第29幕 家族の絆
午前11時、俺は映画を見てる。
沙和子は今日も遊びに出かけ、友三は買い物に行った。
仕事が休みの日は録画した映画を見るか、友三と2人で映画館に行ったりする。
友三とは付き合い始めたころから、よく映画館に行っている。
本当に優しい女だ。
俺は洋画が特に好きだ。
友三は俺の趣味に合わせて、いろんな映画をよく見てくれる。
友和も小さいころ「お父さん。何見てるの?」って俺の膝に座って一緒に見たな。
それであいつも洋画を見るようになった。
俺や沙和子と違って、英語は苦手だったが…。
英語の成績が特に酷かった。
俺や沙和子が教えて、多少はマシになった。
「父さん、おはよう。」
友和が階段から降りてきた。
「おはよう。」
「今日武とカフェ行った後、そのまま東京へ帰るよ。」
「そうか。」
「父さん。今日は遊星からの物体Xを見てるんだね。」
友和も見たことがあるようだ。
「ああ。」
映画を見ながら答える。
「宇宙人が取り憑いて、みんな疑心暗鬼になっちゃうんだよね……。」
「でも人間って宇宙人関係無く、疑わしいことばかりだと思うけどね。」
友和が寂しげに微笑んだ。
去年から色々あったからな。
「そうだな。」
「母さんと沙和子は?」
「母さんは買い物、沙和子は遊びに行ってる。」
「そのまま東京へ帰るそうだ。」
「そうなんだ……。」
「俺はそろそろ行くね。」
友和が扉まで向かおうとする。
「友和!」
呼び止めた。
「どうしたの?」
「この映画の登場人物のように、人を信用できなくなっているようだが……。」
「だが、家族は別だ。」
「それだけは覚えておけ。」
友和が目を丸くしてる。
親族から見捨てられた俺が、こんなこと言って意外に思ったんだろう。
「俺は……。」
「いや、俺だけじゃなく母さんも沙和子もお前を見捨てたりはしない。」
「あんな思いをするのは俺だけでいいんだ。」
「わかったな。」
「………」
「ありがとう。父さん。」
友和はそう言いながら、家を出た。
そう……。
あんな思いをするのは俺だけでいいんだ。
俺の家族には……。
あんな思いはさせない。
俺は1人で映画を見続けた。




