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マリーゴールド  作者: Auguste
11/71

第11幕 偽りの思い出


式場についた。

今は夕方の16時半頃。

今回の葬儀はイブニング葬と呼ばれるものだ。

通常の葬儀は午前中に行うが、イブニング葬は夜に行い、出棺や火葬は翌日に行うのだ。

最近は昼間に参加しづらいことや高齢社会で火葬場等の予約が取りづらい状況から、イブニング葬にする人が多いらしい。


周りをよく見るとあまり人は来ていない。

みんな喪服を着てるが、髪色やメイクが派手なのが多い。

軽音楽部時代の面々は少なからず分かるが、他の人はキャバクラ時代の同僚か?


1人の男性がこちらの方へ向かってくる。

亜蘭君だ。


「小田さん、佐藤さん。」

「この度は姉の葬儀に出席してくださってありがとうございます。」


「久しぶり、亜蘭君。」


「亜蘭君、久しぶり。大丈夫か?」

学が心配そうに聞いた。

大丈夫じゃなさそうだが…。

何回も瞬きをしている。

チック症らしい。



「正直辛いです。自分の家庭は……その、あまりいい環境ではなかったので…。」

「姉には東京で幸せになってほしいと思ってましたから…。」

亜蘭君が涙をこぼした。

綾葉の家庭環境はよく知ってる。

綾葉は母親が再婚して、再婚相手との間に亜蘭君が生まれた。

再婚相手の父親は綾葉に冷たく、手を上げることもあったそうだ。

母親はそれを見てるだけ。

2人の間に生まれた亜蘭くんだけ可愛がられて生きてきた。

高校時代は碌でも無い男と付き合っては別れて、父親からも危うく犯されそうになったとか。

それは本当かはわからないが、家庭環境が良くないのは確かだ。

実際に両親は葬式にも出ていない。

そんな経験した人でも平然と人に嘘を吐き、捨てれるんだな。

亜蘭君も色々と可哀想になってくる…。

亜蘭君の病気のことは聞いていたから、何回か綾葉に大丈夫か聞いていた。

口では心配してると言いつつ何もしようとしない。

ほったらかしの状態だった。

それでも亜蘭君は優しい子だ。

今回の葬式も亜蘭君が仕切っているらしい。


「亜蘭君も辛いだろう。」

「何かあったら頼ってくれ。力になるよ。」

学が亜蘭君の肩に手を乗せて言った。


「……ありがとうございます。」

涙を拭き、一礼して戻っていた。


「ごめん……。」

「俺………ちょっとタバコ吸ってくる。」

亜蘭君には悪いが、色々思い出して気が滅入ってしまった。


「あんまり吸い過ぎも身体に毒だぞ。気をつけろよ。」

俺は「わかった。」と言いつつ喫煙所に向かった。



喫煙所に着いたらさっき見たキャバ嬢らしき3人組がいた。

軽く会釈するが、俺のことは気にせず何かを話してる。

「あの女やっと死んでくれて清々したわ。」

「少し顔とスタイルがいいからって図に乗って。」


「嘘吐きまくって男騙してたんでしょ。男に合わせて髪とか服装とかも変えたりしてさ。」


「今回の葬儀代もあのバカの死に顔を見るためのチケット代だって思えば安いものよ。」

頭が真っ白になった。

なんだ?

この会話は?

人が死んで口に出す言葉か?

確かに俺も憎んでいた。

聞いた当時はいい気味だと思っていた。

でも許せなかった。

「すみません!」


「ん?なに、あんた?」

咄嗟に声が出てしまったが、もう言うしかない。


「綾葉との関係は知りませんが、悲しんでる友人や親族の方だっているんです。」

「あまりそういう発言は…。」


「何?あんたもしかしてあいつの昔の男?」


「そうだったらどうしたっていうんです?」


「あはははは!最後どんな振られ方されたかわかんないけど、よくあんなやつのこと庇えるわねー。」


「庇うとかそんなんじゃなくて…。」


「そんな痩せこけちゃって、酷いことされたんでしょうねー。」

ダメだ。

相手は3人いて、次から次へと痛い言葉が飛んでくる。


「最後までキャバやってイケメンホストと一緒に死ねたんだから、あいつも幸せなんじゃないの?ねー。」

ん?

ちょっと待てよ?

最後までキャバってどうゆうことだ。

俺と付き合う時には足を洗ったって。


「あの……最後までキャバって?」


「あんたもしかして1つ前の彼氏?」

「もしかして知らなかったんだぁ。」

「キャバやりながら男に貢がせて自分が男に貢いでたってわけ!」

「あとパパ活とかでオッサンに抱かれて金ももらってたみたいだし、結構稼いでたんじゃない?」


「嘘だ………。」


「嘘じゃないわよぅ。よーく思い出してみなよ。」

「2人で会話したとき、なんかおかしなことはなかった?」

「矛盾してた話とか?」

「あんた間に受けそうだからねー。信じちゃったんじゃないの?」


「そんな…。」

心当たりがあった。

おかしな点がいくつも…。


「あんなにニュースでキャバとホストの猟奇殺人事件って騒がれてるのにぃ、何も知らなかったのぉ?」

当たり前だ。

殺されたのを知って、好き好んでニュースを見れるわけがない。


「もしかしてあんたが犯人?」

「もしそうならよくやったって褒めてあ・げ・る。」

「捨てられてみっともないけどね……。キャハハハハ」

最後の1人がそう言い、喫煙所から去っていった。

そうか…。

付き合った時からか…。

俺らが過ごした思い出はなんだったんだろう…。

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