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第81話 「人間虐待愛好エルフ様」




「――――――――エルフ……………?これはまっっっずいっ…………!!!」






 一番最初に動いたのは、随行していた執事見習いだ。

 冷や汗をかいたマックスが上着を脱ぎ、エルフの頭に羽織らせる。


 機転を利かせたのだろう。

 彼は普段の姿からは想像できない鬼気迫る口振りで、奴隷たちに厳命する。




「お前たち!!!このことを一言でも漏らしたら厳罰を与える!!!いいなっ!!!」



「「「「「はっ!!!!!」」」」」



「よし…………坊ちゃん。一旦当主様に連絡して命令を仰ぎましょう。俺たちの手には余ります」



「あ……あぁ……頼んだ」



 目先が利くマックスがいてくれてよかった。

 彼はすぐさま部屋を飛び出して、このことを伝えに行く。


 奴隷商は他にも商品にならなそうな奴隷を確認するため、席を外している。

 もし見られていたら、好ましくない事態に陥っていただろう。


 エルフは耳がなくなり頭部全体が焼けただれて損傷が激しく、顔立ちもわからなかった。

 加えて片眼が潰れていたが治り、意識を取り戻した。




 このファンタジー定番出演種族のエルフは、目を覚ますとエルフの言語で暴言を撒き散らす。

 突然のことに俺たちは言葉を失くしてしまう。






『――――――――ここは………………!?……この劣等猿!豚の鳴き声みたいな騒音で喚いてないで、この首輪を外せ!不遜にも程があるぞ!下等生物どもが!!!』






 ぎりぎりと歯を食いしばり、罵詈雑言を並べ立てるこの耳長。

 うわなんだこいつ。無礼な奴だ。


 奴隷たちはひそひそと苛立ちを込めて隠れ話をしている。

 こいつ昏睡していた自分を、人間が治療してくれたってことわかってんのか?




『上級生物の中でも一際上級個体のこの私が、魔物如きに不覚を取るとは……!だからさっさと駆除して世界を浄化しておくべきだと言ったんだ!果てには人間猿如きに虜囚の辱めを受けるとは……!!!全てあの無能の糞どもが悪いんだ!このエリート様の言うことを聞いていればいいものを!!!!!』




 口、汚っ……

 いきなり差別とか引くわ。


 エルフへの幻想が音を立てて崩れていく。

 オタク君たちが求めていた、清楚で可憐で上品で理知的なエルフ像を返して?

 その体でな♡

 





『おい!そこの蛆虫!私を回復魔法で治したからと言っていい気になるなよ!顔の崩れた畜生!貴様なんぞに買われるぐらいなら死んだ方がマ――――――――』



 回復魔法の残照から自分に魔力干渉した人物を探り当てたのか、俺へと白く細い指を向けて罵倒する。

 しかし俺の顔を見た時固まり、気持ち悪い笑い方をして舌なめずりをする。






『――――――――イヒッ』






 薄い服で乳房の輪郭がわかるくらい近づいてくる。

 スレンダーだが、女らしさがあるモデルのような体つきだ。

 糞みたいな性格だが、その見た目には目が吸い込まれてしまう。


 くびれがエッチだ。

 あまりの服の薄さに、突起物が浮かび上がりそうである。

 あとちょっとで見え……!


 エルフ耳の形がくっきりとわかるまで迫ってきたころ、息を荒くして頬を紅潮させる。

 月光を宿したような白銀の瞳が俺を見下ろした。






『ンホッ……フヒッ……デュフッ……オホッ……ブヒョッ……グフッ……♪』




 いきなり俺の体をフェザータッチし、服の中に指を滑らせる。

 そして俺の胸板や、腰、尻をねちっこく撫で上げると、鼻息荒く喘ぐ。

 

 最後に仕上げとばかりに、俺の頭に顔を埋め深呼吸をする。

 俺は身震いし、呼吸することを忘れる。






『――――――――下等な人間にしては……イイ……♡』




 猥褻物そのものの粘度が高い表情で、噛み締めるように下劣な感想を口にする。

 くどいほどの拒否反応から俺は暴れだす。

 だがエルフの膂力は尋常ではなく、その腕にがっちりと抱き留められたままとなる。






『金色の猿♡エルフ様が飼ってやらんこともない♡名誉なことだぞ♡』


『……………は?天井知らずの恩知らずだな。この俺が治療してやったんだぞ?』


『そうか♡よくやった♡礼として手加減なしの全力で、死ぬほど可愛がってやるから覚悟しておけ♡」


『ヒィッ……やだぁ……!』


 ニチャア……と笑うと、口の中で粘ついた唾液が糸を引いている。

 俺は顔が蒼白になり、悪寒が止まらない。


 鬼畜そのものだけが成せる業だ。

 戦慄するあまり、言葉が見つからない。






『下等なエルフもどき猿の分際で、エルフ語を話すとは殊勝な塵だ♡虫けらの断末魔みたいな音波を覚えずに済んだことには、褒美をくれてやろう♡』


『え?……あぁ』


 そういえばこいつ聞いたこともない言語で話しているな。

 言語チートで自然と話せていたから気づかなかった。

 大陸諸語とは全く異なる発音や文法だ。


 そんな情報をむざむざ渡す必要もないので、適当に相槌を打って話を合わせておく。

 変態エルフは満足そうに、俺をねっとりと観察している。

 視線だけで犯されそう。




『褒美はそうだな……私の唯一の奴隷にしてやろうではないか♡感涙に咽び泣いていいのだぞ♡二度とまともな生活ができると思うなよ♡』


『お前自分の立場わかってんのか?お前、俺の奴隷な?脳味噌が怪我でおかしくなったか?』


『私の正気を疑うか?生物としての格の差が、理解を妨げているだけだ。気にする必要はない』


『自分の胸に聞いてみて???正気を疑うっていうか、人格に非の打ちどころしかないから???もっかい回復魔法いっとくか?????』


 俺がトントンとこめかみを指先で叩きながら、再度の再生魔法を勧める。

 エルフは一瞬屈辱的だとばかりに額に青筋を立てるが、それすら楽しいとばかりに凄惨な笑みを浮かべる。






『随分と反抗的じゃないか……♡誘惑しやがって♡私好みだ♡可愛い顔をボコボコにして、上位種様への屈服願望ほじくりだしてやるからな……♡ヒトブタぁ♡』



 クソエルフはゾクリと身を震わせ、嗜虐的な笑みを浮かべる。

 歪んだ欲望をストレートにぶつけられ、思わず気押される。

 人間虐待エルフは舌なめずりして、俺の怯えた顔を吟味している。




『叩きのめされて服従することの喜びを刷り込んでやるぞ♡最高生命体エルフ様の奉仕種族として覚醒させてやる♡絶対に敵わないってことを魂に刻み込んでやる♡』



 めっちゃレイシストだしてくるじゃん……

 耳を覆いたくなるスラングの数々に、差別主義者への侮蔑を隠せない。




『グフフ……♪これまでは脳内に留めていたあんなことやこんなことを、今となっては貴重な美ショタにやらせてやる……!もう煩い頑固婆どもはいないんだ。好きにやらせてもらおうか……!グヒ♡』


『……………』


 エルフは下種な想像を昂らせて悶えている。

 鳥肌が立ち、穏やかさとは対極の感情が募る。

ドン引きして絶句していると、このエルフのカスは思い出したように俺に問いかける。






『最優秀存在エルフ様を誘惑する悪い人間ちゃん♡お名前はなんていうのかな♡』



『……アルタイルだけど』



『そうか♡お名前言えて偉いぞこのサル♡だがいずれ捨てることになる名前だ♡新しい名前は考えておいてやるからな♡それでも今は覚えておいてやろう♡最優等種族チューベローズ様に感謝しろよ♡』



『チューベローズ?お前の名前か?』



『あぁ♡ヒトオスの小さい脳みそでよく覚えられたな♡偉いぞ♡性玩具の癖にやるじゃないか♡』



 エルフは俺の頭を撫でる。

 そして俺の耳元にその端正な顔を近づけ、粘着質に囁く。






『精々私を楽しませろよ♡私の期待を裏切るとヒドイからな♡お前もう助からないぞ♡』



 もう生理的に無理。

 こんなの傍に置いておくとか悪夢だ。

 本当にすぐに一秒でも早くどこか俺の目の届かないところで、お前の好きというショタと勝手によろしくやってくれ。


 ぶっちゃけ女ってもう間に合ってね?

 もうすでに遅いのかもしれないが、俺は諦念と共にそんなことを漠々と思い浮かべていた。






『…………もう我慢ならんっっっ!!!!!ジュゾゾゾゾゾ!!!!!!!!!』




「――――――――イヤァァァァァァァァァアアアアアアアッッッッッッ!?!?!?!?!?」




 そんな時エルフは俺の髪を搔き分けると、なんと耳に舌を入れてきてご馳走に齧り付くようにむしゃぶりついてきた。

 自分でも想像していなかった、絹を裂くような甲高い悲鳴が俺の口から出る。


 助けを求めるように奴隷たちを怯えながら見るが、エルフが魔力を放出して睨みつけると皆は部屋の隅で縮こまり震える。




 ――――――――あぁ…………もう……助からないんだ…………






 俺は死んだ目で、外界から心を閉ざす。

 それがこの地獄で少しでも苦痛を和らげる唯一の方法だった。

 穢れた害虫が吸血するかのような、耳障りなノイズが遠くで聞こえてくる。


 魂を凍らせ、期待を捨て、儚い生から解放されることが、この世の苦しみを断ち切る術なのだと悟った。

 俺は意識と無意識の間を揺蕩いながら、安らかなる虚無の救済に身を委ねた。


 自我は薄れてゆく。

 俺という存在はアルタイルから、かつてアルタイルだったものへと変わってしまったのだった――――――――











 気が付くと父上と合流していた。

 なんだか恐ろしいことがあったような気がするが、何も記憶にない。

 違和感を抱えつつも、本能的に流れに身を任せる。


 今から購入が決定された奴隷については、取引手続きを済ませようと一度エントランスに戻るようだ。

 耳を澄ませて聞いた話からすると情報流出の恐れから、まだエルフのことについては話していないみたいだった。


 そこで俺から重要案件ということで早めに切り上げてもらう。

 父上は訝しげであったが、俺とマックスの表情が真剣であると悟るや否や、急遽商談をまとめて帰ることとなった。




 全く遺憾ではあるが、やむなく着いてこさせてきたチューベローズは俺を見ながら、音をわざとらしく立てて咀嚼を繰り返している。

 本当にキモい。


 俺が視線を送ると、口を開いて舌をいやらしく見せつけてくる。

 気持ち悪いけどエッッッッッ!!!!!




 慌てて目を逸らすと、キモエルフはご満悦とばかりに愉快そうに嘲笑をする。

 なんだか目覚めてはいけない存在を目覚めさせてしまったかもしれないし、俺も目覚めさせられそうで恐ろしい。






「ご購入いただきありがとうございます。戦争奴隷は後日配送させていただきます。アルタイル様のお持ち帰りになる女奴隷たちは、処女膜も確認していかれますか?」


「えっ!?だめだめ!アルタイルにはまだ早い!そもそも性的なことに使わない!」


「これは失礼をば……それではお気をつけてお帰りください」


 奴隷商の提案を、即答で却下してしまう父上。

 えぇ!?やろうよ!!!

 生意気なチューベローズに意趣返しできるじゃん!?


 意外と恥ずかしがったりして♡グヘへ

 でも食虫植物みたいに捕食されて、飛んで火にいる夏の虫みたいなことになりそうだから悶々と迷う。

 やめとこう…………






「いや~いろいろあり過ぎましたが……楽しかったっすね坊ちゃん!いい成果でよかったよかった!!!」


 そんなことを考えているうちに帰ることになった。

 マックスは暢気に夢見心地であるようだ。

 俺はこの執事見習いに向かって、問いを投げる。




「そんなお前も下心が逸っていたけど。満足したか?」


「へへっ!それは言わない約束ですよ!」


 マックスは親指を立ててサムズアップする。

 俺は少し笑って答えた。


 言わずとも心は通じ合っていた。

 俺たちのY染色体に刻まれた宿命で。遺伝子の奴隷であるチンコで。

 深くわかり合ったのだ。

 いろいろあったがゆえに、男の友情が生まれていた。





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[良い点] あわわ。またひどい変態さんの登場ですね(;゜Д゜) プライドと差別意識がすごいのでこのまえの縦巻きロールお嬢さんより嫌悪感がすごいです。 なるほど、変態さんってこうやって書くんだなーと…
[良い点] この世界のエルフは畜生方向だったぁー!!! いけない香りがムンムンするぅー!!! くっそー地下奴隷売り場にはエロスが凝縮されてんのか!!!何たる異世界!!!
[良い点] ア、アルタイルにライバルが!(笑) 魔法で並ぶものはいたが、キモさだけはずば抜けていたというのに(爆)
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