第86話 「家族へのお土産」
街角を曲がり、俺たちと同じくらいの年頃の子供たちが、ごっこ遊びに興じているのを横目に見ながら活気のある街並みを練り歩く。
多くの客引きが街頭に立ち並び、俺達へと笑顔で店先へと導こうとするが、フリチラリアが慣れた様子で躱している。
耳目を誘引する店先の物品に一瞬でも目を奪われていると、人の波に流されそうになる。
その都度フリチラリアに手を引かれて、引き戻される始末だ。
たどたどしく慣れない街歩きに興じようとしたが、歩くだけでも面白いものである。
そして楽しめるのは何も王都散策だけではない。
「――――――――というわけで、トロルを倒したんだ。あの激戦。半端じゃあなかったぜ。まぁ……俺の敵ではなかったがな!!!フゥーーーーーハッハッハッハッッッッッ!!!!!!!!!!」
「流石ですアルタイル様!ご本人から魔将との戦いについてお聞きできるなんて、一生自慢できます!」
「でへへへへ!!!そんなこともなくもなくもなくもないかなーーーーー!!!!!」
「アルタイル様のご家族も、その話でもちきりであったことでしょうね!」
「そうだな。弟や妹どもは毎日のように話をせがんできてよ。ったく困ったもんだぜ!!!!!カー――――ッッッ!!!」
「面倒見のよろしいお兄様なのですね。今日はご家族であるご兄弟へ、お土産を買うということですよね?お優しいお兄様をお持ちになっていて羨ましいです!」
「え~?そうかな~~~!?俺は特に何かをした覚えはないけど、周りにはそう見えちゃってたかーーーーー!!!そうかそうかそうかそうかそうかーーーーー!!!!!!!!!!」
いや~~~!!!ルンルン気分で気持ちよく自慢できるぜ!!!
フリチラリアちゃんも楽しそうだし、ひょっとしなくても俺たち相性いいんじゃね♡
彼女はそれを人当たりよく、にこやかに聞いてくれる。
驚嘆に値するほどに聞き上手だ。
そんなに俺に興味があるんだね♡
シェダルはどこに消えたのかというと、ヤンの指示でアルコル家諜報員と情報交換に行った。
フリチラリアには運び屋の仕事が残っていると嘯き、雑踏へと姿をくらました。
彼女はいつものこととおおらかに後ろ姿に手を振って、何でもないかのようにしている。
ヤンの野郎に負けず劣らず、シェダルも飄々としていやがるからな。
そして彼女はそれとなく誰にプレゼントを買うか、何をしに行くのか聞いてくる。
俺はいい気分のまま、それに受け答えた。
「アルタイル様の人徳がそのように思わせるのですよ!お土産をご家族に買うという、細やかな気遣いは大変素晴らしいです!ちなみにどのようなものをお買い求めになるのですか?」
「まーーーーーねーーーーー!!!!!!常日頃世話になってるし、いいものをたくさん買いたい!家族全員と使用人たちにだな!」
「となると、できるだけ大きく品目が揃ったお店ですね!購入されるものは、それだけでよろしいでしょうか?」
「そうだな!…………あと髪紐!これは俺のもの」
「やることがいっぱいですね。ご家族それぞれに買うものをお選びになるので?」
土産を買う相手か。
アルデバラン、カレンデュラ、エルメントラウト叔母上、ノジシャ、父上、御義母上、叔父上、お婆様、サルビア、ステラ、エーデルワイスってとこか?
あぁ。後は乳母のヘンリーケや、最近手に入れた褐色肌獣人ロリ奴隷のルッコラちゃん。
チューベローズのカス耳長も煩そうだし買っておくか。
それにしたって多いな。
普段世話になってるんだから、ここで金の出し惜しみはするわけにはいかないし。
そしてガキどもに露骨に安っぽいもの買ったら、微妙な顔で受け取って変な空気になりかねないし。
なるべく金銭的価値に格差がないもので、みんなに喜ばれるだろう物を買う……?
なんてミッションだ。
こんなことをリア充どもは、屁でもないという面でこなしているというのか……?
容易いことではない。
彼らもただリア充でいるのではない。
リア充であろうと努力し続けているからこそ、リア充なのか。
クソッ腹立つが見直しちまった。
でもいつか追いつけるさ。
誰もが最初はコミュ障として生まれ、コミュ強に人生経験を積んでなっていくのだ。
だって俺はまだ歩き始めたばかりだ。
この……リア充ロードをな……!
つっても俺は美少女に囲まれてるから勝ち組確定なんだけどね(笑)
見ておるか~~~?リア充ども非リア充ども全ての男ども~~~?
数多の美女を侍らせる至上の悦楽を知っておるか~~~?
って知らないよな(笑)
悔しいのぅ(笑)悔しいのぅ(笑)
「漠然とだがいろんなものを、それなりに高めのものを買いたいな。できれば消え物の方がいいのか……?それぞれの好みはなんとなく知っているけど……そこはフリチラリアちゃんのアドバイスが欲しいな」
「えぇ。お任せください!この辺のことなら、よく通じておりますので♪」
「心強いな。頼むよ」
「微力ながら、お力添えいたします」
フリチラリアちゃんはほんわかと明るく、胸に手を添えてウィンクする。
女子力高そうで頼りになるぜ!
俺の持てる才知を総動員したところで、なんとかならなそうだったからな!!!
しかし子供らしくない分別のついた子だ。
非常に大人びているノジシャみたいにしっかりしている。
おしとやかだが、非常にアグレッシブに思える。
普通のいい子だが、行動が読みにくい捉えどころもない性格でもある。
早熟な女の子だと一口に言ってしまえばそれまでだが。
だって普通のガキは、アルデバランぐらいのもんだろ?
ステラはバカすぎて比較対象にならないが。
「ところでどこに向かっているんだ俺たちは?」
「ディースターヴェーク商店です!最近流行っててお洒落なお店なんですよ!」
流行に敏感なおしゃまさんだ♡
彼女も楽しみなのか少し興奮しているようで、声がやや弾んでいる。
俺一人で暗中模索するよりも、結果的に良かったな。
しばらく談笑に興じながら進んでいくと、小洒落た大きな商館に至った。
人の往来が激しく、大きな袋をいくつも抱えた商人や貴婦人が店の内外を行き来していた。
千客万来である。景気がいいことだ。
「――――――――アゲナさーーーん!こんにちはーーー!!!」
「――――――――フリチラリアさん。やぁこんにちは」
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