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第116話 お説教?

更新が大幅に遅れてしまい大変申し訳ございません……!


今話がかなり短くなってしまったため、明日~明後日辺りにもう1話更新できたらと思っておりますのでどうぞよろしくお願いします!!

「セレナよ……兄は……兄はここまでやれとは言ってないぞ……」



「か、返す言葉もございません……」




お兄様が一通の招待状を片手にわなわなと震えている。


窓の外には曇天が広がり、時折雲の切れ間より三日月がその姿を覗かせている。

昼間の喧騒とは打って変わって、静かで穏やかな夜だった。それ故に、お兄様の震える声が、その声に込められた感情がひしひしと伝わってくる。


お兄様の手に握られた招待状は、半日前に宣言された通りエヴリン姫から送られてきたものだった。

王家の紋章が刻された蜜蠟の封を再度確認し、お兄様は眉間に指をあて盛大なため息を吐く。


そんなお兄様を宥めるように、グレン様はよく冷えた紅茶とくし切りのレモンを差し出した。

私には蜂蜜入りのミルクティーを渡して下さる。




「まあまあ、落ち着いて下さい。何も情報を得られなかった私達と比べても、素晴らしい戦果ではないですか」




お兄様は受け取ったくし切りのレモンをギリギリと握り締める。レモンの悲鳴が聞こえてきそうな勢いだ。



ご存知の通り、私が時間稼ぎをしている間、お兄様達はグリフォンの世話をする職員達に聞き込み調査をしていた。しかしその戦果は芳しくなかったのだとか。

グレン様を蝕んでいるのが新薬である以上、油断は許されない。そしてグリフォンを育てる職員達は、私達が満足できるだけの情報を持ってはないなかった。

そんな中で私が掴んだ──いや、掴まされたのが王宮への切符。

王宮とはその国の技術力の中枢だと言っても過言ではない。より正確な情報を、と望むならばこれ以上適役な場所はないくらいだ。

……ちょっと私達にとって王宮が都合の悪い場所なだけで。




「それはそうなのだが……そうなの、だが! 王族はまずいだろう! グレンお前も何か言ってやれ!」



「うーん……そうですね、今日の夕飯は何にしますか?」



「街の東の方に並んでいる露店の料理が美味しいと聞きました! 皮をカリッと焼いた肉に、香辛料の効いたピリ辛のタレが絡んでいて……焼きたてのパンと野菜とで挟んで食べると天にも昇る美味しさなのだとか!」



「良いですね、買いに行きましょうか」



「ああ、もう!!」




苛立ちに任せてお兄様はレモンを限界まで搾り入れた紅茶を一気に煽る。そしてその口元を酸っぱさに歪ませた。

その瞳には酸味からかそれとも別の要因からか、薄らと涙が浮かんでいる。


可哀想に……お兄様。助け船は出しませんけど、同情はします。大きさに換算したら蟻くらいの同情ですけど。




「セレナ、良く聞け。これが情に厚いエヴリン姫だったからまだ良かったが、他の王族達──特に王子達だったらとんでもない問題だったのだぞ」



「分かってます、お兄様……私はグレン様一筋です。ご安心下さいませ?」



「ちっがーう、このお馬鹿妹! ……いいや、確信犯だな! 尚更悪いわ!!」




そう叫ぶお兄様の顔は茹で蛸のように赤く、握り締められたレモンとのコントラストが美しい。

握り締めていた物がレモンでなくハンカチだったならば、きぃぃい!と叫びつつ噛み締めていたことだろう。


今にも地団駄を踏み出しそうなお兄様をグレン様が再び「まあまあ」と宥め、その一方で私を振り返った。




「でもまあ、セベクの言うことも正しいのです。貴方と仲を深めたのがエヴリン姫ではなく他の王子だったと思うと──」



「……だったと思うと?」



「嫉妬で、気が狂いそうです」




グレン様がほっぺをぷくっと膨らませ。その姿はさながら拗ねた幼子のよう。言っていることとやっていることのギャップが私の胸を貫く。

か、可愛い! 私が何に弱いのか、グレン様が学習してる……!




「……だからどうか今後は他の獣人に目移りなどせず、私だけを見ていて下さいね?」



「は、はい……!」



「兄の言うことは聞かない癖に……反抗期か? これが反抗期なるものなのか? 遂に来てしまったのか?」




ぽっと頬を紅潮させる私の傍らで、お兄様はしくしくと嘘泣きをする。

安心して下さいませ、お兄様。私がお兄様の言うことを素直に聞いていた時期なんて元よりなかったではありませんか。むしろ素直さを極めていた、とも言えるのかも知れないけれど。



招待状に記された時刻はちょうど明日の正午。

明日の面会に向けて私達は夜の獣人王国へと繰り出すのであった。


この度、本作『逆行悪役令嬢はただ今求婚中~近くに居た騎士に求婚しただけのはずが、溺愛ルートに入りました!?~』が双葉社様より発売させていただくことになりました……!!



挿絵(By みてみん)



眠介先生の描いてくださった可憐で美しいイラストによって世界観がより広がったお話を、ぜひ一度手に取っていただけましたら幸いです。

巻末には作中よりも少し前のグレン視点のお話や、電子書籍にはレスカーティア伯爵家での舞踏会前のお話、またゲーマーズ様でご購入頂いた際の特典としてブライアント辺境伯邸のメイド・マオ視点のグレンとセレナのお話のブックレットなど、ここでしか読めない様々な書き下ろしエピソードが加筆されています……!!


どうぞよろしくお願いします!!


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