出前のとき受け取ったのがエリカだって言うから。秘密だって言うから。

「見た?」

 エリカの顔色が変わった。顔が青くなってきた。青というか白。血の気が引いて、というか、なんか違う。普通と。よく分からないけど。青色から白色。

「部屋から出てきたところを」

 強い口調でエリカが言った。

 顔色が白から、緑に変化していく。緑色。それから、赤くなった。赤色だ。唐辛子の赤。日の丸の赤。肌の血色がいい、赤っぽいっていうのとレベルが違う。

 目が痛い。しばしばする。空気中にカプサイシンが浮遊しているとか。エリカの目が真っ赤。赤色だ。黒目が見えない。ホラーだ。

「付き合っているよね」

 なんか、別の意味で心臓がバクバクなんですけど。アナタ、人間じゃないよね。

 エリカめちゃくちゃ怒っているみたい。家から出てきたところを見られたのが、そんなに嫌だったってわけ。なんで、アンタが二人の姿を見たかってことになるよね。わたしこのままじゃストーカーだよ。ツバサの部屋を監視している女。

 しばらく沈黙が続いた。

 今度は空気が電気を帯びてきた。カプサイシンの次は稲妻か。デンキナマズか、エリカは。

「で、ツバサは何号室に住んでいるわけ」

 し、知らない。そもそも、あのマンション何階建てだっけ。エレベーターはあった。

 エリカの顔色が赤から肌色に戻っていく。目から、黒目が復活した。

「秘密。エリカに答える義務はない」

 そっぽを向いた。絶対、知らないのばれた。

「もう、カマかけないでよ」

 エリカが微笑む。

「行ったことないって。付き合っていないから」

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