わたしはバカです
「で?今すぐ帰るんだろう、帰れ。速攻で帰れ」
「ついでに病院連れて行ってよ。車ないし」
包帯を巻いた手を見る。
最近痛くない。なんでだろう。なにかが起こっているのか。
「この間、医師になんて言われたか覚えてないのか。禁酒。キ、ン、シュ。酒飲むなって言われたんだよ。お前な、酒飲んで病院行くのも常識ないけど、約束破った状態で行けるか、バカ」
「確かに。でも、あの医師、たぶん外科じゃないよね。禁酒が間違っている可能性あるんじゃないかな」
って、言ってみた。そんなわけないけど。
「お前はバカだ。バカ、バカバカ。救えないくらいバカ」
横でマコトの大声。耳をふさいだ。マコトはビールを流しに流した。
「医師じゃない、お前が間違ってるんだ。飲んだら駄目に決まっているだろ」
「バカバカ言うな」
「バカにバカって言って何が悪い」
「うるさい」
「家に帰れ。送ってやる」
「イヤだ」
「早く帰れ」
「うるさい、だまれ」
ちょっと、お邪魔しただけじゃない。なんで、バカって言われなきゃいけないの。わたしから家に入れてくれって頼んだわけじゃない。半強制だった。あのとき上に上がらず逃げていたら、わたしはカッター自殺未遂のヤバイ女だ。二度と店には来れない。
涙が出てきた。
なにか悪いことしてバチがあったったんだろうか。
好きな人は振り向いてくれなくて、でも頑張ってアピールしていたら鬼だった。親友は鬼と付き合っていて、なのに恋仲の鬼をやたら勧めてくる。2人でわたしをバカにして、笑って酒の肴にしようとしてたのか?で、結局わたしは血だらけ、オヤジの家でお酒を飲んでる。もはや、今の状態は理解不能。親友だと思っていたエリカが、わたしを騙していた。鬼ってこともショックだけど、ほんとうはエリカがウソをついていたことの方がショックだと思う。パニクっていて、自分の気持ちは分からないけど。でも、心は苦しい。いたい。いま、お酒で自分をごまかしている最中だ。
「なんだ、なんだよ」
マコトは慌てた。
むせび泣いていた。涙が、ほほをつたってテーブルに落ちた。
頭の中が整理できない。何が起こっているのか、だれか説明して。
「分かったよ、帰るよ。お邪魔しました」
怒鳴った。マコトに八つ当たりしているのはわかる。
「待てよ、ウソウソ。さっきのウソ。病院行こうか」
やさしく肘を触られた。思いっ切り手をはねのけた。
「行くわけないし。お邪魔しました」
椅子から立ち上がった。




