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第83話 「エルフ語 奴隷の首輪」



「………エルフ語を操れる人物は、王国でも非常に限られる。言語体系が異なり過ぎて、習得難易度が容易ではないからだ。エルフに対する識見を有した人物すら貴重だからね。彼女らは魔王領域との境界に広がっている大森林に引きこもる、閉鎖的な種族なんだ」



 父上は目を覚まさないチューベローズを一瞥して、エルフに関する説明を事細かにしてくれる。

 エルフ語話者はほとんどいないのか。


 そうなの……?

 どうしよう言い訳……

 何がもっともらしいだろうか……思いつかない……






「なんか聞いてるうちに……覚えました」



「マジ?すごくね?ヤバくね?」



 俺の適当な言い逃れに、ヤンが引き気味にしている。

 いやそんな人いたら確かにヤバいわ。


 だが言ってしまったものはしょうがない。

 薄氷を踏む思いだが、これではぐらかしていくか。




「まぁ……………天っっっ才っっっですからねっっっっっ!!!!!」



「凄い!!!!!天才!!!!!偉い!!!!!!!!!!」



「あぁ……このエルフの名前を知ってたなそういえば……魔物の言語も一発で理解したと聞くし…………坊ちゃんも才能豊かだよな。ピーキー性能だけど」



 あ、そうだった。

 ヤンの言う通りエルフ語わからなければ、名前なんてわかんねぇよな。

 それに意図せずのことだがトロル戦で魔物の言語を話したことへの、補完材料にもなった。

 やっぱ正しい行動には、正しい結果が伴っちまうんだよなぁ!


 だがお前、一言多いんだよ。

 ほざきやがる。

 許されぬ大罪。




 それでも俺の雑詐術を父上たちは信じ込み、手放しに褒めちぎる。

 謙虚な俺も、のぼせ上がっちまうぜ!!!

 全能感に溢れちまうぜ!

 神すら選ぶこの凄さに、全人類は平伏しちまうぜ!


 さらに父上からの、賞賛は続く。

 もう褒め殺しだ。





「それに交渉内容も大したものだ。奴隷を無償で譲渡されるとは、私をして明敏な判断と言える。商機を一つとして逃さない、あんな商人の鏡を相手に本当によくやった。お前の成長を誇らしく思うよ」



「ありがとうございます!!!!!」



 嬉しいな!!!

 父上が人を褒める時は嘘つかないからな!


 俺もベストを尽くせたと思う。

 自分の仕事を褒められて鼻高々だ。






「大体の男の奴隷は戦争奴隷に組み込めばいいし、女の奴隷も家事労働や、手工業などに労働力として使える。よくやってくれた」


「はい!…………その……ルッコラっていう獣人奴隷の女の子を俺に……メイドとして頂けませんか?」


「気に入ったのかい?」


「はい……ダメでしょうか……?」


 ネコミミ褐色肌ロリ奴隷という属性もりもりのルッコラたんを、メイドにするという野望。

 どんな言い訳をしたところで、なれば?小説ではケモミミを手放す主人公など絶対的皆無。


 それはなぜか?カワイイがそうさせるのだ。

 彼女は俺の奴隷という立場だが、俺は彼女の可愛さの奴隷でもあるのだ。




 上目がちに父上を見る。

 ルッコラたんは最初に治療したから思い入れがあるし、一番かわいかったし。

 それにあの反応を見るに、俺の事絶対好きだし♡


 父上は少し思案すると、承諾してくれた。

 だが念を入れて注意をする。





「いいよ。ただし、しっかり面倒は見るように。苛めてはいけないからね。そんなことをすれば、私はお前に奴隷を一切扱わせないことにする。命は尊いものなんだ。奴隷であってもそれは変わらないことを、よく理解しなさい」


「はい!それは絶対やりません!!!お言葉、しかと胸に刻みます!」


「そうか。それならいいんだ」


 ヒャッハーーーーー!!!!!


 奴隷だぁっっっ!!!好き放題してやるぜぇぇぇぇぇ!!!!!




 とはならないから。

 彼女たちも心ある一個の生命。

 立場こそ違えど、礼節は払わなければならない。


 俺は人格者だからな。

 横柄な振る舞いは、自ら禁じているんだ。




「情操教育か?だが坊ちゃんの身の回りの世話に、獣人なんかつかっていいのかよ?」


「貴族たるもの、奴隷や獣人との接し方も学ばないといけない。命を預かる重みを知ることも然りだ。それにサルビアがきちんと見て、サポートしてくれるだろう。万が一何かあったら、私がそれなりの対処をするさ」


 ヤンが問うと、すげなく答える父上。

 納得したのか、それに関しては何も言わず腕を組んだヤンは壁にもたれかかる。






「首輪があるからエルフすら、いうことはある程度までは聞かせられるだろう。滅多なことは起こらないとは思うがよぉ……」


「奴隷の首輪は、非常に強力な魔道具の一つだ。エルフがこれの対抗手段を持っているという話は聞いたことがないから、警戒は必要だが最低限の信用はしていいだろう……………ちなみにアルタイルに説明するが、首輪の魔導具は、製法や管理方法は王家が管理している。それが王権を強固なものにしているんだ。その威力と、奴隷を従わせる力の源泉という権威をもって」


「あれは王家の物だったのですね……説明頂きありがとうございます」


 国が奴隷を管理するならば最高責任を負うのは誰かとなると、法を制定する王家になると当然帰結する。

 それにあんな危険な魔道具をコントロール出来る実力者は、王国においては王家しかありえない。


 チューベローズを見ると隷属の象徴である奴隷の首輪が、細く白い首筋に嵌められている。

 その均整のとれた美しい形の胸部は静かに上下していて、一向に目を覚まさない。

 こうして黙ってさえいれば、見目麗しい美女であるのだが……

 天は人格という最も大事な才能をお与えにならなかった。まこと無念なり。






「しかしチューベローズ殿に関しては……帰って父上の指示を仰ぐか……私の手にはとても……」



「すみませんでした父上……すべて私の不徳です……」



「お前のせいじゃないさ。時として巡り合わせが悪いことは、往々にあるものだ」



 父上は憂鬱にしかめた顔を、無理矢理ぎこちない笑顔に変えて俺を慰める。

 この事態を引き起こした俺は、胸を抉られる。


 苦心の末、父上はアルコル領へ帰還することを決めた。

 これが吉と出るか、凶と出るか……




 結論は出たが、誰もがすっきりしない胸中である。

 どうあがいても不承不承の弥縫策と言えるからだ。

 そうするしかなくとも、割り切れないものがある。






「これは早いところ帰ることにするかな……」




 あれだけ帰りたがっていた父上も俺も、気分が晴れない。

 お爺様に何て言って説明するんだよ……


 どう考えても、俺も同席するわけじゃん?

 想像しただけで震え上がる。今ですら生きた心地がしない。


 報告したところで、一件落着とはいかないだろう。

 俺は考えることをやめた。

 考えても思考の迷宮に惑うだけだし。




「帰る前に最後の交渉の詰めに、ツア・ミューレン伯爵一家へ挨拶をしようと思ったけど……この情報が漏れたらアルコル家といえどもどうなるか……魔物の侵攻を言い訳にして帰ることにしよう」




 エーデルワイスを最後に一目すら見れない。

 なんともバタバタした王都の滞在だったな。

 忙しすぎて、花の都ソラーヌム・トゥベローズムを堪能出来やしない。


 まさか王都に離愁を味わうとは。

 だがこの運命を受容するしかない。

 諦観とともに頷く。






「アルタイル。お前も今から帰り支度をしなさい。明後日には出立する」








 先日に引き続き、2022.04.24 日間異世界転生/転移ランキング ファンタジー部門で282位を獲得しました。


 以前と同様に、活動報告に画像載せてあります。


 温かく応援してくださった皆様に、深く御礼申し上げます。




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― 新着の感想 ―
[良い点] エルフ語、なんか聞いてるうちに覚えましたか(*´ω`*) 凄すぎですが、ある様天才なんでみんな納得ですね! パパさんもヤンさんも褒めちゃいますね( *´艸`) そして奴隷をい「じめちゃだ…
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