第32幕 凶器となる文字
朝起きて、学の事件がニュースになっていた。
ずっと目を背けてきたが、武も調べてくれてるし、このままじゃダメだと思いテレビを付けたのだ。
あまりの残虐性から、今はかなり細かいところまで報道されており、知らなかったことを知ることができた。
最初の事件で綾葉は白く塗られた指輪、里部には赤く塗られた指輪がされていた。
まるで結婚指輪の交換をしたみたいに……。
何故ここまで忠実に結婚式を再現しているんだ?
犯人の目的がわからない。
木原の件は、やはりあの足は切断された木原の足だった。
足があった場所には靴が置いてあり、足があるように見立てられていたらしい。
バスドラムに見立てるためにそこまでやる必要があるのか……?
学の事件でもう一点わかったことは、警棒を持たされていたこと。
金庫の番人だからか、守るための武器のつもりなのだろう。
あの物語の意味やそれを再現した事件現場。
何か意味があるのか、それとも単純に狂った犯人の戯れなのか……。
事件のことを知れば知るほど、考えれば考えるだけわけがわからなくなっていく。
武と約束したキャバクラへ行って何かわかればいいんだが……。
会社に行くといつもより俺を恐れるような目で見られる。
学の事件を見たんだろう。
俺と学との関係は誰も知らない。
だが、前の事件と共通してることや俺の地元で同い年が殺されてることから、余計に怪しまれているんだろう。
蝿川さんはいつも通りだが……。
現状仕事で上手くいっていないが、それ以上に木原のことが憎かったのだろう。
営業に出るが、以前よりももっと酷い。
某化粧品会社なんてニュースで出てることもあり、誰も気味悪がって話を聞いてくれない。
他の化粧品会社にも風評被害があるらしい。
憶測で別の会社名を挙げられていることがある。
勝手な勘違いでネットに書き込まれた会社が気の毒だ。
名誉毀損で訴えてもいいレベルだ。
全然関係ない人を事件の関係者と拡散して、問題になったことを皆忘れてるんじゃないだろうか?
安易な書き込みで人の人生を狂わすことができるのだ。
人間が口に出す言葉だけでなく、文字の力というのも恐ろしいものだ。
ここまで来るといつ倒産してもおかしくない。
母さんに謝って転職するか……。
次は化粧品会社以外で何か探してみよう。
昼はいつも通り、うどん屋でかけの小を食べてると武からメッセージがあった。
武
『おつかれ!』
『22日の夜空いてるか?』
『この前話したキャバクラ行ってみようぜ』
『おつかれ』
『空いてるよ』
『何時待ち合わせする?』
武
『新宿駅東口で20時待ち合わせでいいか?』
『いいよ』
武
『おけ!』
俺はよろしく!っていう猫がサムズアップしているスタンプを送り、Lemonを閉じた。
22日か……。
早く上がれるようにしないとな。




