エリカと対峙
「なにそれ」
エリカは微妙な表情。
「裏切者。どっちが付き合っても恨みっこなしって言ってたのに。報告し合うって」
「まって、待って。なにそれ」と、エリカ。
「付き合ってるって言ってくれたらよかったのに」
「だから。わかんないって」
キレかけのえりかの口調。キレたいのはこっちの方だって。
「わたし、ツバサとエリカが付き合っても友達やめないよ。そりゃあ、正直ショックかもしれないけど、二人を祝福できる。なんで言ってくれないの。隠すの。わたしたちってそういう関係だったっけ。なんで、ツバサと付き合っているのに頑張れとか、抱きつけとかたきつけること言うわけ。わたしがコクって粉砕、空気中にホコリとして舞っている姿を見るのが楽しみだったとか。いいシュミしてるよね、知らなかった」
口から雪崩のように言葉が出てきた。
エリカはびっくりしている。いやいや、わたしの方がびっくりしたよ。いろいろと。
「言っている意味、分かんないんだけど」
しらを切るつもりなんだ。
「アンタたち付き合ってるでしょ、こっそりと」
「付き合っていないし」
「いや、付き合っているでしょ。知っているんだから」
「付き合っていないよ。勘違いしてたんだ。いやだな」
ウソつき。
「わたし、見たんだから。ツバサの部屋からエリカが出てきたところ。入ったことあるよね、ツバサのアパート」
言っちゃった。見てないのに。ウソなのに。だって、出前バレたくないから誰にも言わないでって店長が言ってたから。出前のとき受け取ったのがエリカだって言うから。秘密だって言うから。
「見た?」
エリカの顔色が変わった。顔が青くなってきた。青というか白。血の気が引いて、というか、なんか違う。普通と。よく分からないけど。青色から白色。
「部屋から出てきたところを」
強い口調でエリカが言った。
顔色が白から、緑に変化していく。緑色。それから、赤くなった。赤色だ。唐辛子の赤。日の丸の赤。肌の血色がいい、赤っぽいっていうのとレベルが違う。
目が痛い。しばしばする。空気中にカプサイシンが浮遊しているとか。エリカの目が真っ赤。赤色だ。黒目が見えない。ホラーだ。
「付き合っているよね」
なんか、別の意味で心臓がバクバクなんですけど。アナタ、人間じゃないよね。
エリカめちゃくちゃ怒っているみたい。家から出てきたところを見られたのが、そんなに嫌だったってわけ。なんで、アンタが二人の姿を見たかってことになるよね。わたしこのままじゃストーカーだよ。ツバサの部屋を監視している女。
しばらく沈黙が続いた。
今度は空気が電気を帯びてきた。カプサイシンの次は稲妻か。デンキナマズか、エリカは。
「で、ツバサは何号室に住んでいるわけ」
し、知らない。そもそも、あのマンション何階建てだっけ。エレベーターはあった。
エリカの顔色が赤から肌色に戻っていく。目から、黒目が復活した。
「秘密。エリカに答える義務はない」
そっぽを向いた。絶対、知らないのばれた。
「もう、カマかけないでよ」
エリカが微笑む。
「行ったことないって。付き合っていないから」




