マルゲリータ・レトワ伯爵令嬢
私、ヘンリー・オコーネルは、18才になったばかりの若き公爵家当主である。
領地から帰ったばかりの忙しい日々を送っていたある日、執務室で仕事をしていると突然魔力ステラと名乗る女性が現れた。
彼女はオコーネル公爵家の歴史を変える為に、代々残されている当主の妻の日記を使って彼女達を亡き者にし、オコーネル家の歴史を変えると語ったのだ。
私は「私」を守るために魔力ステラと戦わなければならない。
昨夜現れた魔力ステラは、次のターゲットを7代前の当主の妻、マルゲリータ・レトワ伯爵令嬢だと言った。
私はまた図書室の奥にある書庫に足を運んだのである。
「マルゲリータ…マルゲリータ・レトワ…あった」
白い表紙の日記帳を私は書庫内にある小さな書き物机に置くと椅子に座った。
書庫内は保存の魔法がかけられているので美しい状態が保たれてれいるのだが、部屋から出すと魔法が切れるので、紙やインクの色が変色してしまう事があるので、書庫内で閲覧しなければならない。
「最後がどうなっているのかな?」
彼女達はオコーネル公爵家に嫁いで来る運命なので、最後のページが不自然な終わり方をしていたら、そこか魔女ステラが介入した場所になる。
私は最後から確認していった。
6月2日
学園のダンスパーティーの日程が発表された。
6月31日の13時からだそうだ。
ドレスの発注は先月済んでいるから、問題はパ
ートナーね。
どなたか素敵な方が申し込んでくれないかしら?
誰からも申し込まれないと、お兄様か、最悪お
父様よ。
家族がパートナーだと笑われるわ!
: :
6月5日
やったわ!パートナーの申し込みのお手紙が
2通届いたわ。
1通は幼馴染のピエールだったわ。
「どうせ、おまえのパートナーはナシル兄様
だろ?相手がいないだろうから一緒に行って
やる」ですって!!
ピエールとだけは絶対行かないわ!
でも、もう1人が子爵家のアンソニー様なのよ
ね。
いつも暗くて話した事が無いのだけど、なぜ
誘ってくださったのかしら?
明日にでもお話しに行こうかしら。
6月6日
アンソニー様を誘ってお話してみた。
でもこちらから話すばかりで、つまらないのよ
ね。
それに何か…目が怖いのよ。
何を考えてるのかわからないって感じ。
6月7日
ピエールが「申し込みして来たのは俺だけだ
っただろう?」って言うから、「おあいにく
様。他にもいるんですからね」って言ったら
驚いていたわ。スカッとしたわね。
でも気になったからアンソニー様について聞
いてみたら、あいつはヤバいって言っていた
わ。
家のメイドや侍従に暴力を振るうんですって!
この間は、野良猫をナイフで刺してるのを見た
って言っていたわ。
アンソニー様は絶対にお断りしなきゃ!
6月8日
放課後、アンソニー様にお断りに行った。
そうしたら「僕じゃなかったら誰と行くつもり
だ」って激昂されたの。
壁をドンって手から血が滲むくらい強く叩かれ
て怖かったわ。
私にも暴力を振るわれるかもしれないと思って
逃げたわ。
恐ろしかったわ。
その日を最後に日記は終わっていた。
6月9日に何があったかわからないが、そこで彼女の運命は書き換えられ、命が潰えたのだろう。
私は、魔力を集めると緑の表紙の日記帳を具現化させた。
これは私の魔力で出来ているので書き換えも自由にでき、送る相手の手に確実に届くようになっているのだ。
私は、マルゲリータ・レトワの日記に触れながら
彼女の元へ届くよう念じた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
私はマルゲリータ・レトワ。伯爵令嬢よ。
私の通う王立学園で毎年ダンスパーティーが開催されるの。
成人になった年に王城で行なわれる社交界デビューの舞踏会の前哨戦ね。
初めての舞踏会が王城だと緊張して失敗するかもしれないもの。
だから、学園のダンスパーティーでも皆、すごく真剣なのよ。
先月仕立て屋を家に呼んでドレスも注文したの。
淡いブルーに襟に白いリボンをあしらったドレスよ。
私の金色の髪によく似合うってお母様も言って下さったわ。
ドレスは決まったから、あとはダンスパーティーにエスコートしてくれる男性ね。
ダンスパーティーの開催が告知されると、男性から女性に申し込みのお手紙が届くのよ。
申し込みのお手紙の相手が良ければ了承のお返事をして、誰からも申し込みが無ければ身内の方がエスコートされるの。
毎年何人かお父様と踊られる方がいらっしゃるそうだけど、恥ずかしいからそれだけは勘弁よね。
そんなある日、馬車から降りて玄関から入ろうとしたら、緑色の本が落ちていたの。
誰かの落とし物かしらと思って拾ったのだけど
日記帳としか書いてなかったわ。
侍従に渡そうと思ったけど、お兄様の日記なら面白そうと思って部屋に持って行ったの。出来心よ。
部屋の机に置いて、中を見たらお兄様のだったら
怒るだろうなと思ったけど、お兄様のものとは限らないじゃない?
誰のものか確認する為に中を確認しないとね!
私はゆっくりとページを開いた。
6月2日
学園のダンスパーティーの日程が発表された。
6月31日の13時からだそうだ。
ドレスの発注は先月済んでいるから、問題はパ
ートナーね。
どなたか素敵な方が申し込んでくれないかしら?
誰からも申し込まれないと、お兄様か、最悪お
父様よ。
家族がパートナーだと笑われるわ!
あら、学園のダンスパーティーですって。
そう言えば、もうそろそろ日程が発表されるわね。
ドレスを注文したって事は男性じゃないわ。
我が家の玄関に日記を落とす女性で学園に通っているのは私だけなんだけど、どういう事かしら?
もしかして、私の未来が書かれているとか?
まさかね?
今日は6月1日だから、明日になればわかるわ。
ダンスパーティーが本当に6月31日の13時から
行なわれるのかどうか?
ふふっ、楽しみだわ。
あの日記は本物だわ!本当に今日ダンスパーティーが6月31日の13時からって発表があったの!
私の未来が書かれているなんて素敵!
とっても夢があるじゃない!
じゃあ、次はどうなるのかしら?
6月5日
やったわ!パートナーの申し込みのお手紙が
2通届いたわ。
1通は幼馴染のピエールだったわ。
「どうせ、おまえのパートナーはナシル兄様
だろ?相手がいないだろうから一緒に行って
やる」ですって!!
ピエールとだけは絶対行かないわ!
でも、もう1人が子爵家のアンソニー様なのよ
ね。
いつも暗くて話した事が無いのだけど、なぜ
誘ってくださったのかしら?
明日にでもお話しに行こうかしら。
えー、ピエールと子爵家のアンソニー様から申し込みが来るの?
ピエールは幼馴染だからよく知っているけど、アンソニー様とはお話した事が無いわね。
ナシル兄様だけとか、ピエールなら言いそう。
そうね、アンソニー様と一度お話するべきね。
本当にピエールとアンソニー様からお手紙が届いたわ。
来るってわかっていてもお誘いされると嬉しいわね。
6月6日
アンソニー様を誘ってお話してみた。
でもこちらから話すばかりで、つまらないのよ
ね。
それに何か…目が怖いのよ。
何を考えてるのかわからないって感じ。
えー、アンソニー様何か怖いわね。
でもお話しないと、受けるか受けないか決められないし困ったわ。
6月7日
ピエールが「申し込みして来たのは俺だけだ
っただろう?」って言うから、「おあいにく
様。他にもいるんですからね」って言ったら
驚いていたわ。スカッとしたわね。
でも気になったからアンソニー様について聞
いてみたら、あいつはヤバいって言っていた
わ。
家のメイドや侍従に暴力を振るうんですって!
この間は、野良猫をナイフで刺してるのを見た
って言っていたわ。
アンソニー様は絶対にお断りしなきゃ!
嫌ーっ!アンソニー様ヤバすぎるじゃない。
絶対にお断りさせてもらうわ!
6月8日
放課後、アンソニー様にお断りに行った。
そうしたら「僕じゃなかったら誰と行くつもり
だ」って激昂されたの。
壁をドンって手から血が滲むくらい強く叩かれ
て怖かったわ。
私にも暴力を振るわれるかもしれないと思って
逃げたわ。
恐ろしかったわ。
明日お断りすると、アンソニー様からこんな風な目に遭わされるの?恐ろしいわ。
行きたくないけどどうしたら?
そうだ、ピエールに相談したらどうかしら?
今なら訪問しても大丈夫な時間よね?
オコーネル公爵家に馬車を出してもらいましょう。
6月9日
私は、ピエールに付いて来てもらって、アンソニー様にお断りに行った。
アンソニー様にお断りすると、突然ピエールに殴りかかろうとしたけど、反対にピエールが足を払って転ばせた。
そして「マルゲリータのエスコートをするのは俺だ!」と宣言してくれた。
今まで幼馴染としか見ていなかったけど、ピエールがとても素敵な男性に見えた。
私は、ピエールにパーティーのエスコートの了承を伝えた。
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緑の日記が私の元に帰って来たのを見て、マルゲリータ・レトワ伯爵令嬢の日記を確認した。
無事にダンスパーティーに2人で参加したようだ。
アンソニー・ジュグモはあの後、殺人事件を起こして捕まったようだな。
マルゲリータ夫人が奴にやられなくて何よりだった。
「ふう…」今回も魔女ステラの陰謀を断つ事ができた。
一安心だが、これからも続くと見られるから安心はできない。
私は書庫を出ようとしてふと気がついた。
この書庫は当主とその夫人しか入る事ができなかったのではなかったか?
なぜ魔女ステラがこの書庫に入って日記を見る事ができたのだ…。
謎が深まっていくのを私は感じた。