第76話 「ツア・ミューレン伯爵一家」
王都に来たら、何をするか。まずは挨拶回りだ。
挨拶回りをするなら、誰に会うか。会うべき人物だ。
会うべき人物を選ぶなら、重要人物だ。つまり婚約者だ。
「エーデルーーーーーーーーー!!!!!ぎゅ♡♡♡♡♡」
「お兄ちゃん……会いに来てくれたんだぁ……!嬉しいよぉ」
「俺も嬉しいよ♡ちゅちゅちゅちゅちゅ♡」
「もう~~~みんな見てるよぉ」
狂おしいほど会いたかったこの婚約者。
久しぶりの邂逅に、禁断症状が止まらない。
ぁぃしてるょ♡このぉもぃとどぃて♡
うわ!!!またデカくなったな!?肉圧と重量感とハリがすっご♡
でもでも身長はまだまだちっちゃいままだね♡ロリロリだね♡
釣り目がちな目尻を垂れ下げ、俺の抱擁に力なく身をよじらせている。
あまりにもキャワイイので、そのぷにぷにスベスベもちもちのほっぺたにマーキングキスをして、俺の所有物であることをわからせる。
もにゅ♡もにゅ♡とそのロリボディに不釣り合いな胸部装甲が、俺の腕や胸板にあちこち擦りつけられる。
これセックスアピールだろ。
すごいチンコに響く。
やっぱ本能的にスケベだから、こんないけない体に育つんだよ。
「それじゃ二人っきりになりたいのかな♡」
「お兄ちゃんのおバカ……違うよ」
「ツンデレかわいいね♡きゅんきゅんだね♡」
「恥ずかしぃのにぃ」
羞恥に悶えて俺に顔を押し付けて、甘ったるい舌足らずな幼い萌え声で顔を覆い隠す。
もうメロメロだよ♡子猫ちゃん♡
「お兄ちゃんすっごく大変だったみたいだね……大丈夫だった?」
「大丈夫だったけど、大丈夫じゃなかった♡ずっとお前に恋い焦がれてたから♡」
「よかったぁ!……ずっと心配してたんだもん……」
心配してくれて嬉しいな♡
たくさん好きって気持ちが溢れちゃうね♡
エーデルワイスは耳元のイヤリングを、大切そうにそっと触れる。
俺が前のデートで贈ったものだ。
はぁ……尊い……
「俺もよかった♡エーデルが俺のことを忘れてなくて♡」
「忘れないよ……本当におバカなんだから」
「ウィヒヒヒヒヒ!!!だって会えなくて寂しかったんだもん♪でもでも!二人は常に愛で繋がってるね♡こうして再確認できたね♡」
どうしよう……!
エーデルワイスのこと、もっともーっと好きになっちゃうよ♡
これ以上好きになったら、もう責任取ってもらわないとだめだね♡
だから俺の餌食になって、人生捧げてね♡
「お兄ちゃんはどのくらいこっちにいられるの?」
「うーん……王家の許しを得るまでどれくらいかかるか、わからないからな。その間も諮問会議やらで忙しいから。でも時間をつくって会いに来るよ。どこかに遊びに行くってのは難しいかもだが」
「そっかぁ………………頑張ってね……待ってるから」
「うん♡」
その応援でやる気100倍♡
頑張るぞ♡
エーデルワイスの父である理知的な眼鏡姿をする壮年の男性。
ツア・ミューレン伯爵が話が終わるのを見計らい、俺をよいしょしてくる。
「アルタイル殿!元気そうで何より!大活躍をされたと聞き、我が事のように嬉しく思いますぞ!!!」
「ありがとうございます!部下の奮闘のおかげです」
「先日はエーデルワイスへ大変素敵な贈り物を頂いたようで。私からも感謝を」
「なんのなんの!将来夫婦となるのですから!婚約者に当然の愛を捧げたまでです!!!」
「まぁ!エーデルワイスよかったわね」
「あぁ。婿殿に愛されているなエーデルワイス」
「…………ぅぅ……」
エーデルワイスは御母君に揶揄われて茹蛸の様に顔を真っ赤にさせ、俯いてドレスの裾を握り締める。
ツア・ミューレン伯爵一家はみんなニコニコとそれを見つめている。
家族公認の仲だね♡
結婚式の日取りはどうしようか♡
次はウェディングドレスを買ってあげるよ♡
あっ婚約指輪をその前に用意しないとね♡
こんなドジな旦那だけど末永く一緒にいてね♡
絶対に幸せにするからね♡
早速家族計画立てるぞ♡
サッカーチーム作れるだけ産め♡
だって……二人は……運命の赤い糸で……結ばれてるんだもん……ねぇ……
エーデルワイスの手を握ると、キュッと握り返してくれる。
俺の顔はもうデレデレしすぎて蕩けそうなことだろう。
ちなみに脳みそは、もう溶けた。
ツア・ミューレン伯爵は満足そうに頷く。
俺たちから一歩引いて懐かしいものを眺めるように物思いに耽っていた父上が、改めて挨拶を行った。
「ツア・ミューレン伯爵もクラウス殿も、お役目ご苦労でありました。私どもも補給の心配が無用のまま、存分に戦うことができました」
「少しでも助力ができたのなら光栄です。」
「ありがとうございます。父に並び役目を果たしたまでのことです」
何の衒いもなく官僚としての責務と謙遜する二人である。
父上はご満悦のようだ。
この縁談は軍事予算を得るためのもの。
世の中なんといっても金よ。
うちは大金持ちだけど、戦争で吹き飛ぶ金はあまりにも膨大だ。
そのために国家財源からの援助を円滑にするための、財務官僚への浸透を図ることが現時点で至上命題である。
人はなかなか集まらなくても、金はあるところにはあるからな。
金握ってる人間にそっぽ向かれると詰むし、仲良くしておくべきだ。
税制や予算作成なんかの情報も知っておけば儲けられるとか、父上が黒い顔してたしな。
財務官僚に友誼を繋いでおけば、味方勢力に有利で敵対勢力に不利な税制度を定めるなんてこともできるらしい。
それが支配の哲学。政治は怖い。
利益でも感情でも得になるのだから、俺にとってエーデルワイスとの婚姻は超大歓迎だが。
「なにをおっしゃいます。お忙しい中、アルコル家に便宜を図っていただいたこと。私は忘れません」
「お気になさらず。アルコル侯爵は最前線で戦争をされていたのです。これぐらいは気遣いというもの」
「ありがたいお言葉です。ツア・ミューレン伯爵も予算作成、物資の手配という机上の戦場で、ご活躍されていたのです。敬意に値します。クラウス殿もよくぞ御父君をお助けになられた。次期当主としてご立派です」
「なんのなんの!これしきの事は日常茶飯事です!クラウスもまだまだ若造です。まだまだ鍛えなくては」
「お褒め頂きありがとうございます。父の薫陶を胸に、一層精進するばかりです」
「――――――――!」
「――――――――!!!」
「――――――――?」
貴族の迂遠な会話の応酬が、目の前で繰り広げられる。
次第に話は世間話から入手情報のやり取り、仕事の話へと移り変わる。
これから親族になるってのに、よくやるもんだ。
耳から耳へと通り抜けるような空ろな言葉を、よくもまぁペラペラと喋れるもんだな。
退屈~
それをボケっと眺めていると、ツア・ミューレン伯爵夫人が話しかけてきた。
「アルタイル様。この度は知らせを聞いて驚きましたわ。大変なご災難であったことと存じます。元気なお顔を見せにいらしてくれて、わたくしもエーデルワイスも安心しました」
「これはこれは!なんてことはありませんよ!愛しい婚約者に会いたいが一心で、無我夢中でいただけのこと!!!」
「まぁまぁ!仲睦まじいご様子で、自分のことのように嬉しいですわ」
「ラブラブですからね!!!なっ!!!エーデル!!!!!」
「…………知らなぃっ」
エーデルワイスは頬を膨らまし、両手を腰に当てて顔を背ける。
乙女心は複雑なんだね♡
好きな人の前では素直になれないんだね♡
あ゛~~~ぎゃ゛わ゛い゛い゛~~~
義理の母からも好意的だ。決まったな。
誰もが望む結婚。
きっと神様も俺たちを祝福してくれるよ♡
俺はエーデルワイスのもとに駆け寄り抱きしめて、愛情たっぷりに頬を擦り付ける。
おねだりすればエーデルワイスは不承不承といった態度で、いつも受け入れてくれるからな。
「そんなことゆわないで♡すきってゆって♡」
「うるさいなぁ……もぉ……」
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