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いつの間にか勝ってた

 体力にはまだ余裕がある。

 小学校の頃の走り方がまだ染みついている。忘れていない。あの全盛期だった感覚を。

 俺はまだ衰えていなかった。


 なんだ、こんなにも体が軽かったんだ。知らなかったな。



 どんどん加速して前へ進んでいく。



 他の生徒を抜き去り、少し先頭が見えてきた。



「お……小鳥遊なんとかもいるじゃないか。思ったより奮闘してるな」

「って、なに真面目な顔して言っている!! 平田杏介!!」



 隣には小鳥遊がいた。

 息を乱し、辛そうだ。横っ腹押さえて余裕なさそうだなぁ。


 そりゃ、あれだけ加速し続けていればな。



「大丈夫か?」

「う、うるさい……。僕の勝ち筋は見えているんだ……邪魔をしないでくれ」


「そうか。そりゃ悪かった。じゃ!」



 足を速める俺。

 小鳥遊はビックリしてあたふたしていた。



「平田杏介! ずるいぞ!!」

「ずるいも何もあるか。前半で体力を温存していなかったお前が悪い」



 どんどん距離を離していく。

 さて、もうヤツは眼中にない。俺は三十位以内に入ることだけを目標した。


 前方はざっと五十人というところ。


 一位とか十位以内は無理でも、三十位くらいなら頑張れば食い込めそうだ。



 まだ疲れていない。

 俺は体力の半分を使い切ったかどうかのところ。……いける。いけるぞ。



 他の生徒をごぼう抜きにしていく俺。



 気づけば周回も終わりが見えてきた。学校だ。校門に入ればゴールだったはず。


 前方には二、三人の姿しかない。トップはもうゴールイン済みなのか? まあいい、せめてこのニ、三人も抜いてやろう。


 予備パワーすら使い、俺は一気に駆け抜けた。


 その際、抜かれた方はビビっていた。



 ――よし、ゴールインっと。



 * * *



 マラソンが終わった。

 順位の発表があって、俺は十位~二十位を期待していた。



 ――のだが。



「一位を発表する。三年の平田杏介くん、前へ出なさい」


「――え?」



 名前をいきなり呼ばれて、俺は目が飛び出た。……って、一位って俺だったのおおおおおおお!?




「嘘だろオイ!!」「三年の平田くん!? ……って、誰だ?」「ええッ、ありえねえ」「アイツって影薄かったよな」「最近は女といるところを見るけどな」「あ~、あのメンヘラっぽい子?」「なんか凄い勢いで抜いていったよね」「全国大会に出てる陸上部の先輩がショック受けてるよ」「部活とかやってないよな、アイツ」「足速かったんだ」




 なんだか騒然となっていた。

 やべえ、過去一で目立ってるぞ、俺。恥ずかしすぎて緊張が……お腹が痛い。


 だが、賞品は受け取りたい。


 俺はなるべく後ろは見ずに前へ出て、校長からアマドンギフト券一万円分を受け取った。


 ……ふぅ、これで。



 急いで列へ戻り汗を拭う。



「お疲れ様、平田くん。一位とか凄いじゃん。カッコ良すぎ」

「祥雲……俺なんか褒めても何もでないぞ」

「ううん、心の底から尊敬しているよ。うんうん、やっぱり君はヒーローだよ」


 なんか笑顔を向けられて、俺は照れた。悪い気はしない。


 まさか一位だとは思わなかったけど、これで夢香に一万円をプレゼントしてやれる。


 マラソン終了後、小鳥遊(ヤツ)が悔しがっていた。


「クソ、クソ、クソ!! なぜ……なぜだ!! なぜ、平田杏介にあんな才能が……ありえないッ」


 ……まだやってるのか、アイツ。

 一人でなにやってるんだか。

 俺は無視して夢香の元へ向かった。

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