イルーシャ王女殿下
私とお父様は、王女付きの侍女達の手引きで、早朝部屋に入る事ができた。
白い壁紙の16才らしい可愛らしい部屋。
置いてある家具も品格のあるデザインで、とても王女殿下にふさわしい設えだった。
「王女様、オコーネル公爵閣下がいらっしゃいました」
その部屋の椅子に座っていた金色の髪の水色のドレスを着ていた女性が立ち上がって、こちらに歩いて来た。
その女性の姿を正面から見た瞬間、私はやはりこの人が母だとわかった。
私がお父様の方を向くと、お父様は顔を赤く染めてお母様を見つめていた。
ああ、私は父と母が恋に落ちた瞬間を見ているのか…
お互いが見つめ合って、微動だにしない。
私は彼らの娘として、ここでどういう態度を取ったら良いのだろう?誰か教えて欲しい。
見つめ合っていた二人は、お茶の用意をした侍女が扉を開けた音で我に返った。
侍女のフランが、私達を紹介してくれた。
「イルーシャ様、この方達は時空間魔法で500年後からいらっしゃった、オコーネル公爵とステラマリン様でいらっしゃいますよ。
明日のベントラーとの結婚を回避できる様に王太子殿下と協力して動いてくださっているのです」
それを聞いた王女殿下は、目を輝かせてこう言った。
「まあ、時空間魔法の使い手でいらっしゃるのですか?そういう魔法があるとは聞いていましたが、実際にお会いするとは光栄です!
初めまして、イルーシャ.エル.マルゲードと申します」
「ヘンリー.オコーネルと申します。こちらが身内の
ステラマリン.オコーネルです。早速ですが、王太子殿下との話し合いで明日の結婚式の前にイルーシャ様と500年後の世界に飛ぶという話になったのですが、イルーシャ様のお気持ちはいかがでしょう?
この際ですから正直に申します。こちらには二度と戻れません。
こちらの世界を捨て、500年後の世界で生きるお覚悟がおありでしょうか?」
「どうして戻れないのでしょう?」
「ここだけの話ですが、宰相のアドリックと息子のベントラーは、歴史を改竄してマルゲード王国を簒奪するつもりです。
殿下がベントラーと結婚したら宰相は王家の血を手に入れ自分の子孫を国王にして、邪魔な王太子殿下は殺される可能性が高いのです。
ですから王女殿下は彼らの手が及ばない500年後の世界で生きなければならないのです」
イルーシャ王女はしばし考えていたが、すっと顔を上げで答えた。
「私は王家の為に宰相家と縁を結ぶように言われて嫁ぐ事になりました。
それは来年国王に即位されるお兄様をお助けする為であって、お兄様の政治の邪魔をするのは本意ではありません。
ましてや、私がここにいるせいでお兄様が殺されて王位が簒奪されるなど、あってはならない事です。
どうかオコーネル公爵様、私を宰相達の手の届かない所へお連れ下さい。そして宰相の陰謀を阻止する為に力をお貸しくださいませ」
王家の為なら全てを捨て去る覚悟を見せた王女の言葉に皆感じ入った。
王女の言葉はヘンリーの心に強く響いて、王女を必ず助け出すと彼は心に誓ったのだった。
「わかりました。王女殿下は私達が必ず500年後にお連れ致します。その段取りですが、明日の結婚式に向かう前に…」
「オコーネル卿、その事ですが、ベントラーの手の者に王女救出の動きが漏れている節があるのです。
できたら今晩中に動いた方がよろしいかと思います」
侍女のフランは城内の動きを探っていたようだ。
「しかし、ステラマリンの魔力を全回復するにはもう一晩休ませなければ…」
その困った状態にイルーシャ王女が助け船を出してくれた。
「あの…魔力でしたら私は魔力を貯める事ができるので2人分の魔力をお渡しする事ができます」
まだ回復していないステラマリンの魔力が1人分。
そしてイルーシャ王女の魔力が2人分。
これで3人で今晩時空間魔法を使って500年後に帰る事ができる。
「それでは王女殿下は夜、王太子殿下の部屋に行かれる事はできますか?」
侍女のフランが代わって答えた。
「王女殿下はご結婚前に最後のご挨拶という形で正式に王太子殿下の元を訪問する事が決まっております。
その場を利用して行くのは可能ですわ!」
「それは良かった。では今晩王太子殿下の部屋から
500年後に旅立ちましょう!
王女殿下はどうかそれまでに準備をして、心安らかにお待ちになっていて下さい!」
「わかりました。では今晩兄上の絵お部屋でお会いしましょう。どうかよろしくお願いします」
その後、結婚式前に神殿で禊をしなければならない王女殿下は部屋を後にし、私達は護衛の目に入らないよう部屋を出る事に成功した。
その後、イルド博士の部屋を訪れた私達にイルド博士は興奮したように話しかけて来た。
「オコーネル卿、実は回顧録の参考資料の中からこのような物が出て来たのです!」
それは一通の手紙だった。
中を見ると小さな紙にひとことだけ書いてあった。
オコーネルの者へ
日記を思い出せ
それだけ書いてある紙に私とステラマリンは頭が疑問符だらけになった。
5年前に亡くなったリチャード1世の回顧録の参考資料の中から出てきた謎のメモ。
これは誰が誰に宛てたメモなのだろう?
私はメモを見ながら日記を思い出せと言う言葉を
繰り返し呟いてどういう事が考えるのだった。
ストーリーが進行しましたので、あらすじとタグを変更しました。




