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托卵   作者: 桐谷 光
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肉じゃがサイコー

「お前、どうして俺の家にいるんだよ」

 声のする方へと振り向く。キッチンに続くドアを開けて、マコトが入ってきた。リュックを背負っている。仕事が終わったのだろう。スーツを脱いでソファーの上にかけている。

 わたしはテーブルでビールを飲みながら、肉じゃがを食べていた。

 マコトはわたしの横に来た。テーブルは二人用。椅子は二脚。2人暮らしなんだと思った。母親と死別したのか、離婚したのかは知らない。本人に聞いたこともない。でも、高校時代から片親だったのは知っていた。

 テーブルは小さい。父親と一緒に食事をしているのだろうか。イメージがわかない。

「さあ、なんでだろう。流れかな」

 肉じゃがを食べながら、答えた。

「はあ?」と、マコト。

 マコトの父親はマンションのオーナーだ。この部屋はどこの部屋より広いと思う。マンションの前から向かって左はファミリー向け、右はワンルーム。

 初めてこのマンションに入ってテンションが上がっていた。広い。うちとは違う。

 あのあと、すぐに店主が上に上がってきた。

 目の前で冷蔵庫に入っていた肉じゃがをレンジで温めてくれた。出来立てのかぼちゃコロッケを持って机の上に。そのあと、ビールをグラスに注いでくれた。

「体調悪そうだね、大丈夫?ミサキちゃんのことだから飲んだら治るでしょ」

 店主はそう言いながら、頭に縛って巻いていたタオルを取った。丸坊主。汗びっしょりの顔を頭と一緒にそのタオルで拭って、手に取ると洗面所に行った。新しいタオルを取って、また頭に巻き付けている。

「厨房は暑いんだよ。汗がとまらないねえ」

 店主が言う。

 坊主頭?ハゲをすべてそって、丸坊主にしたのか。

 世の中のすべての人間が鬼に思えたけど、よくよく考えたらそんなはずはない。店主は角がない。部長だって、髪が薄くて、ない髪を反対側に引っ張って髪型を作っている。あの韓国海苔のような状態で、角を隠すなんて無理だ。絶対バレる。

 バカバカしすぎる。さっきの自分。あほすぎる。

「ゆっくり食べて行って」 

 店主はそう言って、すぐにお店に戻った。 

 急に食欲も出てきて、あとは気が大きくなってきた。飲みすぎか。

「お前、一人で飲んでんのか」

 マコトが言う。

「仕方ないじゃない。おじさんが食べて行けって、しつこいん。でも、仕込みで忙しいって言ってるし」

「よく他人の家でビール一人で飲めるな」

「他人の家じゃない。元クラスメートの家」

「お前、もしかしてバカ」

 自分でもそう思う。

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