いっぱいキスしようね
マラソンが終わり、午後の授業も流れるように進んで――放課後。
夢香を迎えに行こうとすると、向こうからやって来た。
「お兄ちゃん、迎えに来たよぉ……」
疲れているのか、夢香はヨロヨロだった。マラソンの後遺症かな。
「どうした、随分とやつれているな」
「走って疲れちゃった。そういうお兄ちゃんは、余裕ありすぎ~。なんでそんな体力あるの~」
「自分でもびっくりしたけどな。俺にまだこんな足とか体力が残っていたとは……」
「そうだ。一位、おめでとう! ていうか、一位とか凄すぎてビックリだよ」
抱きついてくる夢香は、自分のことのように嬉しそうに褒め称えてくれた。あまりに良い笑顔だったものだから……俺は照れた。
「夢香の為にがんばった。ほら、一万円」
「え……貰えないよ。だってこれはお兄ちゃんのでしょ」
「いいんだ。夢香に使って欲しい」
「でも、でも……」
困惑しつつ、夢香は泣きそうになっていた。次第にボロボロ泣いていた。
「大丈夫か、夢香」
「こ、これは嬉しくて。お兄ちゃん、優しすぎ!」
「義妹だからな。当然さ」
「も~、元から好きだけど、もっと好きになっちゃうじゃん」
手を握ってくる夢香は、俺を引っ張っていく。
――学校を出て、そのままアパートを目指した。
夕焼け空がまぶしい。
まるで俺と夢香を祝福しているようだった。
アパートに到着するなり、夢香は玄関で俺に飛びついてきた。
「ど、どうした……」
「もうお兄ちゃんのことしか考えられない。だからね」
重なる唇。
甘くて、脳まで溶けてしまいそうな錯覚に陥る。
次第に激しくお互いを求め合う。夢香がこんなに積極的だなんて……息が乱れて、けれどそんな些細なことも忘れて夢中になった。
「……俺もこうしたかった」
「良かった。お兄ちゃんってば……朝、クラスの女子と話していたから……不安だった」
「ああ、祥雲とは何もないよ」
「本当に?」
「うん。俺は夢香一筋だからね」
「嬉しいっ。いっぱいキスしようね」
その後も俺と夢香はキスを繰り返した。何度も何度も。
――義妹は地雷系女子だけど……超絶可愛い。
夢香はこのままでいい。




