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一か八かの運否天賦!

 さて、どこを押すべきか。

 残る牙はあまりに少ない……。


 そろそろハズレを引いてもおかしくない段階だ。


 どうする……。

 どこを押すべきか。


 残っている一番端の牙が気になるな。あそこはハズレ臭い。小鳥遊なんとかも避けているように見えるし……。


 ん?


 よく見ると、小鳥遊はニヤリと笑っていた。コイツ、なにか隠していやがるな。……なにか不正を? まさかな。


 なにか仕掛けがあるというのか。


「……」

「長考か、平田杏介。だがな、昼休みが終わってしまう。その場合もタイムオーバーで負けだぞ」

「まて、そんなルールは聞いていないぞ」


「時間は時間だ」



 コイツ、勝手にルールを追加しやがって。

 昼休みはあと十分もない。

 急がないと……。

 だが、どこだ。どこがセーフなんだ?



「くっ……」

「お兄ちゃん、焦らないで冷静に」

「夢香……そうだな」



 決めた。

 迷っていても仕方がない。時間も迫っているし、押すしかないんだ。


 俺は左側の牙に指を添えた。


 ここだっ!!


 ポチッっと牙を押していく。


 だが、妙な重みを感じた。……やべえ、噛まれる!?



『カチッ……』



 …………セーフ。



「くそっ、本当に運がいいな」

「あ、危なかったぜ。さあ、小鳥遊なんとか、お前のターンだぞ」

「僕が押すべき場所は決まっているのさ」


 余裕の顔で牙を押す小鳥遊。

 マジかよ。

 あっさりセーフを拾いやがった。

 コイツ、まるで場所が分かっているかのような……。いくらなんでも、早すぎる。考えなしにやっているとは思えないし……どこにヒントがあるっていうんだ……?


 それとも無謀で馬鹿なだけなのか。

 そうは思えないがな。


 残るは三つ。


 実質これで勝負が決まる可能性が高い。ヤツは答えを知っている素振りを見せているからな。だが、証拠はない。


 決定的な証拠があったのなら、イカサマを主張できたが……。今の段階では、それは無理だ。



「……」

「どうした、平田杏介!」

「つ、続けるさ。見てろ、ここでセーフを引いてやる」

「さあ、どうかな」


 コイツの言葉に惑わされるな俺。

 まだだ、まだ終わらんよ。


 俺は今度は中央右から二番目の牙に指を……む?



 小鳥遊の表情が歪んでいた。


 悪魔みたいな顔だ。


 ま……まさか!



 ここがハズレなのか!?



 それとも別の場所か?

 ここで俺がセーフだとしても、次のターンでヤツがセーフだった場合、俺が強制敗北。そこを狙っているのか……!


 くそ、くそ、どっちなんだ……!



「お兄ちゃん、がんばって!」

「……あ、ああ」



 どちらにせよ、俺はここでセーフを引くしかない。一か八かの運否天賦。いざ……!



 右か左か……それともど真ん中か。



 こうなったら……真ん中だ!!



 あえてここを押す!!



 俺は思い切って牙を押した――その時だった……。




『ガルルルゥ……!!!!!!!!!』




 うあああああああああああああああ…………!



「お、お兄ちゃん……!?」

「……す、すまん。俺の負――」

「叫んでどうしたの。大丈夫だったよ?」


「え……」



 ――――あ、本当だ。



 今のは“幻聴”か。

 緊張するあまり、俺は負けた気になっていたらしい。俺した事が……。


 それどころか小鳥遊が青ざめていた。



「……馬鹿な。本当に引き当てるとは」

「さあ、これで残るは二本だぞ!」



「くそぉ……当てればいいだけの話だ! これで平田杏介、貴様は終わりだあああ!!」


 直ぐに牙を押す小鳥遊。

 だが、イヌイヌが急に動き出し――!




『ガルルルゥ……!!! ガウガウガウガウッ!!!!!!』



 予想以上に吠え、小鳥遊の指を噛み砕く勢いで齧り付いた。



「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああ…………!!!!!!」



 指が挟まれ、小鳥遊は情けなく叫ぶ。



「か、勝った……」

「わぁ~! お兄ちゃん、やったね!」

「良かった。二分の一とはいえ、危なかった」



 夢香が抱きついてきた。

 俺は、可愛い妹を失わなくて良かったと、何よりも安堵した。勝てて……良かった。

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