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托卵   作者: 桐谷 光
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世界征服企んでいますか

 まじでか。

 処分したのはエリカ。もう、ツバサのこと知らないとかありえない。アイツらグルだ。

 いや。アイツらだけがグルなのか。

「しみじみ思うけど、あの二人お似合いだよね。美男美女でスレンダー。顔も小さくてきれいな顔だち。雰囲気も似てるし」

 店主が言った。

 エリカとツバサは確かに似てる。同じ馬面だし。

 エリカとは同じ高校に通っていた。学生時代に同じクラスにはなったことがなくて、存在は知っていたけど話したことはなかった。だから、大学に入って初めて二人を見たときは、背筋や顔の形が少し似ているし、もしかしたら遠い親せきかなくらいには思っていた。

 エリカとはすぐに仲良くなった。ツバサは仲のいい同じ学科の男子とつるんでいたから、話をしたこともなかったし、近寄りもしなかった。っていうか、キレイすぎて近寄りがたかった。

 ほとんどが女子というクラスの中で、たった二人だった男子の一人が大学をやめ、ツバサが一人きりになった二年の冬、エリカが声をかけるまでは。

 それからはいつも三人だった。ツバサとエリカが遠い親戚でも何でもないことを、二人から聞いたのもこの時。

「二人は付き合っちゃえばいいのに」

「そうですね」

 相槌を打った。

「付き合ってるのかもね」

「そうですね」とわたし。

 あるある、その可能性。わたしは二人にもてあそばれたのだ。バカな女として、鬼たちに。サイアク。

「このマンション内限定で出前してるんだよね。前、ツバサ君にチャーハン届けたとき、エリカちゃんがドアを開けて受け取ってくれたんだよ。あ、これ内緒ね。出前はうちのマンション限定だから。ほかのお客にもってこいって言われたら困るから」

「はい」

 笑うしかない。そんなこと、どうでもいい。

 クソだ。

 なにが、ツバサの家に行ったことがない、だ。お前ら、付き合っているじゃないか。

 何もかもがウソだった。お互いのどちらが付き合っても祝福するって約束したのに。

「大丈夫、手痛い?」

「少し」

 そう言って、顔をあげた。

 店主がうっすらと笑っているような気がした。一瞬で鳥肌が立った。

 まてまてまて。ちゃんと考えて。

 ケガのこと、考えて。

 おかしい、おかしい。

 なんで、カッターで手を切ったのが正解だと思うわけ?普通におかしいんじゃない。

 ふつうは落ちていたカッターの現物を確認するよね。なんで、エリカのこと信じるの。実はあんたら仲間?とか。

 オヤジ、もしかして鬼?

 この人も鬼かも。だっておかしい。

 おかしいだろ。

 実は、世界征服とか狙っている鬼軍団で、秘密を知ったわたしは消される、とか。

 日本はすでに侵食されて、鬼だらけとか。あの女の子っぽく叫んだあの部長も、実は悪の魔の手にかかっているとか。頭に角が生えてるかも。

 わたしだけが、人間だとか。

 思わず、店主から後ずさりした。この人はもう鬼にしか見えない。わたしをこれから殺すかもしれない。

「どうしたの、ミサキちゃん」

「えっと」

 怖くなった。マジで。わたし殺されるの?

「顔、真っ青だけど」

「いやいやいや。大丈夫です」

「大丈夫なの」

「えっと、えっと。そうか、お腹すいているのかも。家に帰ってご飯食べます」

「じゃあ、うちで食べてきなよ。今からここしめて、仕込みするんだけど。我が家に残り物けっこう残ってて。食べてよ。ここあたりは掃除もするし、ぶっちゃけ邪魔なんだよね。上に上がってくくれる?」

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