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新しい明日

 出発した時間に帰って来た私達だが、イルーシャとステラマリンは慣れない時空間魔法と魔力の使い過ぎで戻って来るなり倒れてしまったので、私は執事のケントに命じて2人を客室で寝かせる事にした。


「旦那様、あのお二方の女性はどういった方でございますか?」


「あ、そうだな。一人は私の妻になるイルーシャだ。

 もう一人はステラマリンと言って私のむす…いや、イルーシャ嬢の妹だ。

 二人は遠い国から旅をして来られたからお疲れでいらっしゃる。起きたらすぐに湯浴みができるよう準備してくれ。それに着替えの用意も頼む」


「なんと!旦那様の奥様になられる方ですか!

それは大変!奥様のお部屋を準備しなければ!」


 バタバタと珍しく走って行った執事を見送ると、私は自室で着替えると王立図書館に向かった。

 リチャード1世の回顧録があった禁書庫の一画に

以前は無かった日記帳が置いてあるのに私は気がついた。

 椅子に座って日記帳を開くと、思った通りイルーシャの兄、ジョージ王太子の日記だった。


  約束を守ってくれたのですね…


 私は王太子の顔を思い浮かべながら感謝した。

これで私達の未来を変える事ができます。


日記を開くと、あれから王太子に起こった事が見えてきた。

 なんと食事に毒が入れられた回数が23回もあった。

 最初のうちは、毒見係と言われる身体を毒に慣らした専門の者が気づいて王太子の身は守られていたが、そのうち専門の者も毒に倒れて、最後は死刑囚に毒見をさせていたようだ。

 そうやって23回は難を逃れたようだった。

 最後のページにはイルド博士が書き記してくれていた。


  王太子殿下は、水害に襲われたシークス伯爵

  領を視察に訪れた、帰り道のハザーム山で崖

  崩れに遭い、迂回した獣道で待ち伏せしてい

  た敵に襲われて命を落とされました。


 王太子殿下の死因はこれだったのか…

 よし!原因が分かれば阻止する事もできる!


 私は緑の表紙の日記帳を魔法で作り上げると、

 毒が入っていたメニューと日付を書き、誰が毒を入れるのか現場を押さえて欲しいという事。

 王太子がシークス伯爵領を視察した帰り道のハザーム山で崖崩れに遭い、迂回した獣道で待ち伏せしていた敵に襲われて命を落とすと記した。

 そしてその日記帳を王太子の元へ魔法で送ったのだった。


 日記を見た王太子が運命を変えれば緑の日記帳はヘンリーの元へ返ってくる。

 あとは帰って様子を見るか、とヘンリーは屋敷に帰ったのだった。


 屋敷に帰ったら、ちょうどイルーシャとステラマリンが起きて湯浴みを済ませたところだったので、3人で一緒に夕食をとる事にしてヘンリーは自室に入った。

 すると机の上に緑の日記が置いてあり、ヘンリーが触れると役目を終えた日記帳はすぅっと消えた。


 夕食の場では使用人達の目があるので、王太子の日記の話はせずに、後のお茶の時に人払いして二人に教えた。


「そんなに毒殺の回数が多かったのですか!」


 イルーシャもステラマリンも宰相親子の執念深さに驚いたようだった。

 そして最後に視察に訪れた後、刺客に襲われて命を落としたようだと教えると、「なんて酷いことを」とイルーシャは泣き崩れた。


「イルーシャ、まだ運命は定まっていない。

私から送った日記を読んで、王太子殿下が刺客から逃れる事ができれば運命は変わるかもしれない」


 次の日は3人で王立図書館を訪れた。

昨日日記が置いてあった場所に日記は無く、ジョージ1世の日記帳がたくさん並んでいた。

 日記を確認すると、毒殺を回避して毒を入れた犯人を捕まえた事。

 そしてシークス伯爵領に視察に行った時には、事前情報で待ち伏せしているのがわかっていたので、刺客を全員捕らえる事ができたと書いてあった。

 掴んだ証拠を手掛かりに宰相親子の罪が表に出てきて、宰相親子は捕らえられて処刑されたと書いてあった。

 そして18才になって無事に成人した王太子は、国王に即位しジョージ1世となったと書かれていた。


「これで運命は変わったのですね」涙ぐむイルーシャに私は頷いた。


「もう宰相親子が王位を簒奪する事も無い。王家は兄上の血筋によって繋がって行くだろう」

 ステラマリンが未来に帰っても処刑を命じたムスカ王太子もいない。彼女は、安全な新しい日々を送る事ができる。



 王立図書館を出た私達は王都を一望できる丘に登った。

 イルーシャは王城から出る事が許されなかったそうなので、王都を一望できるこの丘に来て興奮していた。


「なんて王都を見下ろすこの景色は美しいのでしょう。このような美しい場所に初めて来ました。

 ヘンリー様、ありがとうございます」


 ステラマリンは未来の私と一緒に来た事があるのだと、懐かしそうに眺めていた。

 500年の時間を遡って苦労してようやく得ることができた平穏だ。

 美しい景色は我々の目に染み渡ったのだった。

 


 その夜、私達3人は談話室に集まった。


「イルーシャ王女殿下、私と結婚していただけませんか?」


「はい、喜んで!」


 娘として、両親のプロポーズの場面が見たいというステラマリンによって場が整えられ、私は正装で花束を捧げ、白いドレス姿のイルーシャにプロポーズした。

 当主の結婚式は慣習として領地の方で行われる。

 これから未来に帰るステラマリンは結婚式を見る事ができないからと、彼女は笑顔で両親のプロポーズの場面を見ていたのだった。


「お父様、お母様、私のお願いを聞いていただけますか?

 私、小さい頃からずっと兄弟が欲しかったのです。広い屋敷にお父様と使用人しか居なかったので、屋敷の中はいつも静かで寂しかったのです。

 だから今度は兄妹がいっぱい欲しいのです。

 未来に帰って、たくさんの兄妹の笑顔に溢れた屋敷になっていたら嬉しいです」


 ステラマリンの言葉に私とイルーシャは顔を赤くして善処しますと答えたのだった。


 そして次の日、快晴のオコーネル邸の中庭からステラマリンは未来へと帰って行った。

 オコーネル公爵邸は花が少ないから、私が帰った頃までに大好きなミモザの花で庭をいっぱいにしてねと注文をつけて…。


 それから半年後、領地で結婚式を挙げた私達だったが、すぐに嬉しい知らせがあった。

イルーシャが妊娠したのだ。


「もうこの子の名前はステラマリンしかありませんわね?貴女に会えるのが本当に楽しみよ」

 まだ小さいお腹に手を当てて、嬉しそうにイルーシャは笑った。


 私とイルーシャは、女の子のかわいらしい部屋や家具を準備して、ステラマリンに会える日を指折り数えて楽しみにしていた。

 そしてその日は訪れた。

 産気づいたイルーシャが産室に入って半日経った頃、大きな産声をあげて赤ん坊が産まれたのだ。


 産婆に呼ばれて部屋に入った私に布に包まれた赤ん坊を手渡された。


「旦那様、おめでとうございます!元気なお坊ちゃまでいらっしゃいますよ!」


「お坊っちゃま?この子は男の子なのか!」


「はい、それはお元気なご嫡男でいらっしゃいますよ!」


 赤ん坊が無事に生まれて嬉しいのだが、最初に生まれるのは女の子でステラマリンではないのか?

 私達の娘のステラマリンはどこへ行ったんだ?

 私は抱いた赤ん坊を見て。戸惑う気持ちを隠しきれなかった。




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