第84話 「王都での不思議な出会い」
荷造りも済ませ、明日には王都を出る。
しかしやることがなくて暇な俺は、近所を散歩できることになった。
父上にはこんな状況で外に出るなんてと反対されたが、俺がガキどもにお土産を買いたいということ。
そして父上の誕生日プレゼントを買いたいと、可愛くおねだりしたら一発だった。
これが最後の自由時間になるかも。
そんな考えが思考を掠め、暗澹たる気持ちになる。
あとチューベローズの面倒を見たくない。
部屋の空気も最悪だ。サルビアがくっそイライラしている。
チューベローズの周囲を顧みない横柄な態度のせいだ。
俺は言い訳を必死に考えて、サルビアにもお土産を買うことを約束する。
そして今からお土産を買いに行くのだ。
滅多にない自由な冒険だ!!!!!
いいご身分だと気軽に外にも行けやしないからよぉ、超サイッコーーーの気分だぜっ!!!
あとは髪紐も買っておくか。
あの最悪な日に破けたから。
俺は町そのものが生き生きしているような、賑わう都をを練り歩く。
一人で出歩くのは初めてだ。
エーデルワイスの時は彼女をエスコートしなければならなかったし新鮮だ。
大都会には美人のお姉ちゃんがいっぱいだ!
オホッ♡ボリュームたっぷりのジューシーそうなメロンちゃん発見♡
君、大丈夫?そのメロン重たくない?
どしたん?それ持とうか?ホテル行こか?
ヤンをはじめに諜報員が、俺の見えないところで護衛しているが。
それに気配察知スキルもあるから、そう危険なことはないだろう。
ちなみに変装もしている。
ダボついて体のラインが見えない、質素な服。
遠目から見ても特徴的なお美しい髪は、目深にかぶった帽子の中に収納。
もっさりしていて誰も俺が英雄アルタイルだなんて、わかりっこないな。
でも端正極まりないお顔は丸見えなんだよ。
この世界ってサングラスやマスクなんてないし、俺の輝くプリティーフェイスが一目瞭然だ。
異世界の常識では顔を覆い隠していたら、よからぬことを企んでいてもおかしくないと思われてしまうからな。
でもこの世界って医療関係者はマスクしてるし、消毒の概念もあるんだよな。
なんだか技術の発展が、地球からするとチグハグだ。
まぁ異世界だし、そういうこともあるだろう。
ぶっちゃけ神様や魔法あるなら何でもありだしな。
俺は学者じゃないし、そこらへんはあんまし興味はない。
だがそんなことより重要なことがある。
「(迷子になった)」
俺はこの整然とした街並みで、土地勘がないことで居場所がわからなくなっていた。
来た道を辿って大通りに戻れば、王城からの距離感で大体の位置がわかる。
しかし街並みが整い過ぎているため、どこに何があるか地図を見てもよくわからない。
どんだけ同じような建物ばっかなんだよ。
歩き疲れてうんざりする。
各種施設の似たような構造的からどう考えても、人を迷わせるに決まってんだろ。
伝説的建築家が街づくりしたなら、もっと攻めた建築設計にしろや。
「どうした坊ちゃん?迷ったか?」
「迷ってない。これは探検だ」
「くく……そうかい。ちなみにそっちは行き止まりだ」
「遠回りすることも人生だ。それが人を成長させてくれる。おかしいことはない」
「なら引き続き見守ってるからよ。頑張れや」
「はいはいはいはい。ぬかしやがれ。そんなことより護衛しっかりよろしくな」
護衛のヤンが、どこからか姿を現す。
終始子馬鹿にするように、俺の後ろからベラベラとちょっかいを出してくる。
俺のイライラゲージが留まることを知らない。
それでも歩を進め続ける。
余計な口を出される前に、さっさと目標を果たすに限る。
時間は有限なのだ。
次は大通りから出来るだけ離れてみる。
まっすぐ進み続ければ、来た道を戻ってこれるだろう。
雑貨店とかあればいいんだが。
「――――――――もし?お困りでしょうか?先ほどから同じ場所を歩いているようにお見受けしたのですが……」
おそらく俺を呼んでいるのであろう、鈴を転がしたように澄んだ高い少女の声に振り返る。
段々とうら寂しく狭くなる通路に、小さな影があった。
亜麻色の髪を肩口で切りそろえた、可憐で清楚な美少女が佇んでいた。
ものすごい美少女だ。正統派美少女。
涼やかで華やかな美貌であるが、慎み深くどこか落ち着いてもいる。
不思議な雰囲気の少女だ。
年の頃は俺と一緒くらいだろうか。
まだ大人というには華奢で、あどけなさが抜けていない。
彼女は俺へと目線を合わせ、優しそうな緑の眼差しで心配そうにしていた。
なんか……妙に目が引き付けられる。
俺好みの清純派美少女だからかな?
「えーと……もしかして迷ってしまいましたか?小さな女の子が、道がわからない場所であまり一人で歩くことではありませ――――――――」
「――――――――迷ってない!!!!!探検!!!」
俺が大声で否定すると、愛くるしくパチクリと瞬きする。
そして優し気な口調で、遠慮がちに質問してきた。
「……………そうでしたか……えーと、この辺の子ではないですよね?お家の人はどうしているので?」
「王都の別邸にいるよ。ここの出身ではないから土地勘はないが、本当に迷子ではない。家デカいし、遠くからでもすぐわかる」
俺はあらかじめ決めていたハンドサインを、後ろ手に送る。
ヤンに来なくていいという合図だ。
威圧感のある護衛が来た方が、話がこんがらがって面倒になる。
こんな思いやりのあるカワイ子ちゃんに、敬遠される方が嫌だしな。
俺を迷子だと思って心配になったのか、この娘は同行を申し出た。
案内するための方便だろう。
だが都合がいいので、承諾する。
「差し支えなければ、私も探検にご一緒してしていいでしょうか?暇を持て余していまして、王都外に住む方のお話を聞きたいのです。私の名前はフリチラリアと申します。貴女のお名前を聞いてもよろしいですか?」
「いいぜ。一緒に行こう…………ふん……聞いて驚くがいい…………天下の英雄アルタイル・アルコルとは……俺の事だ!!!!!」
バンッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!
俺は期待を込めてフリチラリアちゃんの可愛いお顔の驚くであろう様を、気障にウィンクしながら見つめた。
しかし彼女は一瞬キョトンとすると、朗らかに片手で口を覆って笑った。
あれれれれぇ~~~?
「あはは!私の友達もみんなが、大魔導師アルタイル卿の真似をしています。魔将トロルとの決戦ごっこは男の子たちが大好きですよ♪近いうちに劇にもなるとかで、女の子も楽しみにしています。王都の女性みんなに大人気ですからね~」
「ホントだし……ホントにホントなのに……」
まぁ今は変装しているからな。
俺の輝きが曇って見えるのは仕方あるまい。
それにしても王都の者たちにも俺は大人気とは、いいことを聞いた。
トロル戦は、ナンパするときの鉄板ネタだな♡
今度王都に来たときは、獣欲に身を任せよう♡
俺俺アルタイル!君可愛いね!俺と遊ぼうよ!
トロル戦の事を話してあげるからさ!御託はいいから早くしゃぶれ!
ってな感じよっ!!!
上出来だ!!!!!!
そんなことを話していると、後ろから見知った声を掛けられる。
俺は振り返ると、このような場所で出会った驚きに目を見開いた。
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